海賊戦隊ゴーカイジャー: 49話感想というか覚え書き
※海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。
■5戦隊から認められて
海賊たちはバスコに勝って全戦隊の大いなる力をコンプリートした。けど、そのうちバスコに奪われた5戦隊の力については、海賊たち自身がレジェンドたちに認められ与えられたわけではない。それをこのまま勝手に使って良いものか、と海賊たちは躊躇する。
これがもし地球に来て日も浅い頃に全部を手にしたのなら、そんなことは気にも止めなかったかもしれない。この1年間、レジェンドたちと触れ合い互いに認め合うことを積み重ねてきたからこその変化がここにも見える。
するとその5戦隊のレンジャーキーが光ると共に、海賊6人は真っ白なイメージ空間の中に。199ヒーローの時と同じように、5戦隊からレジェンドが1人ずつ登場して海賊たちのここまでの戦いを認め、大いなる力を託すと改めて伝えた。
ここで一気に5戦隊来たことで、レジェンド未登場の戦隊はあと1つだけ!と個人的に盛り上がったのを覚えている。さらに予告を見てコンプだ!と感無量になった。
年間通して51話+映画で34戦隊。本当に良く登場させたし、俳優さんにもよくこれだけ出演して貰えたよな。
311は本当に不幸な震災だったけど、それをテコに色んな人たちの気持ちがゴーカイジャーに集まった結果かと思う。
■ナビィ受難
これで心置きなく大いなる力を使えるとなると、次はナビィ。
バスコが「君が扉なんだよ」と言っていたことから、マベがナビィを乱暴に掴んで「トリ、扉になれ!」と命令。
普段ならナビィへの乱暴な扱いを嗜めるルカやアイムもお宝が目の前だと思うと止めるどころか、どこかに隠しスイッチとかあるのでは?と他の海賊たち全員よってたかってナビィの意思ガン無視で体を雑にいじり回す。前のめりすぎるだろ(笑)。
海賊たちのこういう荒っぽいところや俗っぽさを隠さないところも好き。だけどついさっき海賊たちを褒め讃えていたレジェンドたちにはこの有様を見せられないと思った(笑)。
■扉になった
その後、海賊たちはハンマーとかスパナとか刃物とか持ち出してきて、ナビィをもはや生き物と思っていないかのような容赦なさでいじり倒したらしいけど、何も起こらなかった。でも苛立ち紛れにマベが宝箱の蓋を開けると、レンジャーキーから光が放たれ、それを浴びたナビィが本当に立派な扉に(笑)。
34ある鍵穴に各レッドのレンジャーキーを差し込むと扉が開き、その中に出現した洞窟のような道を進むと、金色でピラミッド型の小さな物体が置かれていた。宇宙最大のお宝というには小さいし正直地味で、当時この時点では拍子抜け。
でもマベはそれを掲げて高らかに「宇宙最大の宝、俺たちのもんだ!」と宣言し、嬉しそう。
前回「中身は何でもいいのかもしんねえ」って言ってたのは本当なんだなと思う。様々な困難を乗り越えて仲間と一緒にここまで辿り着いた証を手に入れたってことだけでも十分だったのかなと。
■過去を変え放題
そのお宝がいきなり喋り出した。自分はこの星の意思でこの宝を通して話をしており、
「34戦隊の大いなる力をこの宝に宿せば宇宙を好きなように作り変えることが出来る」
と告げる。例えば過去を変えてザンギャックの存在しなかった世界に作り替えることも可能だと。
ハカセの星もアイムの星と殺された両親もルカの妹と暖かい家もジョーのシド先輩も、全部取り戻せると言う。思っても見なかった幸せな奇跡に手が届くと知って、1度はシド先輩の死を受け入れ魂だけでも救おうとバリゾーグとの決着をつけたジョーでさえ、顔を綻ばせずにいられない。皆ザンギャックのために大事なものを失っているんだな、と改めて思う。
地球人の鎧を除けば、マベ1人だけ自分の取り戻したいものを口にしてはいない。彼の場合、たぶん今一番大事な物は仲間たちとの宝探しなんだろうな。願いが叶ったらその仲間たちは取り戻した幸福な元の世界に戻ってしまい、今のチームは解散ということになってしまうかもしれない。
でも、「凄えじゃねえか!」と、むしろ誰よりも興奮して嬉しそう。
自分が巻き込み時には危険にも曝し責任も感じていた「宇宙最大のお宝探し」が、付き合ってくれた大事な仲間たちに想像を超えた大きな喜びをもたらす結果に繋がったことが嬉しくて、ちょっと肩の荷が降りたりもしたのかなと思った。
■代償
意気揚々と船内に戻ってきた海賊たちはそのままの勢いで早速、宇宙を作り変えようとする。
でもすんでのところで、大いなる力を使い願いを叶えると、代償としてスーパー戦隊の存在がこの世から消えてしまうことがわかり、全員愕然。
まあ、宇宙を作り変えるほどの大きな力、ここまで大きな奇跡なら相応の代償を必要とするのは納得出来る。むしろ34戦隊の力だけで宇宙全体作り変えられちゃうんだ、と思ったくらい。
なお宇宙最大の宝の正体について、荒川さんは、49話まで考えていなかったと仰っている。
井上敏樹氏から「宇宙最大のお宝の正体が地球人の愛とかそういうのだったら俺は軽蔑するからな!」と言われたりもして、なるべく即物的な物にしたかったけど、お金そのものにするとわかりにくいかと、最終的に「宇宙を作り変えられる」というところに落ち着いたとのこと。同時に「どういうことにしたら彼らが迷えるかな?」とみんなで議論して「スーパー戦隊の存在がなくなる」という代償を設定したらしい。
ハカセが引っかかったサンバルカンのバルイーグル飛羽高之の「俺たちの分まで」って言葉から、レジェンドたちは海賊が願いを叶えた場合の自分たちの運命を知っていて、最終的にそれを受け入れていたことがわかる。
全てが明らかになってから振り返ると、そりゃあ、ある時期までは通りすがりの海賊たちに自分たちの大いなる力を渡すことについて、慎重になる戦隊もあるはずだよな、と納得した。
また大いなる力を与えず隠れたまま海賊に守らせ続けようと考えたカクレンジャーのえげつなさも、一概には責められないと思う。自分たちだけでなく他の33戦隊のことも考えたのかもしれないなら尚更。
49話までお宝の正体が未定なら結果的にそうなったってことになるけど、上手くハマって凄い説得力になったもんだなと感動する。
そんでアカレッドが無理やり力を奪えるラッパを開発したのも理屈としては納得すると同時に、どんだけ容赦ないのよと戦慄した(汗)。いざとなったら納得出来ないまま強制的に存在を消される戦隊がいてもやむなしってことだから。
前回マベは「俺たちゴーカイジャーの夢を邪魔するもんは誰であろうとぶっ潰す」と啖呵を切ったけれど、それはスーパー戦隊のレジェンドたちの存在と引き換えにしてもなの?って突きつけられたことになる。スーパー戦隊オタクの鎧はもちろん、これまで多くのレジェンドたちと交流してきたマベたちにとってもそれはおいそれと受け入れられるものじゃない。
ここでインサーンからの襲撃を受けたのは、むしろ海賊たちにとってはこの問題を棚上げ出来て好都合だったかも。
■追い込まれるインサーン
ザンギャック本星からの増援の到着はもう間もなくで、海賊や地球の運命は風前の灯。だけど地球征服が終わればインサーンも殿下の死の責任を問われて無事に本国に戻ることは出来ない。
ダイランドーからそう仄めかされ皇帝からも「手柄を立てるなら今のうち」とプレッシャーを与えられて、インサーンは自ら出撃を申し出る。
ダマラスさえ撃破した海賊たちの力は認めつつも、だからといって「皇帝の跡取り息子を守れなかった無能トリオ」って評価は揺るがないんだな。
そんで後の展開を見れば、皇帝もダイランドーもインサーンを増援到着までの時間稼ぎとして使い捨てにするつもりだったことがわかる。勝てば儲け物だけど、実力的にはダマラスでさえ敗れた相手にインサーンが勝てる確率は低く、でも処罰と手柄という言葉、飴とムチで出撃に追い込んでいくのが非情で嫌らしい。
それをどこまで分かっていたのか、インサーン本人は、この機に出世コースに返り咲こうとしていたのが、哀れ。
敵ではあっても1年近く見守って来たキャラが地位は上でも後からポッと出のキャラに粗末に切り捨てられるのを見るのは、ちょっとムカつく。
■インサーンの夢
「私が開発した武器で全宇宙の征服を成し遂げる。そして私は全宇宙で最も偉大な科学者になる。その夢をかなえるまで死ねるものか!」
ゴーカイジャーに夢があるように、インサーンにも夢がある。それを叶えるために「おまえ達の首を手土産に」と言う。
自分の夢を叶えるために海賊たちを殺そうとするインサーンと、本人たちの承諾を得ているとはいえ自分たちの夢を掴めば34戦隊を消滅させてしまうことになる海賊たちとは何が違うのか。ここでインサーンに夢を語らせたのには、そんなことを考えさせる狙いもあったのかな?と、思ってみたり
■5戦隊で花道を
インサーンはグレートワルズを参考にして開発したっぽいグレートインサーンで出撃。正直言って、グレートワルズ戦とダマラス戦の後でグレートインサーンと言われても、そこまでの強敵感もインパクトもないかな。
海賊たちは貰ったばかりの5戦隊の大いなる力を次々に繰り出してグレートインサーンを撃破し、脱出したインサーン本人と加勢に来たドゴーミンたちにはその5戦隊に1人ずつチェンジして応戦する。
こうすることで、バスコに大いなる力を奪われて割を食った感もある戦隊たちにも、レジェンド回に準じた見せ方を用意したのかな。
そしてそれはインサーンにとっては、5戦隊もの力を総動員して倒すという退場の花道にもなったと思う。
海賊たちが宇宙最大の力を使ってザンギャックのいない世界に作り替えた場合、今のザンギャック幹部たちはどうなってしまうのか。スタッフさんは視聴者がそんなことを考えなければならなくなる前に、1年間見てきてそれなりに思い入れもあるだろうレギュラー幹部たち、を全てきちんと華々しく退場させたかったのかもしれない。
これであとに残るザンギャック幹部は、凄く強いけど視聴者的にはイマイチ馴染みが薄いままの皇帝とダイランドーだけになったわけだから。
■超大軍到着
インサーン撃破直後、ザンギャックの増援部隊が到着して空を埋め尽くし、その砲撃から逃げ惑う海賊たちの姿で続く。
ザンギャックの戦力の最大の特徴は、その兵力の多さ。
レジェンド対戦では34戦隊、200人近い戦士たちの力で大艦隊を駆逐し追い払ったけれど、鎧によれば今度はその何倍もの数。このままだとゴーカイジャーだけでそれに立ち向かわなければならない。
「使えばスーパー戦隊の存在が消えてしまう」からと棚上げにしていた宇宙最大の宝を使うか否かという問題について、
「このザンギャックの大攻勢から地球を守るためには使わなければならないのでは?」
という葛藤ポイントも新たに浮上。
海賊たちがどんな理由でどんな選択をするのか、当時は楽しみな一方でがっかりするような落とし所になったりしないかっていう心配もしたりで、1週間やきもきしていたのを今も覚えている。