キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

海賊戦隊ゴーカイジャー: 5話6話感想というか覚え書き

海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。

 

2011年3月11日に東日本大震災が起きて、5話の放送は異例の1週間延期。

4話と5話の間に、津波の信じられないような甚大な被害状況や、その後に起きた原発事故の有様とそれが自分たちの生活や食べ物に与える影響がニュース等で伝えられ、世の中のありようや自分の気持ちが一変してしまった。

2週間ぶりの放送を見た時に、4話までを見ていた頃の無邪気で気楽な気持ちと、震災後のショック、それから自分や家族を守るためにどの情報を信じ選べばいいのか分からないという不安や恐怖に囚われた気持ちとの断絶を、物凄く強く感じたんだよね。

もうあの頃には戻れないんだなと悲しく思うのと同時に、そんな状況でも毎週毎週ハイクオリティな内容を提供して貰えることが、より一層有難かった。

たぶん私の2011年を支えてくれた大きな要素の1つがこの子供番組だったと思う。

 

<5話>

■宇宙警察の立ち位置

ザンギャックがこれだけ全宇宙で幅きかせてると、宇宙警察って今どんな立ち位置なの?ってのは気になってた。

スーパー戦隊の歴代の精鋭たちが自分たちの戦う力と引き換えにやっと追い返せただけっていう物量で攻められたら、いかに宇宙警察といえど壊滅してない?とか、乗っ取られてない?とか。

でも今回で、手配書や犯罪者情報は共有するけどザンギャックには屈することなく独立性を保ち、緊張感のある関係を保っているんだってことが分かってほっとした。当時も結構その辺りを気にしている人がいたから、早めに示してくれたのは良かったと思う。

 

■高田さん発見

改めて見ると、警察署に来たマベが手配書に載ってる本人だと気付いて慌てふためいていた若い警官が、たぶんきっと絶対に、パトレン1号のスーツアクター高田さん。

この時はマベにぶちのめされる警官その1だったけど、後に圭一郎が警察官を目指す原点になった憧れの警官になったのかと思うと、番組を跨いではいても「ご立派になられて・・・(涙)」となんだか嬉しかった(笑)。

 

ジャスミン

相変わらずお奇麗で。というかより色っぽくなられて。「ほい御用」とかジャスミン語も健在。

登場時間は短かったけど、変身する力は失われても引き続き地球署のSPDとして働いているんだなってことをハッキリ見せてくれた。

 

■坂本監督

Wの終盤と映画からフォーゼのパイロットの準備にかかるまでの短い参戦。

手錠をかけられたマベの足技中心の迫力ある立ち回りは、部分的に吹き替えもあるけどそれ以前の戦隊の変身前アクションとは一線を画す衝撃的なもので、鮮烈な戦隊デビューになったと思う。

なおこの頃には坂本監督がジャスミンの熱烈なファンだということは広く知れ渡っていたから、仮面ライダーWへのゲスト起用に留まらずについに「ジャスミンを自分の監督回に出演させる」という野望を叶えたんだなあと、その<夢を掴む力>の強さに感動していた。

 

■ボス

いわゆる番外戦士たちは1話のレジェンド大戦では姿が見えず、参加したのか、変身能力はどうなのかわからなかった。

その意味でもボスの動向は注目だったんだけど上手くぼかされて、変身能力がないのかそれとも相手に装備を弾き飛ばされて出来なかったのか、どちらとも取れる描き方。

そして相変わらず強い。

マベがジャスミンに騙されて手錠をかけられた状態とはいえ1対1ではボスの勝ち。

ただしその後ボスはマベを庇って傷を追ったことで敵に追い詰められ、逆にマベに助けられる。

と、マベもボスもハンディを負った状態での負けやピンチ演出で、強さの優劣がハッキリとはつかないよう配慮されてると思う。

ボスと言えば巷で「抱かれたい犬NO.1」とかいう語彙の狂った異名持ちで、DVD視聴組だった私は「この青い着ぐるみが?」と最初信じられなくて侮っていた(汗)。だけど、8話でジャスミンへの優しさにグッときて、あの伝説の13話「ハイヌーン・ドッグファイト」の凄すぎて笑うしかなかった勇姿に「すみません恐れ入りました!」と全面降伏した思い出。

 

■地底ミサイル

地底ミサイルで世界中の主要都市に大規模同時攻撃を仕掛けて大爆発を起こすのが今回のザンギャックの作戦。

「地底」ということは、もしかしたら当初の脚本では同時多発大地震を起こす設定だったのを、大震災の直後なだけに、1週延期の間に台詞だけ「大爆発」に差し替えたかもなあと思っている。

後にジュウオウジャーでも熊本大地震で、幼児誌だったの紹介時点では地底エネルギー集めて大地震を起こす計画だったのが、実際の放送では山の草木を枯らす作戦に変更されていた事があり、宇都宮戦隊は地震との巡り合わせで苦労するな、と。

 

■海賊の誇り

ボスに「ザンギャックと宇宙警察の両方に負われて逃げ切れるはずがない」と言われたマベの返しが、この回で一番描きたかった海賊たちのこの世界に対するスタンスとプライドなんだろな。

「知ったことか。俺達は俺達の誇りを持ってこの宇宙を旅してきたんだ。その誇りを守る為なら徹底的に戦う。たとえ海賊と呼ばれようが、たとえ全宇宙を敵に回そうがな!」

言葉だけ格好良いんじゃない。庇われて怪我をさせたと知れば借りを返すために手錠のまま危険を犯して、自分を捕まえた男を助けに来る。その一連の行動が説得力を上げてボスの信頼を勝ち取り、手錠を外させて、ミサイルを止める役目を任す決意に繋がった。

マベとボスの互いのプライドをかけて認め合う粋なやりとりは格好良くて痺れるしかない。

8年後の同じ頃に「スーパー戦隊最強バトル」で再会した時には、当時のいろんな事が思い出されて感慨深かったな。。

 

デカレンジャー

戦隊の主題歌を全部知ってるわけじゃないけど、少なくとも個人的に2000年以降で一番テンションが上がる。特にイントロ。震災の直後だったこともあってかいろんなものがこみ上げてきて涙が出たのを覚えてる。

ブラムドをテンポの良い連携攻撃で追い詰める海賊たちを見たボスの

「見事なチームワークだ。地球署の奴等に勝るとも劣らない」

という台詞に、センちゃん役の伊藤さんが実況で物申したげだったのが微笑ましかった。荒川さんがデカレンジャーのメインライターでもあったから遠慮せずに書けた台詞かもなと思う。

 

■バン

そう言えば予告にいたのに・・・と思ってたら、ラストに出てきた。特命でマベたちの仕業とされる海賊行為を調べ、それらがザンギャックによる捏造だったと報告。

随分髪が伸びたけど相変わらずめっちゃスタイルがいい。

ボスに肩を貸す役目をマベからバトンタッチして「俺たちの力を変な風に使ったら承知しねえぞ」とニヤリと笑いながら釘を刺す表情にデカレッドのマスクが一瞬被さる。

冒頭のジャスミンにも出ずっぱりのボスにもこの演出はなかったから、マジレッドに続いてこの時点ではレッドのみに適用、というか試行錯誤段階だったのかな。

 

■海賊の地球での位置付け

宇都宮戦隊は4話までにおおよその世界感と、その戦隊がどういうチームか、メンバーがどんなキャラなのかを紹介し終えて、5話でレッドをメインにちょっと世界を広げたり新展開を持ち込んだりしてると思う。

ゴーカイジャーの場合はこの5話で

・海賊が世の中、特に警察という地球の公的機関からどう見られているか

・具体的にどんな風に指名手配されているのか

・そういう自分たちを取り巻く状況に対して海賊がどういうスタンスで臨んでいるのか

・実際に彼等が指名手配に値するいわゆる<悪い>海賊なのか

という海賊と世の中との位置関係とその認識の変化をしっかり示してきた。

これで海賊はザンギャックから指名手配され続ける一方で、地球人からは今後犯罪者扱いされることはなく大手を振って街中を歩いていて問題ないと、警察の戦隊と絡める形ではっきり示した。ホント手堅いと思う。ビシバシと世界観のピースを嵌めて次の6話に送り出していってる感じ。

 

 

<6話>

■ルカと宝石

今回ルカが選んだ指輪は、わりと珍しい秋色系の渋くてシックで個人的に好みの色合いで、「これいい!」には同意する。

だけど、正直ルカのわりとシンプルでカジュアルなファッションにはどうなんだろう、とも思った。まあ服装地味な割にジュエリーには凝るという人もいるからある意味リアルな感じもするんだけど。

でもルカにとって宝石は、ファッションのパーツである以上に、身に着けて持ち歩ける財産でもあるんだよな。

実際、1話でも地球での活動資金の調達方法として、いわゆる海賊に付き物の略奪ではなく、ルカが嵌めていた指輪を売っていた。指輪がなかったら彼等はどうしていただろう?

数千万円で売れる物を指に嵌めて街中を歩くとか小心者には出来ない所業だけど、定住地を持たない人々が財産を宝石等の動産に変えて身に着け移動している、というのは海外の歴史ではままあること。特に彼女の過去やお金に対する考え方を知ると納得が行く。

 

■お金の価値

「この世はお金で動いているのよ」

「お金がなくても幸せなんてただの奇麗事。簡単に言わないでよね」

私の中のドルネロさん(タイムレンジャーの敵ボス)が物凄く力強く頷いている。いちいち意気投合しそうで困る。他戦隊の敵ボスと価値観がシンクロするスーパー戦隊ヒロインとは(汗)。

今回のエピソードでルカのキャラと背景を知れば、彼女もお金のためなら誰かを切り捨てられるタイプではなく、お金とは大事な人たちを守るための凄く大事なツールなんだと考えているのがよく分かる。カレー屋爆破で札束が四散した時の慌てぶりを見ると、彼女もお金が理不尽に無くなったらストレスで熱を出したりするんだろうか?とちょっと思った。

 

■金のなる木

ザンギャックにも金という金属は価値があるんだ、と思った。地球にはないもっと価値のある金属もありそうかなと思ったけど、あの世界でも金の価値は普遍的なんだな。現実社会でも金価格は放送当時から更に上がりっぱなしだけど、

 

守銭奴だけど憎めない

「あいつならがっつりふんだくってきそうだな」

「ザンギャックのお陰で儲かって、興奮したか(だから眠れないのか)」

「ただ働きするなんて珍しい」

と仲間に言われてしまうスーパー戦隊ヒロイン。

敵に襲われてる一般人の弱味につけ込んで、戦闘の合間に脅し込みの交渉術で報酬の額を釣り上げるスーパー戦隊ヒロイン(汗)。

交渉成立後、撃退した行動隊長に「ありがとねー、100万円くーん!」と満面の笑みで手を振り、投げキッスするスーパー戦隊ヒロイン(笑)。

いっそ清々しい。

ちょっとこれまでの戦隊にはなかった一筋縄でいかない女快盗で、守銭奴ヒロインの面目躍如。それが魅力的。「うっさいバーカ!」が象徴的なんだけど、酷いことを言っているのに声が綺麗で表情も可愛くてなんか憎めない。

坂本監督曰く「(市道)真央ちゃんは強気な台詞が凄く似合う声質と言い方と表情の持ち主」で、シビれたそうだけど、納得。

なお、市道さんの人選について中澤監督が語った何かのインタビューも読んだ事があるけど、前後の文脈はすっかり忘れてしまったのに「この子になら蹴られてもいいと思えるような」という言葉だけ今でも覚えていて(笑)。

それが成り立つってなかなか得難い人材だよなと思った記憶。

そして、変身してなくても行動隊長を1人で手玉にとり、特別ボーナスの額を釣り上げる駒に出来る強さがあるってことなんだよね。

 

■春日井親子

父親の高蔵を演じた島津さんは後にキョウリュウジャーでアミーの執事ジェントルを演じていたけど、パイロットの坂本監督とはこの回での縁なのかな。

嫌らしい成金親父のコミカルたと貧しくても娘思いの優しいお父さんの情感もどっちもさすがの演技力。

娘の小牧役の谷内さんは後にジュウオウジャーで大和君の父親を演じた国広富之さんの次女とのことで、納得の美しさ。一見わがままで高飛車な成金お嬢様といじらしいパパ大好きっ子っていう2面性がこちらも魅力的で、なんか透明感、ていう言葉が浮かんだ。

 

■ナノナノダ

おとぼけ怪人。

5話までは割とシリアスな、人間への被害が甚大かそうなる可能性の高い怪人で、1話とか死人が出てそうな勢いだった。けどこいつは、トラックに轢かれたり赤外線センサーに引っかかって火傷したり、ルカに100万円くん扱いされたりと終始コミカルで抜けていて(笑)。

ザンギャックは強大な敵だけどこれからちゃんとコミカルな怪人も出しますよと分からせてくれるのには十分な逸材で、楽しませてもらった。

 

■ルカの夢

お金にがめついのは夢があるから。

その夢とは?とジョーに聞かれても叶わなくなるから言わない。

ジョーにも言いたくない過去があるからお互い様で深追いはしない。この辺りは各メンバーが脛に傷持つ寄せ集めのアウトロー戦隊ならではのシビアな距離感だな、と思う。

過去回想では、荒廃した世界で、親を亡くしたらしい小さな子供たちの面倒を見ていた。ボロボロで顔も薄汚れて髪もぼさぼさ。今の小綺麗さとはかなりのギャップでちょっとぎょっとした。なんとか調達してきたらしいなけなしの食料を配って、配れるものが少ないことを涙を流して謝ってる。

夢が何かを具体的に語らなくても、お金はその子たちを守れて幸せに出来ることに遣いたいんだってのはなんとなくわかった。やっぱりドルネロさんと同類なんだろな。

 

■汚いぬいぐるみ

宝石を店ごと買うなんていうめちゃくちゃな金遣いの小牧が唯一大事にしているのが、貧乏で誕生日プレゼントも買えなかった頃に父親がたぶん軍手で作ってくれたウサギのぬいぐるみ。

貧しくても今よりずっと家族だった時代の象徴だから、汚れてボロボロになっても宝物。

ルカは、父親を金の亡者から元に戻したいからといって大金をドブに捨てるように使いまくる行為は断固否定するけど、ぬいぐるみを大事に思う気持ちは否定しない。

だから、燃え盛る屋敷から父親から高額報酬で頼まれた金のなる木ではなく、小牧が必死で頼んだぬいぐるみを持ち出す。

やっぱり、お金より大事な物があるのはちゃんとわかっていて、お金はそれらを守るものだって思っているんだね。だから渡された小切手はぬいぐるみに潜ませて報酬返上した。金銭的には物凄く多くを失ったあの親子のこれからの負担が少しでも少なくなるように。

 

■ただ働きじゃなかった

だけどちゃっかり、当初の約束どおりあの指輪はいただいているし(笑)。

まあ多少危険とかあっても正味2日間働いただけで500万円なら十分荒稼ぎでしょ。貰わなかったらあのまま焼けちゃったんだし、っていうバランスもお見事だな、と気持ち良い。メイン回は遅くなったけど、その分全編ルカの魅力がいっぱいって感じの回だった。