海賊戦隊ゴーカイジャー: 42話感想というか覚え書き
※海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。
■ダマラス
前後編の前編名物、冒頭での巨大戦ノルマは鎧がドゴーミンたちを撃破。他の海賊たちも対ゴーミンの等身大戦に勝利する。
彼らの余裕に苛立ち自ら出撃を申し出ようとするダイランドーをインサーンが遮り、ダマラスに雪辱の機会をと進言。前回に引き続き彼女がダマラスを庇うのがホッとする。
牢内に静かに座していたダマラスは釈放を告げられると、手錠をあっさり引きちぎり、鉄格子を吹き飛ばす。
その気になればこんなものはいつでも壊せたが、という形でその実力と皇帝への忠誠心を同時に見せつけるのが憎い。
■伝説の勇者
アイムが読んでる宇宙女性誌の表紙が無駄にクオリティが高い。一番上にジェラシットの温泉旅館経営の記事の見出しがあって、すっかり成功した実業者扱い(笑)。
その雑誌に、ハカセにそっくりで名前も同じ消息不明の伝説の勇者の記事が掲載されていた。
ここでザンギャックに故郷の星が滅ぼされて亡命したというハカセの過去が明かされる。
記事はそれと矛盾するけれど、ハカセは実は昔の記憶を失なっているのを隠していたので、記事内容は自分のことかもと匂わす。もう記事もハカセの口ぶりも腕の星型の痣も思いっきり怪しげ(笑)。
そんな話を素直に信じて大興奮の鎧アイムの良い子組、うさん臭げに眉を顰めるマベジョールカのアウトロー組の温度差が相変わらず風邪をひきそう。そのアウトロー組でも、途中からすっかり興味をなくしたマベジョーと、「過去を思い出すかもしれないから高い店で食事させろ(意訳)」というハカセの遠回しのおねだりに付き合うルカの差は、なんだかんだ彼女もハカセのことは気になっているってことなんだろうか?
■色仕掛け
そのルカが語るハカセの合流秘話。とある星でガレオンが故障し、ルカが怖がられないよう巻き髪に清楚なワンピースとカーディガンというルカ史上もっともスイートで可愛い恰好でハカセを訪ね、ぶりっ子全開でガレオンの修理を依頼。
ルカはさばさばした姉御系で普段の服装もカジュアルでボーイッシュだけど、必要ならこうやって女を武器にするのに躊躇いがない。フリルやレースでふわふわなお姫様ファッションのアイムの方が、女を理由に荷物持ってもらったりするのを嫌がり必要なら猿の顔マネも辞さないのとは対照的なのが面白い。
ハカセは見るからに鼻の下伸ばして引き受けるも、部屋に貼ってあった手配書の宇宙海賊だと気付き、その場は慌てて逃げた。でも結局自分の方から船にやってくる。
荒川さん曰く「あまりに可愛いかったので、たぶんルカに一目惚れしてるんですよ」だそうで。わざわざ手配書を部屋に貼っていたのも、わりと好みのタイプだからだったりして(笑)。
なお彼は一緒にいると自分が惨めになるからアイムにはいかないとか。アイムの、今はできなくてもそれで後ろ向きにならずに前進を続ける向上心の強さや覚悟完了っぷりをここまで見てくると、かなり納得する(汗)。
■「なりたい」より「したい」
もちろん、自分から来たのはルカ目当てだけじゃなくて(笑)、海賊は怖いけど一度引き受けた仕事はやり遂げる、という責任感からってのもちゃんとある。そんでついでに生活能力ゼロの赤青黄の汚部屋と化していたガレオンを見かねてテキパキと掃除し、きちんとした食事まで提供。もちろんガレオンの修理もあっという間。
これですっかり気に入られてマベが半ば強引にスカウトするんだけど、ハカセが海賊になりたい理由よりマベ達がハカセを海賊にしたい理由の方が物凄く切実に伝わってきた(笑)。
マベ、赤き海賊団で一番下っ端の時はせっせと床磨きしていたのに、船長になったらこれかよと(笑)。まあ、自分もやらない代わりにジョールカにもやれと言わず、部屋が汚れていってもあまり気にもしなかったんだろうな。
いつも遠くの夢を見ている分だけ、足元の細々した日常生活の充実には興味や意識が向かないタイプかも。
■バスコより強い
31話でマベたちをあれだけ圧倒していたバスコが、ダマラスにはサリーともどもあっさり捻られている衝撃(汗)。こんなのに本格的に出て来られたら勝てる訳ないじゃんと、この時点でもう海賊詰んでる感が凄かった。
バスコはダマラスに情報を得たりゴーミンを借りたりしてるけど、なんか責められそうなヤバイ雰囲気を感じたら迷わず切りかかる程度に緊張感ある関係性なんだな。15話でもアッカンベーしていたから好意は持っていないのはわかるけど、やっぱり自分以外は誰も信じず隙あらばザンギャック帝国の重臣にも牙を向く一匹狼なんだな。そんでかなわないとわかったら屈辱を殺してあっさり矛を収め従うのも、こうやってしたたかに宇宙の大海原を生き抜いてるんだな、と改めて。
なぜ海賊にトドメを刺さなかったのかと苛立ちをぶつけるダマラスに、バスコは事情があることを匂わせるけれど、この時はそれがどんなに切実なものなのか想像できなかったな。
■降臨
食事を終えた4人の前にダマラスがただならぬ威圧感を纏って現れ、その一撃でビルが粉々に。それを見て、一番ヒーロー気質の強い鎧ですらとりあえず逃げるというのが、これまでとは異次元のやばさを感じさせる。駆け付けたマベとジョーの周りに4人が逃げ込むのが、親鳥の羽の下に逃げ込む雛鳥みたい。
相手がダマラスだと認めたジョーが「絶対に油断するな。これまでの奴とは根本的に違う」って緊張感を高めるのが、ダマラスを思い切り格上げしていて好き。ジョーの元ザンギャック設定は本当に良く機能しているな。
■前門の狼、後門の虎
ダマラスの強さが半端なくて、海賊たちは歯が立たない。バスコの時は「速い!」って感じだったけど、ダマラスの場合は「重い!そんで強い!」って感じの重厚感が痺れる。
いったん退いて体制を立て直そうとしたら、背後に立ちふさがったのはダマラスに従わされたバスコ。まさに前門の狼、後門の虎状態。どっちか一人だけでも手に余るのに、こんな絶望的な挟み撃ちは他の戦隊でもあまり記憶がない(汗)。
マベとハカセはダマラス、ジョー以下4人はバスコ&サリーに圧倒され、ジョーたちは炎の中に消え、マベは大ダメージを喰らって意識を失ってしまう。
■見逃されるハカセ
恐怖に足がすくんで動かないとか、ハカセはここでも等身大。何も出来ない軟弱者と見て取ったダマラスはそんな彼を放置しマベだけを回収して引き上げる。
思えば8話の時から「こいつはまあいいだろう」と一人だけ手配書を投げ捨てられていた。今回も他のメンバーの手配書を憎しみを込めてめくりながらも、ハカセだけは眼中になかった。そしてまた1人だけ見逃され、取り残されたカットで続く。
ダマラスがハカセを見下す描写の積み重ねに、さすがにこのままじゃ終わらないよね、きっと次回でハカセが奮起するんだよね、という確信はありつつも、ようやくこれまでの鬱憤を晴らすように思い切り強くて格好良く描かれたダマラスが次回もう弱虫ハカセに足をすくわれて終わってしまうのか、と思うと残念でもあって、複雑だった。
■貧乏くじキャラ
ゴーカイジャーがレジェンド重視に舵を切り、彼らの描写と大いなる力を狙うバスコに尺が割かれた結果、どうしてもザンギャックにしわ寄せが行った部分はあると思うけど、その中でも一番割を食ったのがダマラスで間違いないと思う。
なんせ42話にして初めての地球。海賊たちとも初顔合わせ。
優先順位的には仕方ないと納得はしている。また、強すぎてハンディでもなければ作劇的に安易に戦線に出せなかったかもだし、そもそも殿下がダマラスを抑えつけていたことこそが海賊の連戦連勝の大きな要因、という構造でもある。
だけど、無骨だけど有能で本当は忠誠心も強いのに、とその不遇に同情もあって、正直もう1回くらい地上で大暴れするのを見たかった気持ちもあるかなと。
その分、ここぞとばかりに強さ格好良さと周囲の一目置きっぷりをこの回に詰め込んで来た感じがした。