ゼンカイジャー41話感想: 科学技術に全力全開な父、他者に全力全開な息子
10年ぶりに帰還した功は、家族水入らずの団欒よりも界賊たちやキカイノイドたちへの興味と交流に全力全開。介人の回想や前回明かされた過去だけでもある程度予測はついたけど、ちょっとたじろぐくらいエネルギッシュで忙しない人だ(笑)。
ジュランは、せっかく戻ってきたのに父子水入らずで語り合う時間がないのでは?と彼らしい気遣い。なんなら功よりもむしろ介人の保護者っぽい落ち着きと懐の深さ(笑)。でも介人とヤツデさんたちにとってはこれこそが功らしさ全開のようで、嬉しそうに受け止めている。
功は改造によって定期的に充電が必要な体になってしまった。
現実世界に例えるなら、薬害等で注射等の投薬が必要な体になりもう元には戻れない、っていう大変な境遇。なのに短期間でさらっと受け入れ自分の興味に全力で邁進する功のメンタリティが、前向き過ぎて時節柄もあっていろいろ辛い。
今回の敵はメンワルド。先行して戦っていたゾックスや駆けつけたジュランたちに、蕎麦やうどんの乾麺を突き刺すと、たちまち蕎麦派とうどん派に分かれて戦いそっちのけで大揉め(汗)。
介人は戦いの現場に行く気満々の功の引き止めに時間がかかり到着が遅れた。
また攫われでもしたら、と当然の心配をするヤツデさんと2人がかりで説得しても、自分の作った装備で戦う現場を見たいという気持ちが圧勝するんだな。安全志向の私は正直ちょっと功に腹が立った。
彼がハカイザーだった時に皆がどれだけ辛い思いをして、取り戻すためにどれだけ苦労したと思ってるのよ?って。
まあそれでも抑えられないのが科学者のサガで、そんな人だからこそ、こんな凄い装備を作れたんだろうけど。
こうやって見ると、功に比べて介人って常識的な大人だったんだなと思う。世界初とか全力全開とか繰り返しながらも、他人の気持ちや迷惑を無視して突っ走ったりはしない。
東映公式も
<「全力全開!」「失敗も挽回、何度でもトライ!」なんてのは、ご両親の受け売り。>
とか解説していたように、いなくなった両親が残した言葉やスピリッツだから形見のように自分に言い聞かせていたのかなと。初回こそスカイツリーからバンジージャンプとかぶっ飛んでいたのは、40話まで見た今だと若干違和感すら覚える。
介人の本質は突き詰めるとあくまで他者と交流し尊重することで、功の本質は他人がどう思おうと興味ある科学技術を突き詰めること、みたいな。
そんで結局は自分の興味を貫く功に他者の意思を尊重する介人が折れる、っていうのがこの父子らしい。あくまで遠くから隠れて見守ることを条件に2人で現場に到着すると、目の前で繰り広げられていたのは
蕎麦派: ゾックス、ガオーン、マジーヌ
うどん派: ジュラン、ブルーン、フリント
という陣営に分かれていがみ合う仲間たちの姿。
更に街中も蕎麦派とうどん派に分かれて争い、めちゃめちゃな状態。
・・・ゼンカイジャーとしては凄く平常運転なんだけど、あんな激熱で泣ける決戦回の次が蕎麦うどんバトルなのかよという温度差(笑)。
両陣営の板挟みになった介人は、
無理に正気に戻そうとするのではなく「おいしい方につく」と、現状を受け入れた上でどちらにも肩入れせず、一触即発だったいがみ合いを平和的で建設的な麺勝負に持ち込む。
これまでも介人は、両方のどちらも傷付けない対処能力が上手だったけど、なんか今回は「老獪」と言いたくなるしたたかさだ(笑)。
ここでようやく、父と子2人だけの語り合い。功はそんな息子の手腕や仲間たちに信頼されてる様子に目を細める。自分が育ててやれなかったって思いもある分、余計にホッとして嬉しかったろうな。
そんでもしかしたら対人関係の築き方は功より介人の方が長けてると感嘆したかもしれない。
介人は、ステイシーについてどう思っているか尋ねるけど、功はハカイザーの時の記憶がないから思い入れゼロ。当然ではあるけど、こうもはっきり言われると、断腸の思いで自身の仲間への未練に引導を渡したステイシーがやっぱり気の毒。
介人には、ステイシーに仲間を作るように勧めておきながらせっかく出来たその仲間を奪ってしまったって負い目がある。もっともハカイザーの正体を知るまで、その仲間を自分の手で倒す気満々だったわけだけど。個人的には、倒した後に自分が仲間になる都合の良い未来しか見てないように思えてたりして(笑)。
だけど、ハカイザーの正体が父親だと知り、ステイシーの助力もあって取り戻せた。自分の今の幸せがステイシーの犠牲の上に成り立っていると思うから余計に放っておけないのかもな。
功は、なら自分でなんとかしろと突き放す。冷たいようだけど、確かにステイシーに本気になれるのは介人だけ。科学者ってこともあるのか、このあたりは変に息子の気持ちに忖度したりせずにズバッと正解を突きつけるんだな。
その功さんは巨大な蝶ネクタイを着けてしれっと審査員席に並んでいて、前回あんなシリアスな境遇から救出されたばかりなのに、あっさりゼンカイ脳世界の住人として馴染んでいる(笑)。まあ元々キャラクター的には素質充分ではあったけど。
セッちゃんからメンワルド発見の連絡を受け、介人は自分を仲間にするために一生懸命麺作りしていた両陣営に「実は俺、ラーメン派なんだ」と言い放つ。
そんでメンワルドの元に駆け付けるや、ジェットマンのギアでイエローオウルにトマトを投げさせると、撃ちぬいて麺ワルドの頭にぶっかける。
更に追いかけてきた仲間たちに
「みんな!あのメンワルド、実はパスタ派だって!」
撃ちぬかれてぐしゃぐしゃのトマトを被ったメンワルドの頭は、言われてみればまるでミートソースパスタ。敵に濡れ衣を着せて蕎麦派うどん派共通の敵に仕立て上げたわけね。
さんざん麺を作らせておいて実はラーメン派だと言えば仲間たちが騙されたと怒って追いかけてくるのも計算済み。
なんなのこの他人の心理を操る卑劣で狡猾な正義の主人公(汗)。
ふっと、同じ香村脚本ゴーカイジャー13話でアイムが、仲間たちが怪人を誘拐犯と勘違いしたのを見て「ま、いっか」とそのまま倒させたのを思い出したけど、介人は全部計算ずくなのが恐ろしい(笑)。
名乗りはそれぞれイチ押しの麺料理を紹介。かれこれ40話過ぎても変則名乗りのアイディアは尽きないんだな。その積み重ねにほとほと感心する。
メンワルドは理不尽に陥れられた冤罪を晴らせないまま、ヒーロー側の、1人を除いて洗脳状態とはいえ平和を守るためではなく裏切られたという怒りを原動力にした攻撃でボコボコにされ撃破。自業自得だけどちょっと気の毒(笑)。
介人は正気に戻ったジュランたちに、操られた間のことは「みんなで蕎麦とうどん打ってたよ」とだけ説明。間違ってはいないけど盛大にいがみ合っていて大変だったことは言わない。そんな所にも介人の他者への姿勢が出ているかも。
続いて出現したダイメンワルドは、またもゼンカイ側1人1人に譲れない麺料理推しを植えつけて対立させ、合体解除に持ち込んだ。そこまでは良かったものの、合体してなくてもそれぞれ単独の麺パワーを舐めるなと、逆に怒りの集中麺攻撃を喰らって撃破。正規の必殺技ではなくあくまで自分が与えた力でいわば自滅するのも、絵面は狂っているけどやっぱりゼンカイジャーらしい(笑)。
功は並行世界間を行き来出来るよう改造したカラフルのワゴン(あったんだ)で、妻の美都子を探しに旅立った。
キカイノイドや界賊に興味全開なのは凄くらしいけど、奥さんのこと心配じゃないのかな?と引っかかってたから、ホッとした。ちゃんと奥さんのことを考えてたんだな。フリントたちに根掘り葉掘り話を聞いていたことも、並行世界に行く装置作りにしっかり繋がっている。
作劇的にも、良いキャラだけどカラフルにずっと居続けるのは配置的にどうなのかな?と気になってたから、安心した。ヤツデさんはまた息子不在の日々に戻るけど、気持ち的には全然違うよね。
功は息子のために新しいギアも開発していた。46バン。予告で新しい戦隊が先行登場していたけど、ギアの力で召喚する形で消化出来るのは、ゼンカイジャーの強みだな。
一方、トジテンドでは、ボッコワウス肝煎りの作戦失敗でお仕置き喰らっていたイジルデが、失敗はステイシーの裏切りのせいだと責任をなすりつける。
イジルデにとっては「真実などどうでもいい」という苦し紛れのでっち上げだけど、ステイシーにとっては思い切り真実を突かれた格好なのが皮肉。
「父バラシタラのためだろう」と見当違いなことを言われて必死に否定するも、言葉尻から裏切ったこと自体はバレてしまう。つくづく、しらを切るとか誤魔化すとかには全然向いてない人だ(涙)。
バラシタラはそんな息子に表面上は心を動かした様子もなく「愚かな・・・」とだけ言ったけど、内心はどう思ったんだろう。
イジルデの言葉を信じて、「いつも反発ばかりしている息子が自分のために主に逆らった」と誤解したろうか。それともステイシーの否定をそのまま受け取ったろうか。ただその場合、なぜ息子がそんなことをしたのか理解出来ないだろうけど。
個人的にはやっぱり、「父親の自分のため」が誤解だったとしても、バラシタラに親としての情が芽生えるきっかけになってくれないかな、と思ったりする。