海賊戦隊ゴーカイジャー: 46話感想というか覚え書き
※海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。
■増援はまだ来ない
ザンギャックの増援は既に地球に向かって出発したとのこと。
クリスマスに軍を立て直すことを決め、年が開けてニンジャマンがガレオンに住み込んでから1週間だから、最低でも2週間以上経過している。それだけザンギャックが大組織でいろんな準備に時間がかかる、またはそれだけ大規模の艦隊を送り込んで来るってことなのか。それとも現実的にはかなり早急に準備した方で、本来はもっと時間がかかってもおかしくないのか。
どちらにしても海賊が年末年始にまたしてもザンギャックに煩わされず活動出来る時間が貰えたのは、妥当だったってことなんだろう。
ここでインサーンが、増援が到着するまでただ手をこまねいているだけでなく、省エネで地球に争いを起こせると立候補するのは理に適ってる。むしろ遅すぎるかもだけど。
■ニンジャマンの評価
かれこれ1週間海賊と一緒に暮らしたニンジャマンから見て、ハカセ、アイム、鎧の良い子組はやっぱり好印象。
マベ、ジョー、ルカのアウトロー組はやっぱり悪印象強め。
鎧の加入で綺麗に3対3に分かれたこの組み分けはハリケンジャー回でも効果的に使われたけど、アウトロー組のアクの強さが正義の味方である先輩戦隊たちとは一線を画し、だけど良い子組の良識やヒーロー性があまりかけ離れ過ぎないよう緩和している。個人的には中々絶妙なバランスを保っているように思えて好き。
■ハカセと鎧の豹変
インサーンが見つけてきた今回の怪人は悪魔祈祷師ジュジュ。人間たちに宇宙水晶を撃ち込み、後から儀式を行うことによって一斉に暴れさせる。
ハカセと鎧も戦闘中に背後からこっそり撃たれたため、儀式によってガレオンでの食事中に突然どこぞのチンピラみたいな態度と口調(鎧は関西弁)で争い始めた。
敵に操られてキャラ変し暴走する、というのは戦隊あるあるで、凶暴化するなら違いがわかりやすいのは普段当たりの柔らかいハカセと鎧ってことなんだろう(さすがにアイムにはさせられない・汗)。
というか、マベやジョー、ルカだと違いがわかり辛すぎるのを危惧されたらしい(笑)。
なんせ、やめるよう注意したルカがハカセ鎧から罵倒され、「ああーっ?!!(怒)」と血相変えて立ち上がった時のドスの効いた迫力は、まるで不良少年どもを一喝する姐御。年季の違いを見せつけていた(笑)。
市道さんご本人の素はわりとおっとりした感じなのに、さすがの演技力。
■悪くはないけど今更感
不良化して食卓を滅茶苦茶にしたまま出ていったハカセ鎧に対し、マベたちアウトロー組は表立って慌てず、2人をアイムに任せる。
マベもジュジュに背後から宇宙水晶を撃たれたけれど、気配に気付き剣で弾き落としていた。
(ハカセだけじゃなく腕に覚えのある鎧に対しても戦場ではマベの方が一枚も二枚も上だという見せ方にもなって手堅い。)
その剣に残った宇宙水晶の破片をナビィに調べさせて事態を把握し、儀式の場所も特定して乗り込む。
アイムの方は街でも暴れている人々を見かけて何かおかしいと察し、2人の間に飛び込んで捨て身でハカセと鎧に心を取り戻すよう呼びかける。
それに応えて正気を取り戻しかけた2人が、体が勝手に暴れようとする衝動に抗い体内の宇宙水晶を精神力で破壊して、呪縛から自力で脱する。
海賊たちの絆とハカセ・鎧の強い心が敵の企みを打ち破り、それを見て、ここまでいろいろ海賊たちに失望していたニンジャマンも、人を信じなくなりすぎていた自分を反省し海賊への見方を改め、大いなる力を託すって流れ。
今回のエピソードは、私は未見だけどカクレンジャー本編最終回の「この地上が平和であり続けるかどうかは、人の心一つで決まる」みたいな台詞をテーマに作られたとのこと。
ただ、これまで海賊たちの絆の強さは1年間かなり良い形で何度も見せて貰っていて、41話の時に「何度見せて貰ってもいいな」と書いたくらいだけど、ごめん、今回は今までのに比べるとさすがに、悪くはないけど今更感があって物足りなかったかな(汗)。
本編を見ていたら、上記の言葉を踏まえてもっと受け止め方は違ったのかもだけど。
香村さんのゴーカイジャーでの仕事ぶりからハードル上がりすぎちゃったってのもあるのかな?
考えてみると、ただでさえレジェンドだけで今回で10戦隊目。戦隊ごとにテーマを見極めそれをゴーカイジャーの物語にもリンクさせることを何パターンも考え出すのは難しい作業だったはず。
加えて年末年始で1週空いたとは言え香村さん史上初の3話持ちでもあり、また当初は総集編は独立していたのが途中からニンジャマンに説明する形への変更もあった上に、後述するニンジャマンの扱いへの配慮を考えれば、尚更大変だったろうなとも思う。
■大いなる力だった
ニンジャマンはレジェンド大戦に参加していないために戦う力を失っていない。だから当たり前に変身後のゴーカイジャーに混じって戦闘に参加する。
カクレンジャーへのゴーカイチェンジは、鎧が遠慮して他5人+追加戦士枠にニンジャマン本人の計6人という並びになり、これまでのパターンからすると変則的。
そんでジュジュの撃破と巨大化によるロボ戦でカクレンジャーの大いなる力が発動すると、ニンジャマン自体が巨大化。つまり彼自身が大いなる力だったことが判明した。
前回
「カクレンジャーの追加戦士だけどシリーズ初の人間体を持たない戦士でもあり、番外戦士という位置付けで語られることもあるみたい。」
と書いたけれど、ゴーカイジャーにおいては、追加戦士扱いでありつつも最終的にはレンジャーキーではなく風来丸やマッハルコンと同じような「大いなる力枠」に着地したってことになる。
レジェンド大戦に参加していなかった彼を最終的にどういう扱いにするかについては、当初「レンジャーキーになれば良いのでは?」と言われていたのを、香村さんが「この時点でキーになっても」と腑に落ちず、このような形にしたとのこと。
確かに、もう残り5話では新たなレンジャーキー追加のタイミングとして遅すぎる。それよりは、手に入れるべき大いなる力そのものにした方が納得度は高いな。
他の商品化されない力のようなCG処理ではなく実体化した新装備だけど、年が明けてもう新玩具は発売されないタイミングだし、ニンジャマンのヒーローとしての面目もこちらの方が保たれたような気がして、流石の配慮だなと思った。
一方で、もしニンジャマンもレジェンド大戦に参加していたら、例えばズバーンみたいにレンジャーキーそのものになってたんだろうか?なんて考えてみたりする。
■全部出揃った
この戦いを遠くから見守っていたバスコは、自分では見つけられなかったカクレンジャーの大いなる力が海賊のものになったことを喜ぶ。
これで海賊が手に入れた力は29。バスコが5。全てのレンジャーキーがどちらかの陣営の手の中にあり、後は両者が対決して、片方がもう片方の分を総取りするだけ。
途中劇場版で荒稼ぎしたとはいえ、よくもまあこれだけの数をキッチリ集めたな、ようやくここまで来たんだな、と感慨深かった。同時に、もうレジェンドから大いなる力を貰うドラマはやりきっちゃったんだな、という終わりの近い寂しさも感じてしまう。
■ありがとう、香村さん
香村さんの登板はこの回で終了。全部で16話。レジェンド登場回12話(10戦隊)、本筋のバスコ前後編、非レジェンド単発回2話、と八面六臂の大活躍。
ゴーカイジャーという作品で香村さんの果たした役割は、いちサブライターの枠を超えてかなり大きかったな、と改めて思う。
改めて、ありがとう、香村さん。
後に香村戦隊2作とも荒川さんがサブライターとして参加したのは、そのお返し的な意味合いもあったんじゃないかな、とも思ったりする(なお2作の荒川さんの合計本数よりゴーカイ16本の方が多い・汗)。
香村さんは今作の後、ウィザードでもサブメインとして22話担当と宇都宮Pの信頼を深められている。だからてっきり次の戦隊メインでは?と思っていたらトッキュウジャーでは違ったので、慎重だなあと思った記憶。
ジュウオウジャーは正に満を持して、という感じで、大事に育てられたんだな、と思う。
※47話の記事は来週更新予定です。
キラメイジャー44話感想: ガルザの数年間+たぶん20分足らずの人生(長め)
外は暗い雨。無言で帰還した4人の沈鬱な心を映し出したみたい。石の姿に戻ったオラディン王が口火を切って、充瑠の死が伝えられる。
充瑠が幼い頃のガルザと意識がシンクロしたのは「彼の純粋さ故」とオラディンは推測した。充瑠のこれまでの数々のひらめキングやオラディンの意識とシンクロ出来る能力には、特にそれ以上隠された深い事情はない、ということに着地するのかな?結構気になってた部分だから、そうだとするとちょっと残念かもだけど、次回最終回だからやむを得ないかな?
ファイヤーは相棒の死を受け止めきれず「信じてたまるかよー!」という絶叫が響き、闇の中に浮かび上がる番組タイトル。
闇というキラメイジャーのこれまでの有り方とは真逆の見せ方が、今の絶望的な状況を強調している。
最終回の1話前でのOPカットは珍しいけど、明るくキラキラ歌っている場合じゃないのと、たぶん「死んだ」と見られている充瑠がOPでどう扱われるかを伏せるためかな。
クランチュラさんはヨドンへイムの荒野を1人歩いている。ガルザの死も知った。「ヨドン皇帝に逆らって生き延びた者はいない」と認めつつ、それを打開するためにイリュージョンを狙おうとしている。
盟友ガルザが皇帝を乗っ取った時点ならヨドンへイムに逃げ込めば安全は確保されたも同然で、もしかしたら一緒に楽しくやりたいことをやれていたかもしれない。
けど、皇帝が復活してガルザが粛清された今、謀反人クランチュラさんにとってはもはや地球よりこちらの方が危険な場所になってしまったのは計算外だったかもな。それでも足掻くしぶとさは、さすがキラメイジャー版ねずみ男(ごめん)。
「ガルザ・・・愚かな奴。ま、僕みたいに愛されてないから、しょうがないか」
えーと(汗)、なんでヨドンナが自分は愛されてると思い込んでいるのか、唐突だったんでちょっと戸惑った。以前大ピンチの時にガルザに勝ち戦を捨ててでも助けに行かせたからだろうか?
その割には、皇帝と同居みたいな大事なことは一切教えて貰ってなかったし、既にその思いが裏切られる予感しかないんだけど。
皇帝はヨドンナに、イリュージョンはこの地に置いて、地球に残りのカナエマストーン3つを奪いに行くことを指示。
ヨドンナはここならば絶対に安全と、どこかに隠すでもなく思い切り剥き出しでイリュージョンを置いて行く(汗)。
ヨドンへイムには棚とか金庫とかないのか、それともヨドン皇帝の統治が行き届き過ぎていて却って治安が良すぎ(笑)、「盗まれないよう収納して保管する」という概念が秘書官にもないのか。まあ確かに皇帝に逆らってまで盗みに入るヨドンへイム民は考えにくかったかもしれない・・・これまではな!!
悲しみにくれ静まり返るココナッツベースの空気を「いや、これじゃいかん!」と破ったのは時雨。「今は充瑠のことを考えるのはやめだ」
充瑠をないがしろにされたと感じて食ってかかるファイヤーに、ヨドン皇帝が残りのカナエマストーンを奪いに来るはずだというシビアな現実を突きつける。
番組当初は、メンバー個人に対して角が立ちそうだけど必要なことを言うのは為朝の役目だった。けど姫の呪いあたりから、残酷な現実だけどチームが前に進むために必要なことを伝える役目を引き受けるのは時雨になってるな。格好良いよ兄貴。
小夜も、「今やらなきゃいけないことは、地球を守ること。涙はその後!」ときっぱり時雨の主張を補強。
瀬奈は「今から作戦を言うよ!・・・あ・・・為朝くんが!」とオチをつけて和ませる(笑)。
振られた為朝はそれまで静かに閉じていた目をかっと開き、「作戦がまとまった」と、いかにも切れ者の作戦参謀って感じで格好良い。
むちゃ強いヨドン皇帝を倒すにはカナエマストーンそれぞれの力を使うしかない。皇帝はこちらが奪われまいと守りに入るだろうと読んでくるはずだから、その裏をかいて積極的に攻撃に使う。
「そこでオラディン王様、お力を貸していただけますか」
・・・個人的には、そもそも充瑠がなぜヨドンへイムで死んだのかを考えれば、「貸していただけますか」と聞くまでもないと個人的には思う(年長者への丁寧な態度は為朝らしいけど)。
むしろオラディンは自分から「私が充瑠くんの分まで頑張らなければ」ぐらい言っても良いんじゃ?と思ったんだけど、ここは難しいのかな。
オラディンが冒頭で充瑠を「助けられなかった」という言い方をした時、なんとなくこのドラマは「充瑠が死んだのはそもそも王様を助けに行ったせい」ということから極力目を逸らさせようとしているような気もした。
オラディンのせいで、と改めてスポットを当てるのは酷だし、彼にいつまでも自分を責められてもキラメイジャーらしくない。だけどガルザへの態度の積み重ねもあって、この人は良くも悪くも自分のマイナス面にはとことん目を向けない人なのかな?とついつい思ってしまう(汗)。そういう人だからこそ「私の胸に絶望の文字はない」のかもだけど。
為朝の作戦は、王様がエネルギアでパワーアップしてヨドン皇帝を封印し、そこをデストリアで破壊する、というもの。
オラディンは、「私が以前石板にされたのをやり返すのか」と早々に納得していたけど、クリスタリア人というかオラディンには元々そんな力があるの?聞いてないよ?って驚いた。
それともエネルギアを使えば可能なのかな?まあ正直ここは番組から「出来ることになってるんですっ!」と力尽くで押し切られてる気がしなくもない(笑)。
それでも巨大な皇帝を封印しきれるか。その鍵を握るのは博多南さんがプログラム開発中のニューアイテムということで、また出たよ何でもありな神サポーター(笑)。為朝の「超特急でよろしく!」に無言のサムズアップで応えてスッと席を立つのが、ホントつくづく頼もしい。
博多南さんの財力、技術力、調査解析能力、無私の奉仕精神のどれか1つでも欠けていたら、地球は終わってたなと改めて。
為朝はPCで、ヨドンナが針金邪面からイリュージョンを取り戻しに来た夜の、ちょっと印象的だった映像をなぜか確認。あれからまだ10日しか経っていないことが判明して、ちょっと衝撃(汗)!
そっか、針金邪面の1週間後に猫充瑠との交流が原因でクランチュラさんがヨドン軍を離脱し、そこから2~3日後に起きたガルザの謀反からオラディン救出までの一連の出来事は、放映日は今回入れて3回に分かれても劇中では1日の出来事ということか。
ヨドン皇帝が現れた。宝路はガルザとの戦いのダメージで眠っており、ファイヤーはなんか1人でブツブツ言ってて、傍から見るとまだ気持ちの整理がつかないみたい。やむを得ず王様のグレイトフルに青桃が乗り、エキスプレスザビューンに黄緑で出撃。
早速、作戦第一段階としてグレイトフルが皇帝にビームを撃ち込み、すかさずエネルギアで王様を強化。ビームの威力が何倍にも増幅されるも皇帝に跳ね返されたタイミングで、今度は博多南さんのプログラムが完成し、為朝が手元に持ってきた装置に転送される。
為朝は予め装置をリバーシアと接続しており、ヨドン皇帝をさっき確認していたヨドンナの過去映像の日時に戻すようリバーシアに頼み、発射。すると、巨大なヨドン皇帝は等身大のヨドンナと入れ替わり、戸惑った所を作戦どおり石板に封印成功。
当時は正体を知らなかったとは言え、一度は恋した女を殺すための作戦と考えるとなかなか容赦なくてエグいな為朝。
でもヨドン皇帝は時雨がデストリアで破壊する直前に、意識の部屋でヨドンナを自分の爪で引き裂き、排除することでこの危機を打開する。
愛されていると思っていたのにそれを残酷な形で否定され「ここは泣く所で合ってるかな?」と息も絶え絶えに呟くヨドンナ。たぶんどうしようもなく泣きたい気持ちが心の底から沸き上がっていて、でもそんな自分の感情に、こんな時までまだ自信が持てないみたい。
そこを皇帝に「こここそ笑う所だ。我の役に立って死ぬのだからな」と教えられ、一度は従い笑おうとするけど「僕・・・無理です」と消滅。
これまで皇帝の役に立つ事だけが全てで自分や他人の感情がよくわからず、自分に恋してくれた為朝から笑う事を教わっても「ここ笑う所だよね?」と嫌らしい使い方で何度も踏みにじってきた。
そんな彼女がその為朝の作戦が元で皇帝に切り捨てられ、今度は「笑う所だ」と押し付けられても、初めて自分の感情に正直になり無理だと悟って果てる。哀れだけど為朝との因縁の結末としては、たぶん好き。
そんで「無理です」と言ったあの瞬間、ヨドンナは自分がさんざん嘲り痛めつけても、自分の内には例え皇帝が相手でも曲げられないものがありそれを自由に表現したいと逆らったクランチュラさんの気持ちが、ちょっとだけわかったのかもしれないな。
もう遅いのかもだけど、ただ皇帝の顔の左側についたヨドンナの邪面は消えていないし、予告を見るともう一幕あるのかも。
石板の封印は破壊されて巨大サイズのヨドン皇帝が復活し、作戦は失敗。ならばとザビューンに弱点をサーチさせると、邪面の下の本当の顔が弱点と判明。でも邪面は宇宙一の硬さで破壊不可能、と直後に絶望が突きつけられる。
そこに強烈な一撃を喰らい、グレイトフルもエキスプレスザビューンも吹っ飛んで合体解除。放り出されたキラメイジャーたちに迫る皇帝の前に宝路が怪我を押してドリラーで乱入、腕を吹っ飛ばし一矢報いる、と目まぐるしい攻防が続いて、充瑠が不在でも皆踏ん張っている。
そんな戦況を見守っていたショベ爺たちは自分たちもと、まだブツブツ言ってるファイヤーを置いて4体で出撃しようとする。それを引き止めたマブシーナは、ファイヤーが心の中で充瑠に呼びかけていると見抜いており、ファイヤーもそれを認め、充瑠に戦況を伝え続けていたのだと明かす。
でも充瑠から返事が返ってこないと悲しみにくれる彼の気持ちを理解しつつ、姫は「今は皆と一緒に戦って下さい!」と凛と言い放つ。「充瑠さんが遂げられない思い、それを貴方が遂げるのです!」
将来彼女が女王になったら、こんな風に配下の気持ちに寄りそいながらも、時には厳しく必要な事を指示し、鼓舞して率いていくんだろうな、と思わせた。0話での気弱で後ろ向きな少女が、ここまで成長したんだなと感慨深い。
一方でサポートキャラである彼女の扱いの丁寧さに、女子戦士特に外科医設定がコロナで活かしきれなかった面もある小夜が、比べてしまうと若干描写に恵まれなかったかもって気の毒な気もしてきた。
皇帝の腕はすぐさま再生しドリラーが押され気味になった所に、今度は復活したファイヤーを含むキラメイジンが参戦。「戦いはこれからだ!」と盛り上がり、ドリラー参戦の時と同様最初はイケるかと思わせるんだけど、やっぱり皇帝の優位は動かず一撃で激しくダメージを喰らってしまう(泣)。
頑張っても頑張っても、次から次へと打つ手も加勢も跳ね返される大苦戦で追い込まれると、皇帝がトドメの一撃に向け超巨大エネルギー玉を増幅させ、絶体絶命のピンチ。
でもその時、皇帝は背後から不意討ちされ、その衝撃で自分が貯めていたエネルギー玉を自ら喰らい物凄く盛大に自爆(笑)。
現れたのはジョーキーで、そこから降りてきたのは死んだはずの充瑠。まあニチアサ慣れした視聴者は本当に死んだとは思ってなかったけど(笑)、劇中の皆は驚きのあまり戦いを放りだして駆け付け、大歓喜。
幽霊ではと足の有無を確認し真っ先に抱きつく為朝、「俺は生きていると信じていた」と人目もはばからずダダ泣きする時雨、のイケてる2人の格好つけない子供みたいな反応が特にぐっとくる。
充瑠は、ファイヤーの声が届いて戦況は伝わっていたけど、充瑠からの声はファイヤーには届かなかったと説明。
そんで充瑠を助けたのは、私は前回クランチュラさんだろうと予想したけど、ガルザだった。
ガルザは突撃する寸前に、やっぱり体を捨ててジョーキーに意識を飛ばしており、崖から落ちた充瑠を救った。
操縦席にはガルザが元の姿のままで座っていて、「無事だったのか?」と驚く充瑠に「俺の命はもう尽きる」と静かに首を振り、「俺の分まで、お前は生きろ。そして絵を描き続け、煌めき続けろ」と穏やかに語る。それから「ジョーキー、これからはこいつの仲間になれ」と解放し、「兄上に会ったら伝えてくれ。生まれ変わったら、今度は仲の良い兄弟になりたい、とな」と光に包まれて消滅した。
「<俺が生きた意味は今ここで生み出す>ってガルザの言葉、俺に思いを繋げるってことだったんだと思う。助けて貰った俺が、しっかり生きることで、ガルザが生きた意味になるんだ」
充瑠はしっかりその思いを受け止めた。そのことについて感じたことは、最後に書きたい。
「ガルザ、弟よ、兄として誇らしいぞ」オラディンは、話を聞いたこの時点ではガルザが洗脳されていたことまでは知らなかったと思うけど、充瑠を助けて彼に思いを繋げた、という一点でおおよその理解をした、ということなんだろうか?無難な着地かなと思いつつ、正直、この兄弟について1年間あれやこれや考察した身からすると、次回でもう少し何か欲しいなとも感じてしまうんだけど。
すぐに帰ってこなかった訳は、ヨドン皇帝が地球に行っている隙にイリュージョンを探して回収するため。でも先にクランチュラさんが皇帝の支配から逃れるため、いざというときの切り札として盗み出していたため、合流して一緒に地球に帰ってきた。あんな無用心なしまい方なら無理もないけど、あそこに自由に出入り出来るクランチュラさんのことは、ノーマークだったのかな。爆弾を投げつけたのがクランチュラさんだと把握していなかったのなら、実は生きていたことも知らなかったのかも。
「ヨドン皇帝に逆らって生き延びられた者はいない」と繰り返してから「これまではな!」の、口だけしか表情は見えないけど晴れやかだとわかる笑みが、してやったりって感じで可愛い。
そんで「だが、お前らなら新しい歴史を作れるかもしれない!」とイリュージョンを託す姿は何だかもう一端の仲間みたい(笑)。
皇帝がようやく体を復活させようとし、充瑠が戻って来て意気上がるキラメイジャーは、充瑠のいかにも1年間戦い続けたレッドらしい力強い掛け声で、キラメイチェンジ。なんかすっかり味方の顔で後ろから見守ってるクランチュラさんが美味しい(笑)。
その目の前に復活したヨドン皇帝が巨大な姿を見せて、続く。
次回は素面名乗りであの組体操をやってくれるのか気になる(笑)。
愛する者、愛してくれる者を憎むよう洗脳されたガルザさんが充瑠をあれだけ憎んだのは、洗脳がなければもしかするとオラディン以上に充瑠と心を通わせられたかもしれないことの裏返しかもしれない。
そんな中、悪の組織に所属し本来は決して愛する対象にはならないけれど、おおらかで人懐っこく温厚なクランチュラさんの存在と距離感は、今まで愛すべき者を片っ端から憎しみの対象に変換されてばかり(恐らくそのために妻や子も持てなかった)だったガルザさんには、救いだったろうな、と改めて思う。
ガルザさんの生物としての生存期間は、たぶん少なくとも50年以上(そんなに年の違わない兄のオラディンが今と同じ容姿の時に宝路を迎えてから30数年)。
そんで、その最期の1日ときたら
皇帝と同化→地球に行き人々をベチャット化→キラメイジャーと戦い完勝→皇帝を乗っ取りロードガルザに→キラメイジン、エキスプレスザビューン、グレイトフルと戦い完勝
→ヨドンへイムに戻りオラディン処刑の準備→地球にトンボ帰りで宝路と決闘し完勝→ヨドンへイムにトンボ帰りで充瑠を拉致→充瑠と決闘→洗脳が解ける→皇帝に追い出される
→皇帝から洗脳の事実を知らされる→意識をジョーキーに飛ばす→体は特攻して爆破→ジョーキーから意識を元の姿に戻す(元の姿を実体化させる)→充瑠を救出→消滅
って、密度が濃すぎ、生き急ぎすぎだろ、とも思う。
だけど、彼の本当の人生は、生まれてから幼い時に洗脳されるまでの数年間+洗脳が解けてから死ぬまでの、たぶん20分足らず。
その20分足らずで自分の生きる意味を、「充瑠を救い思いを繋げること」と瞬時に見定め実行したのは流石、本来は英雄になるべき素質の人だったんだろうし、充瑠もそのバトンをしっかり受け取ったことで、「生きた意味」はきっちり成立していくんだろう。
だけど、それでも儚すぎると思わずにはいられない(涙)。
王様も王妃も意識を飛ばした後ずっと生きていたのに、なんでガルザさんだけはすぐ死ぬんだよ?!(怒)と思ったりもした。
けど、意識を飛ばした直後に本来不可能なはずの<自分を元の姿に戻して操縦し充瑠を助ける>という「無理」をして、エネルギー使い果たしちゃったのかも、と考えてみたりもする。
もしかしたら、兄夫婦のようにジョーキーにずっと意識を留めておけば、今も生きていられたのかな。
けど、操られていたとはいえその手で愛する兄を殺しかけ、自国を滅ぼしてしまった罪の意識のあまり、そんなに長く生きる気はなかったのかもなあ、とも。
洗脳は解けても、その長い年月に自分が憎しみをベースに考えてきたこと、してきたことの記憶は消えていない。それって誇り高い英雄になるはずだった本来の自分を取り戻したガルザには、身を切り刻まれるような恥辱かもしれないよな。
たとえその上に積み重ねた真面目で地道な、血肉となった鍛錬や精進の積み重ねがあったとしても。特にこの1年のことは、クランチュラさんと一緒にその時は楽しめた、そんで私たちも見ていて楽しめた数々の思い出さえ、呪いに転じてしまったかもしれないし。
加えてもしかしたら、自分が皇帝にされたように自分が操ってしまったジョーキーの中に、延命のために居座り続けることも許さなかったのかもしれない。
洗脳中も生真面目さが感じられたガルザさんは、本来もっとそういう筋目正しい人だったんだとしたら、そういう叔父の本当の姿を姪のマブシーナは知らず仕舞いで終わってしまったんだな、と思うことも悲しい。
でも、心に残る良い敵役だったなとしみじみ思う。
海賊戦隊ゴーカイジャー: 45話感想というか覚え書き
※海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。
■カクレている
海賊が手に入れた34のスーパー戦隊の大いなる力も今や28、バスコに奪われた5つを除けば残りはカクレンジャーのみ。
そのカクレンジャーと接触するヒントを得るため気合を入れたナビィの占いの結果はしかし、「かくれんぼした忍者は見つけられないぞよ」という過去最高に絶望的なもの。そこから
一同落胆→バスコが捕まえられなかったのもカクレンジャーのことだろう→忍者に本気で隠れられたら探せる気しない→神様にお願いしようか→捜し物に強い神社は?→神社と言えばタイムレンジャーのあれは何だったのか?→あの神社何て言った?→寝隠神社→ねがくれ・・・カクレ?あーっ!!
という流れるような連想ゲームでドモンが守らせた神社に手掛かりがあると推察し、現地へ。
そこでマベが祠の中に、中から助けを求める声がする胡散臭い壺を見つける。40話ラスト近くで暗闇に妖しく浮かび上がっていた壺だ。アイムが割ると、中から出て来たのはカクレンジャーと共に戦った戦士ニンジャマン。
私はカクレンジャー未見なので調べてみたら、カクレンジャーの追加戦士だけどシリーズ初の人間体を持たない戦士でもあり、番外戦士という位置付けで語られることもあるみたい。
■レジェンド大戦未経験
ニンジャマンの話では、10年前に動物園から逃げ出した猛獣たちから子供を守ろうとしてやりすぎ、猛獣たちをボコボコにしてしまったために罰として10年間閉じ込められていたらしい。その間にレジェンド大戦が起こったけれど、当然ニンジャマンは参加出来なかった。
放送当時、ニンジャマンの不在を指摘する人もいていろいろ考察されていたけれど、晴れて彼がアバレピンクを押し退けて(笑)、スーパー戦隊200人目の戦士ってことになるんだろうか。
記念番組のタイミングでキリ良く200になるなんて(偶然やどこまで戦士扱いするかの微調整もあるんだろうけど)、なんとも綺麗に収まったもんだなと、こういう所もゴーカイジャーは「持ってる」戦隊だなと思う。
壺の中にいた間の事情を何も知らないニンジャマンのために、まずはレジェンド大戦を映像と共に説明し、今回はそんな形で進行する総集編だよ、とここでフォーマットが示される。
■ドモンの名誉回復
ゴーカイジャーが介入しなかった歴史では、寝隠神社が破壊された時にニンジャマンも死亡していたことになる。ドモンの与えたチャンスとは、ニンジャマンを助けて彼から大いなる力を貰え、ということだったと判明した。
40話の伏線がここでしっかり回収され、海賊からさんざん嘘つき野郎呼ばわりされたドモンの名誉も劇的に回復(笑)。というかもはや恩人の域に達してると思うから、あれだけ悪態ついてたマベたちはドモンへのお詫びとお礼にひと月遅れのお歳暮を送らないとバチが当たるレベルだと思うよ。
■第一印象の悪い戦隊
そうと分かれば即、助けてやった恩を振りかざしてニンジャマンに大いなる力を要求しようとするマベ、同時に手を伸ばすジョールカのアウトロー組。
それに対しハカセと鎧の良識派が、そういう態度だからこれまで揉めて来たんだと止める。
この時に鎧が言った「基本的に皆さん、第一印象悪いですからね」という台詞が大好き(笑)。
「第一印象悪い」+「スーパー戦隊」って取り合わせは、35年間分見渡してもなかなか貴重だよなと。香村さんもスーパー戦隊の歴史におけるゴーカイジャーの、正義を標榜せずガラの悪いアウトローという特殊性をかなり気に入って敢えてネタにしている感じ。
■接待
まずはニンジャマンの自分たちへの好感度upのためにハカセと鎧が腕をふるってお正月らしい豪華な和食のご馳走を用意。
ルカも着物姿でお酌をし、ジョーも菓子職人としてニンジャマンを模った和菓子を振る舞い、マベはちょんまげカツラを被って和傘で鞠の代わりにナビィを回す日本の伝統的な隠し芸を披露と、「第一印象の悪い」3人も頑張っておもてなしする。(ルカにだけ着物を着せるのも、過去回不遇の埋め合わせの意識をこっそり感じる)
だけどナビィが勢い余って傘から飛び出しご馳走にダイブしてしまう。渾身の作品を台無しにされたショックでいつものクールさをかなぐり捨てナビィに掴みかかるジョーが新鮮(笑)。更にナビィのせいにするマベをルカが責めて言い争いになり、やっぱりアウトロー組の地が出てしまった。
「<あれ>でみなさん、いい人達なんです・・・」というアイム、それフォローになってるの(笑)?
■超豪華総集編
それでも、「こう見えて俺たち、35番目のスーパー戦隊ですから」という鎧の言葉から、ニンジャマンに説明する形で史上空前の超豪華な総集編が再開する。
まずは地球に来た海賊たちのゴーカイジャーとしての活躍を紹介
→カクレンジャーへのゴーカイチェンジに驚くニンジャマンに説明する形で、各戦隊への多段変身を披露
→過去映像ばかりでなく目の前でオールブルーやオールライオン戦隊に変身し喜ばせ
→そろそろ本題に入れそうだと海賊たちの夢である宇宙最大の宝の入手に各戦隊の大いなる力が必要だと明かし
→これまで登場し交流したレジェンドたちを総ざらい&貰った(商品化された)大いなる力を一挙公開
→他の戦隊は皆力を渡してくれたのかと聞かれ、大いなる力を狙うライバルのバスコについても説明
と、怒濤の情報量と映像をかなり要領とテンポよくまとめている。
ただし前回のバトルケニア曙四郎は、厳密にはレジェンドとして交流してないし、それ以前に正体も素顔も知らないけど(笑)。
この総集編はもう2度と製作不可能と言っても過言ではない永久保存版で、この回だけ単品で円盤発売してもマニアが買うだろうと思う。
■だが断る
「試されたり、一緒に戦ったり、色々大変だったよね」「だが、教わった事も沢山ある」「私たちのことを認めていただいて、大いなる力を授かった時は、とても嬉しかったです」「僕たちゴーカイジャーにも、大いなる力があるってこともわかったし」
海賊たちはレジェンドたちとの交流が有意義だったと謙虚さを示し、彼らに認められ力を貰えたこと、自分たちも今や大いなる力を持ったスーパー戦隊の端くれであることをアピールしつつ、残るはカクレンジャーだけ、と改めて大いなる力の譲渡を真摯に頼む。
けれどニンジャマンは拒否。
これまで自分の慌てん坊な性格から沢山の人間に迷惑をかけてきたことを反省し、もう簡単に人を信じないと心に決めた彼に、ハカセの「今のは心通じ合うパターンでしょ(泣)」が視聴者の声を代弁してるようで共感しつつじわじわ来る(笑)。
ニンジャマンは、これからしばらくガレオンに住み込んで海賊たちを観察してから、力を渡すか否か決めると宣言。
憧れのレジェンドとの同居に歓喜し満面の笑みで一緒に街の見回りに行く鎧とそれ以外、特に普段のキャラを曲げて接待したのが骨折り損になったアウトロー組のふて腐れっぷりが、同じ戦隊とは思えない温度差で風邪をひきそう(笑)。
当時てっきりこの総集編で力を貰えるのかなと思っていたから、まさかの前後編に驚いた。
■カクレンジャーの思惑
そんで最後にニンジャホワイト鶴姫が登場して更にびっくり。
本編未見なので、鶴姫はVS劇場でカクレンジャーVSオーレンジャーでのまだ少女だった頃の姿を見ただけだけど、それから16年経ちすっかり大人の女性って感じ。
「海賊たちにこのままこの星を守らせようと思ってたのに、ニンジャマンを探し出すとはね。やるじゃない。いいわ。後はニンジャマンに任せる」
カクレンジャーは海賊からもバスコからも隠れ通すことで、大いなる力を探す海賊たちを地球に足止めし続け、ずっとザンギャックから地球を守らせるつもりだったわけだ。
ドモンが海賊たちにチャンスを与える前の歴史では、この目論見が成功していたことになるのかな。
その歴史線でも30世紀から対ザンギャック用に豪獣ドリルを送れている時点で、恐らくザンギャックの地球侵略は最終的に失敗したんだろう。
でもその場合、海賊たちはカクレンジャーの大いなる力も、更には宇宙最大のお宝も手に入れられず、もしかしたら地球を守りながら生涯を終えてしまったのかも?と思うと、ホナミ母子の運命も合わせて恐ろしい。
このカクレンジャーの目論見を、大いなる力を渡した他の戦隊はどう思いながら見ていたのかな、とはちょっと気になった。個人的には、海賊たちの側に立てばえげつないとも思いつつ、全て見終わった後では鶴姫たちの判断も、単純には否定しきれないし無理もないことでもあるよな、と思ってしまうんだけど。
ただドモンは恐らく、約990年後の未来からゴーカイジャーの辿った運命を俯瞰して気の毒に思い、こっそりとチャンスを与えたってことなんだろうな。そんでその結果、知らぬ間に自分の息子の未来も救うことになったと。
なお、香村さんは彼女の登場を知らなかったそうで(笑)、台本を書く段階では誰が出演出来るかわかっておらず、決定稿の入稿段階で宇都宮Pが付け加えたとのこと。ここでも年間通してぎりぎりのスケジュールだったんだなというのが垣間見える。
海賊戦隊ゴーカイジャー: 44話感想というか覚え書き
※海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。
■賞金首が増えた
前回のダマラス戦を経てハカセの賞金が上がり、ナビィも指名手配の仲間入り。
それだけでなく、バスコとサリーも私掠船のポジションを剥奪されてただの海賊に戻り、賞金首となった。この宇宙でのザンギャック帝国の影響力を考えると、ホント思い切ったなと思う。
39話で「余計なことしてくれちゃって」と困惑したのは、次期皇帝継承者を倒した海賊をザンギャック帝国が本腰入れて滅ぼそうとしたら、バスコは帝国に逆らい追われる身となってでも海賊たちを助けなければならなくなるから。あの時のバスコはいずれ自分の手配書がマベたちの横に並ぶ未来を予感していたのかもしれないな、と改めて。
■大所帯は動きが鈍い
皇帝はダマラスをも倒した海賊たちの実力を認め、海賊程度と侮って率いてきた軍の編成を本格的に見直し強力なものに立て直すことを決めた。
ただしそれには時間がかかる。殿下戦死の報を受けた時も、帝国の動きは決して迅速ではなかった。
大組織なので何か事を起こすのには時間がかかるという不自由さと、皇帝の慎重で用意周到な性格が垣間見えて、その間海賊が邪魔されずに大いなる力絡みで動けたことに一定の説得力を持てたと思う。
今回ザツリグと並ぶもう一人の幹部のダイランドーが、行動隊長ビバブーと一緒に初めて地球に降り立ち海賊と対戦してそれ相応の実力も見せる。
けれどそれは本格的な掃討作戦ではなく単なる地球での息抜きで悪さをしているという名目。なので、番組としても比較的緩めな展開の息抜き回として成立している。
■踊るサンタ
地球人の行事に疎い海賊たちに、鎧はガレオンにツリーを持ちこむ等、クリスマスという1年で一番ハッピーな日のことを教えて体験させる気満々。ルカに街で熱心に解説していると、そこに大きなパンダを連れて子供にプレゼントをあげて踊るサンタクロース。
ルカはプレゼントを貰えると喜んでねだる。けど「君は良い子じゃないから駄目(意訳)」とあしらわれてぶんむくれの顔が可愛い。
サンタさんがルカの何を見て「良い子じゃない」と判断したかは不明だけど、「もう大人の癖に子供向けのプレゼントねだる奴が良い子なわけない」なのか(笑)、それとも後々その正体を知れば、海賊だとわかった上で信用出来ないという認識でやんわり拒絶したのか。
■被害者への共感
ビバブーは行く先々で人間を面白半分に魔法の杖でフェルト人形に変えて歩き、広場で子供会のクリスマスツリーを飾っていた子供たちも襲われる。
居合わせたルカと鎧が直前に交流していた姉弟が逃げ遅れて弟が人形にされ、それを見てショックで立ち尽くす姉を庇った鎧も人形にされてしまう。
見た目は可愛らしい、それこそ直前に姉が作っていたクリスマスツリーに飾るためのフェルト人形にそっくり。
だけど、弟がそんな物に変えられてもう2度と戻らないかもと突きつけられる恐怖は、画面の向こうのフィクションという壁を取っ払って考えるとかなりのもの。姉が「私が弟を怒ってばかりだからバチが当たった」と自分を責めたくなるのもわかる。
香村さんの描く被害に会った一般人のリアクションは、私には共感しやすくてぐっとくることが多い。
■姉への感情移入
2話でマベは、レンジャーキーを盗んだ少年を敢えて変身させて戦わせ、自分の力の限界を思い知らせた。
今回はルカが、「弟を助けるために何も出来ず誰かに庇われるだけだったら後悔する」という姉の訴えに応えて変身装備を託し、自分は囮として人形にされるというかなり危険な作戦に出る。
そこまで踏み込んだ動機はたぶん、弟を失いかけているのに何も出来ないのは嫌だと言う姉への感情移入。香村さん自身が23話でルカに作った設定をここで生かしてきた。
ただ守られているのではない、戦う力があれば戦いたいし力がなくても出来ることをしたい、という強さを持つ地球の一般人と海賊との交流は、香村さんのフォローがかなり効いている部分かと思う。
■ゴーカイクリスマス
姉の頑張りで作戦は成功し、人形にされた人々、それから鎧もが元に戻る。
揃って変身すると、今回はルカリスペクトでオールイエローを披露。それから「クリスマスはサンタが踊る」というルカの間違った知識から、踊る戦隊バトルフィーバーJへのゴーカイチェンジ(笑)。
追加戦士がいないため余った鎧がひらめキングしてゴーカイレッドとグリーンのキーを借り、ゴーオンウィングスの要領で赤と緑のクリスマスカラーのレンジャーキー「ゴーカイクリスマス」を完成させて変身。
コントラスト最強の補色の組み合わせでもあり当時凄いインパクトで、ジョーの「お前は何でもありだな」というツッコミに心から同意していた(笑)。
そのちょっと目に痛い姿で「あーっははははー!」とハイテンションで笑い声を上げながら斬りかかる様が、何か狂気を感じさせて怖かったいたけど、あれはいったいなんだったんだろう(汗)。
おかげで、もしかしたら過去回がイマイチだったルカへの埋め合わせ的意味もあったかもしれないオールイエローの印象が吹っ飛んでる(笑)。
■オーバーキル
倒され巨大化した息抜き回のコミカル怪人ビバブーに対し、海賊たちはダマラスを倒した時と同じくこれまで集めた(商品化した)大いなる力を総動員して撃破。
オーバーキルにも程があるけど、放送日を見ると2011年12月25日とクリスマス当日。プレゼントをまだ用意していないお父さんお母さんはぜひこれからおもちゃ屋さんに行って、これらゴーカイジャーのロボを買ってね!!!というぎりぎり最後の力強いお願いだったんだな。
■地球人との交流総仕上げ
今回のエピソードはルカと鎧が子供会のクリスマスツリー飾り付けに加わったのがきっかけ。地球人でコミュ力お化けの鎧が媒介にはなったけど、ルカも姉の少女に自分から話しかけ、すっかり自然に地球の人々に溶け込んでいた。
一件落着した夜には他の海賊たちも子供たちと一緒にツリーを囲み、マベとジョーは点灯した美しさに並んでサムズアップなんかしちゃってる。更にルカはマジマザーとなり本物の雪を振らせてあげる大サービスで、子供たちは「ホワイトクリスマスだ!」と大喜び。
地球に来たばかりの頃の彼らからはちょっと考えられない馴染み方だなとしみじみ。
振り返って見れば今回は、地球を守ることになるであろう最終決戦を前に、地球人との距離感がどこまで縮んだか、本当に守りたいと思うほど縮んだのかを見せる実質最後の機会になった。そのマイルストーンの役割をきっちり果たしたと思う。
■最短出演レジェンド?
昼間はプレゼントを渡さなかったパンダ連れの踊るサンタさんは、ルカの一連の活躍を見守っていたようで「良い子にはクリスマスプレゼントをあげなきゃね」と、バトルフィーバーJの大いなる力を一方的に宝箱のレンジャーキーに転送する。
サンタさんが付け髭を外すと、バトルケニアの曙四郎。その顔にバトルケニアのマスクが重なって、彼の登場はこれだけ。ここまで恐らくレジェンドとしての顔出し出演時間は最短で、物語にも殆ど関わっていない。
演じる大葉健二さんは、劇場版199ヒーローにはデンジブルーの青梅大五郎役で登場。更には翌年公開の劇場版ゴーカイジャーVSギャバンでもう一人の主人公ギャバン一条寺烈を演じている。
44話の撮影はギャバンを演じた後だったとのことで、個人的には、199ヒーローで和田さんや菊池さんと共にもっとアクションを見せて貰う予定が変更になった埋め合わせに、当初は和田さん同様、大葉さんにもテレビ本編のバトルフィーバー回で大暴れして貰おうとオファーしていたけれど、vsギャバンの企画が決定して大幅に出番が抑えられたのでは?という説を推したい。
キラメイジャー43話感想: ガルザ生存祈願、全部ヨドンが悪かった(長め)
ヨドンへイムで処刑されてしまうオラディンを救い出さなければ、とココナッツベースの重苦しい空気を宝路からの連絡が破り、クランチュラを捕らえたのでヨドンへイムに案内させると言う。
捕らえたのは前回のミニコーナー。その前もガルザがクランチュラさんを救出していて、ここんとこミニコーナーの重要度が半端ないんだけど、いいのかそれで(笑)。
皆が危険を承知でヨドンへイムに乗り込む覚悟を決める中、独りだけロードガルザへのワクワクを抑えきれず口元が緩んでしまう充瑠。オラディンの危機を思えば不謹慎でヒーロー番組の主人公にしてはちょっと思い切った描き方だけど、これも他人の煌めきに正直に反応するが故、というのはスタッフさん貫いたなと思う。
皇帝を乗っ取ったガルザは、その意識の部屋で同居の形になったヨドンナを特に排除せず、「ヨドンへイムの頂点に立ったのに満足そうじゃない」という彼女に、「俺の覇道は3人を屈辱的に処刑してから始まる」と言う。オラディン、宝路、キラメイレッド。
まず1人目、オラディンの処刑のためにバスラ(邪面なし)を召喚。わざわざオラディンを元の姿に戻して食わせようとする。
だけど、せっかく屈辱的な方法で処刑出来る舞台を整えたのに、バスラの吸い込みに抵抗して必死に踏ん張るオラディンの、傍から見るとかなり滑稽な姿を長々見物し嘲笑って溜飲を下げるでもなく、食われる瞬間を見届けようともせず、腹の中で跡形もなく溶けた頃に戻ると言って地球に戻る。
長年積み重ねた憎しみをやっと晴らせるというのに、淡泊過ぎて拍子抜け。名目は残り2人の処刑を急ぎたいから。メタ的にはたぶんいろいろイベントをこなす作劇の都合もあるんだろう。
だけど、本当は兄のそんな最期を見たくなかったんじゃないの?と思わず勘繰りたくなった。
クランチュラさんは自分を捕らえた宝路の上からの要求は頑なに拒むけど、クリエーター同士心が通じ合った充瑠が手を取って頼むと、コロッと態度が代わってあっさりOKし、ヨドンへイムへのゲートを開ける(笑)。完全に自分の好き嫌いだけで動いていて、組織を背負うのをやめたら勝手気ままのタガが外れた感じ。
ガルザに備えて宝路だけ地球に残り、他は全員ヨドンへイムへ。戻ってこれない最悪の事態が頭をよぎるメンバーに、充瑠が「柿原さんと約束してるから、何があっても帰ってくるよ!」と遊園地のチケットを見せて、女の子のハートだけ撃ち抜けない為朝に「充瑠のくせに」とツッコませ和ませる。
ここに来てもまだそれが「モテ自慢」だとは気が付いていなさそうな充瑠を見ると、柿原さんにちょっと同情。そんで朝のヒーロー番組だから大丈夫だけど深夜のバトルアニメなら盛大な死亡フラグだとこっそり思った(汗)
ヨドンへイムに着くと、あまりの悪臭に5人が顔をしかめる。これがクランチュラさんたちの生きやすい環境なんだな。これが快適な体質なら地球の美しさにヘドが出るのも無理ないのか、と改めて。ちょっとガイアークの皆さんを思い出した。
次の瞬間地中からリガニーが現れて、その衝撃に態勢が乱れた隙に、クランチュラさんは逃げる。
皇帝に逆らって殺されかけて反旗を翻しても、だからって地球を守る正義側に付き合うところまでは改心しない。気に入った相手は気分で助けるけど、面倒は嫌いだから頼まれたことだけやったらさっさと逃げる。でも最後に「達者でな~!」を付け加えたのは、本心なのか皮肉なのか。
狡くて信用出来ないけど情もあって何か憎めない、蝙蝠的な立ち回り方に既視感があったけど、あれだ鬼太郎のねずみ男。そう思った時にクランチュラさんの最終的な生存確率が爆上げした気がした(笑)。
ガルザは地球で宝路にもう一度グラジュエルを申し込み、今度は皇帝のパワーで底上げされた強さで圧倒。
だけど口では<処刑>と言いながらもイマイチ詰めきれない。非戦闘要因のマブシーナが駆け付けて立ちはだかって何を言ったって一蹴してトドメを刺せばいいだけ。なのに、あなたには世界を変えることは出来ないと言われ
「あなたには?どういう意味だ?誰なら出来る?オラディンか?」と思わず聞き返し、マブシーナや宝路から口々に充瑠ならと言われて、心が乱れまくってしまう。
・・・ごめん、姫や宝路の充瑠評価としてはそうなんだろうな、と納得はするし、特に宝路はついさっき、敵であるクランチュラと通じ合って頼みを聞いて貰うという自分には出来なかったことをしたのを見たから尚更なんだけど、正直ちょっと持ち上げ過ぎでは?と戸惑ってしまった(笑)。
ガルザに「どいつもこいつもキラメイレッド!忌々しい」と苛立たせてトドメを刺さずに戻る展開のためもあるんだろうけど、個人的にはどんなに実際に凄くても主人公でも、1人の少年をあんまり手放しで褒めて救世主扱いするのは、ちょっと苦手かも。
一方ヨドンへイムでは、5人がバスラの吸い込みにランニングマシーン状態で抗ってるオラディンを発見し、充瑠が助けに飛び込む。で、一緒に走りながらガルザについて喋ってるんだけど、ちょっとここはハラハラ見守るところなのか笑っていいのかリアクションに困った(汗)。
オラディン王は、「閃きの力を持つ正しい英雄」になるはずだったガルザが「悪しき撹乱者」に堕ちてしまった今は、充瑠こそが選ばれし者、正しき閃きが生む力と強き友で悪を倒してくれ、みたいなことを言い出して、充瑠ってそこまで凄いの?とまたびっくり。
充瑠がそれを引き受けた直後に、2人がバスラの口に吸い込まれそうになる。それをガルザが術で充瑠だけ救い出し、オラディンはそのままバスラの口の中へ。
ガルザは充瑠をジョーキーで連れ去り、そこで1対1で処刑しようとする。ただ処刑したいだけなら、あのままオラディンと一緒に吸い込ませておけばいいだけなので、ここでも若干話の都合が見え隠れするけど、これもガルザの揺れなのか、それとも充瑠はオラディンより念入りに直々に殺したかったのか。
ガルザは狼モチーフの必殺技「ビーストウルフオメガディア」を繰り出し、それに触発された充瑠もひらめキングで不死鳥?モチーフの即席必殺技「ゴッドバードアルファズム」で対抗。両者は引き分け。
ガルザに刺激されて自分も凄くなれたと興奮する充瑠はとうとう「俺は、本当はお前を倒したくない!」と言い出し、敵だけど、その姿や必殺技は<神絵師だ>と、1話でマブシーナが自分にかけてくれた言葉を用いる。
自分を他人が、下手すると初めて認めてくれた大事な言葉だからこそ、ガルザにかけたかったのかな?と思う。
「だから本当は、本当は一緒に絵が描きたい!」剣を交えながら充瑠がそう叫んだ時に、2人は同時に前回充瑠が見た夢の世界=ガルザの記憶に入り込む。やっぱり充瑠は、オラディンだけでなくガルザの意識とも更新出来るということか。
前回、夢から醒める直前に現れた影はオラディン少年で、不穏に見えたのはミスリード。ガルザの絵に刺激されて自分も絵を書き始め、そのスケッチブックに表れたのは、さっき充瑠が繰り出した必殺技。
仲良く並んで絵を描く姿にガルザは幼い頃は兄が好きだったことを思い出す。
兄も自分を認めてくれていたのになぜ憎むようになったのか?と混乱するガルザに、充瑠は、今からでもやり直しが聞くと、4つ揃えば何でも願いが叶うカナエマストーンの話を持ち出す。
すると、「良いことを聞いた」とガルザに斬られて消滅したはずの皇帝が復活。ガルザから玉座を取り返す。
てっきり皇帝はカナエマストーンの存在や仕組みのことを知って、地球を自分が長くいられる世界に作り替えるために全部揃える手始めにイリュージョン入手をヨドンナに命じたのかと思っていた。
けど、そうではなくたまたまイリュージョンの力のことだけを知ってたことになる。中途半端な知識だなと思うけど、悪の組織がカナエマストーンのうち邪な目的にしか使われなさそうな「魔性の石」の知識だけ持ってるというのは、あり得ないことではないのかも。
一方、食われて死んだかと思ったオラディンは高笑いと共にバスラの上顎を持ち上げて、生きてるぞアピール。でも直後にまた口がガチャンと閉じる(笑)。
どうやらこのバスラ関係はギャグと受け取るのが正しいみたいだけど、ガルザ肝いりの処刑方法の扱いがいいのかそれで(笑)。まあ後の展開を考えると、もしかしたらあまり今回のガルザに残虐で陰惨な印象を、見る側に持って欲しくなかったのかもと思ったり。
オラディン生存に勢いを取り戻した4人はアローで強化し、青緑
桃がバスラを引きつけ、100秒ぎりぎりまでエネルギーをチャージした為朝の矢がバスラに命中。たまらず開いた口から時雨が剣を伸ばしたキラメイフィッシングでオラディンを救出する。バスラ、ロボ戦の時みたいにオラディンごと爆発したらどうしようと思ったけど、しなくて良かった(笑)。
意識の部屋での主交代によりロードガルザは苦しみ出し、巨大な皇帝の姿に戻ると、ガルザを自分の体からも放り出す。
皇帝は「我が消したガルザの記憶を、おまえは甦らせてしまった」と真実を話し始める。オラディンとガルザの兄弟が将来クリスタリアの英雄になりうると脅威に感じた皇帝は、庭で1人絵を描いているガルザ少年に忍び寄り、愛する者、愛してくれる者を全て憎むよう洗脳してしまった。
クリスタリアの王宮って他所の星の皇帝が誰にも知られず庭に潜入出来るほどガバガバなの?っていう疑問は正直あるけど、まあオラディンの性格を考えると、その先代が治めていた頃のクリスタリアは、更に解放的で垣根の低い、無用心な国だったのかな?という気がしなくもない。家に鍵をかける必要のない平和で脅威のない世界、みたいな。
ヨドン皇帝に洗脳されてもその直後は目の色が変わるだけで体色は変わっていない。後々、心に憎しみが積もるたびに徐々に輝きと共に体色が褪せていったのか。
急に体色が一変すれば周囲も異変に気付き大騒ぎして原因を調べたかもだけど、これだと兄のオラディン少年にしたら、なんだか壁が出来た気がしておかしいと思いながら、理由が分からず向き合っても以前のようには返って来ずにどう接していいかわからなくなったかもなとは思う。回想やガルザの言葉からはガルザは表面上は大人しくオラディンに従っていたみたいだから。
そんで更にオラディンの、あの楽観的でマイペースで何でもありで結果がオールライトな性格が拍車をかけてどんどん修復不能なまま壁が厚くなり、なまじ表面上は上手く回っていたために、両者がぶつかり合って打開することも出来なかったのかな、と思うと悲しい。
それでも、例えば少なくともグラジュエルでの宝路殺害未遂の時は踏み込むべきだったと思うけど。
これまで、そうやってオラディンがガルザと向き合わなかったことが大きな原因と思わずにいられなくて、そこに果たして踏み込んでくれるのかどうか気になっていただけに、「悪いのは全部皇帝だった」とされてしまうと、若干拍子抜けしてしまったかな。
(ここだけの話、ネットの反応を見るにスタッフさんの想定以上にオラディンの対応が疑問視されてガルザに同情が集まったために、オラディンが悪者にならない方向に調整が入った可能性すら考えてしまう・汗)。
残酷な真実を突きつけられて、ガルザは自分の生きてきた意味は何1つなかったのか?と愕然とする。自分の意思で力を求めてヨドン軍に加わり、自分の意思で身に付けたと思っていた三日月の兜を叩きつけるのが悲しいよ。
宝路がクリスタリアに行った30年間、オラディンの容姿がほぼ変わらないのを見ても、クリスタリア人たちは地球人より長命に見える。少年時代からそんなにも(少なくとも40年かそれよりもっと)長い間、自分自身の意思と人生を奪われてしまい、自分の力で守りたかった自分の国を滅ぼしてしまったんだから、哀れすぎる。
充瑠は「違うよ!悪いのは全部ヨドンだったんだ!ガルザは、俺たちと一緒に、新しい人生を生み出せばいい!」と励ます。
間違っても傷付いても磨き上げればまた輝けるのがキラメイジャースピリッツだから。
用済みだからもう消えろという皇帝に、ガルザは「俺が生きた意味は、今、ここで生み出す!」と向き直り、立ち向かう。これが本来の、英雄になるべきガルザの強い精神性だったのかな、と思う間もなく、その突撃は弾き返されて、逆に皇帝のビームがガルザの体を貫き、大爆発。
皇帝は続いて充瑠も攻撃し、爆発で充瑠は崖の下の暗闇に吸い込まれ、救出に来た不死鳥オラディンも回収に間に合わず、攻撃の激しさに他4人と共にやむなく撤収。
あちこちに炎が残る崖近くの地面に残された遊園地のチケットのカットで、続く。
今回、ロードガルザが屈辱的に処刑すると言いながらオラディンの最期を見届けようとしなかったり宝路にトドメを刺さなかったり、というガルザの揺れが目立った。それはメタ的都合もあるんだろう。
けど、個人的には、皇帝を叩き切り乗っ取ったことで強大なパワーを得た代わりに若干皇帝の洗脳が弱まって、これまで偽りの憎しみに抑え込まれていた本来のガルザの意識に引っ張られやすくなったりしたのかもな、と脳内変換した。
充瑠がこれまでガルザの何に対しても、例えばスモッグジョーキーに対しても刺激を受けたことはなかったのに、ロードガルザになって以降は何度もワクワクを抑えきれなくなっていたこも、そんな本来のガルザから発動される煌めきをキャッチした部分もあったのかもと。
ただし充瑠が事前情報なくオラディン少年の必殺技を再現したのは、遡れば通常放映版ではカットされたオラディンの予言どおりの魔進を作成したことと重なるけど、なぜそうなるのか、これ以上の説明があるかどうかは気になる。
充瑠はヨドンへイムの崖下に消えたけれど、きっとクランチュラさんに救われると信じているから、出来ればそこまで説明がついて欲しいけれど。
そんでガルザさん・・・。4話でマブシーナを騙す為についた2つの嘘を思い出してしまう。
・オラディン王は生きている
・ヨドン皇帝に操られ国を滅ぼしてしまった
前者は悪意はなくても兄に、後者は皇帝の悪意にあまりにも長期間、騙したつもりがどっちも騙され実は真実だったのは皮肉だな。
前者は結果的に良かったけど、後者はこのままではあんまりなのでガルザさんに救いが欲しい(涙)。
もっとも、体が崩壊して死ぬ前に魂を他所に飛ばす秘術は持っていても元の姿に戻す方法はないと思っていたオラディンを、元の姿に戻す術まで体得していたガルザが、その前段の自分の魂を他所に転送する能力を体得してないなんて、そんな馬鹿な話はないよね?と思う。
きっと最終回に、颯爽とどっかの石に入って戻ってくるよね?
キラメイジャーはそういう、改心した者には優しい世界だよね?と。
海賊戦隊ゴーカイジャー: 43話感想というか覚え書き
※海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。
■嘘だった
たった独りガレオンに戻って膝を抱えているハカセがキツい。
やっぱり伝説の勇者というのは嘘で、女性誌も手の込んだ捏造、星形の痣もペイントだった。
前回の冒頭で、ジョールカに愉快な戦い方だと半ば馬鹿にされ、ゴーミンにも笑われたりしてそれなりにストレスがたまっての出来心だったかもしれない。でもその結果が、大事な仲間を面白半分に騙したままの死に別れになってしまった。
私は正直なところ出来心や成り行きで嘘をついてしまって、という展開がちょっと苦手。嘘を根拠にチヤホヤされて舞い上がったり後ろめたそうにしてたりとか見ると、いたたまれなくなってくるんでこの場面は結構キツかった。
■出来ることをやってくれ
皇帝の意向でマベは地球で公開処刑されることになる。
それを知らされても、嘘をついた自己嫌悪もあって自分なんか何も出来ないと後ろ向きのハカセ。成長したようでもいざとなると結局これかよ、と見ている分にはうっかり思いかけちゃうけど、もし自分が同じ立場ならと思うとあまり偉そうなことは言えないな。だって相手はダマラスでこっちは独りだよ?って(汗)。
格好いいアウトローの海賊や覚悟完了したお姫様や超ポジティブ戦隊オタクに囲まれながら、時にはそういうみっともないくらいの等身大感を突きつけてくるのがハカセというキャラだな、と改めて。
ナビィが平手(羽)打ちして渇を入れ、ハカセは加入直後にマベに「出来ることだけやってくれ」と言われたこと、戦闘中にルカにも同様のことを言われ、初めて2丁拳銃でゴーミンを倒した時のことを思い出す。
ジョーがマベの剣で、ルカもハカセ加入によってその剣を借りて、とスタイルは違えど慣れた感じで2刀流をこなしていたけど、2丁拳銃はハカセが初めて。
これで海賊の武器交換により近接戦だけでなく同時に遠距離戦もより有効にこなせるようになった。マベに褒められてその成功体験の喜びがハカセを海賊として前へ踏み出させる。
自分に出来ることをやる。その正解を一足飛びに掴むのではなく弱気に足をとられながらも
「僕やるよ。みんなについちゃった嘘、真実に変えてみせる。この僕たちの旅は、絶対に終わらせない!」
と辿り着く姿に、ホント、丁寧に成長を描いて貰ってるな、となぜか羨ましくなった(汗)。
■ドラゴンズ愛炸裂
「出来ることだけやってくれ」「皆が自分の出来ることをやって補え合えばいい」がゴーカイジャーのスタンスにも係る今回のキーワード。
荒川さんによると中日の落合前監督就任1年目の言葉から来ているらしい(笑)。
ゴーカイジャーの記事は冒頭にも書いたように公式完全読本のネタを所々で拝借しているけど、荒川さんのインタビューのページにはあちこちでドラゴンズ成分が炸裂していて、最後の注釈欄には引用された中日関連のエピソード解説だけがずらり。初めて読んだ時は「これは<Number>の記事か?」と錯覚しそうになった。どんだけファンなんだよ、知ってたけど(笑)。
■正面突破
まさに処刑寸前にハカセが正面から乗り込んで来て、彼を見くびりきってたダマラスも、バスコも、ついさっき「俺の仲間にはまだ、1人凄え奴が残ってる」と言ったマベ自身もびっくり。
マベと色違いの緑の船長コートは速攻で仕立てたなんて訳はないだろうけど(笑)、この場のハカセに相応しいからOK。
「せっかく見逃してやったものを。貴様ごときに何が出来る!」と嘲るダマラスに
「出来る事が出来るんだ!」と言い返すのは、今回のキーワードを支えにハカセがネガティブのどん底から這い上がって辿り着いた精一杯の開き直りと、それでも大言壮語しきれない気弱さ慎ましさが感じられて好き。
戦闘員相手に孤軍奮闘のハカセに苛立つダマラスがマベから離れて直々に仕留めに行った隙に、ナビィがマベを磔から解放という連携プレーが成功。相変わらず要所要所で役立つナビィ、まさにゴーカイジャー7人目の戦士だ。仕事が済んだら速攻で「バイバーイ」と帰るけど(笑)。
助けられ次の一手を尋ねるマベに「ない!」と力強く言い切り「僕は出来ることをやった!次はマーベラスの番だ」と笑顔でバトンを渡すハカセと、その心意気をニヤリと受け止めるマベが小気味良い。よく考えるとこの時点ではまだ物凄く絶望的な状況なんだけど。
■バスコの思惑
そこにたたみかけて死んだはずのジョーたち4人が参戦し、バスコに焼き殺されたと見せかけて実はサリーが助けていたことが明かされる。
愕然とするダマラスに考える暇も与えずバスコが背後から思い切り一突き、は当時鳥肌立った。
ジョーたちが本当に死んでいるとはさすがに思えなかったし、ナビィが鎖を壊すのを見て見ぬふりしたことからも海賊を殺す気がないのはわかったけど、ダマラス相手にここまでやるのかと。こんな大っぴらにザンギャック全体を敵に回してでも、海賊たちの力が必要だったのかと。
39話でバスコが「余計なことしてくれちゃって」と困惑していたのは、今まで私掠船として付き合ってきたザンギャックを本格的に敵に回してでも海賊を助けなければならない事態を覚悟しなければならなかったからだったんだな。
そんで同時に、これまでさんざん海賊と大いなる力を争って戦いながらも決して本腰入れて倒そうとはしなかったという、下手をするとご都合主義に見られがちな展開の説得力も爆上げしたのが上手いよ。
■見つけて欲しい力
前回軽く捻られた分をやり返すバスコの食えなさ、足元をすくわれそんな深手を追わされながらもバスコを吹っ飛ばすダマラスの強さと、見応えある攻防。バスコは自分を過信して見下した相手に足元をすくわれたダマラスを嘲り、マベには見つけて欲しい大いなる力があるからと変身装備を返す。
ちなみにバスコは処刑直前のマベに、サンバルカンとファイブマンの大いなる力を奪ったと見せびらかしていた。
バスコが奪った大いなる力は計5つ。海賊が貰ったのはもはや27。残りは2つで、バトルフィーバーJとカクレンジャー。そのどちらかが、海賊に見つけて欲しい、逆に言うとバスコが自力では探せないと匙を投げた戦隊ってことになる。
■ダマラス撃破
バスコが撤収し、怒りに燃えるダマラスに対し今度は海賊たちも善戦。一方のダマラスも1度に4人吹き飛ばすなどやっぱり強敵。
バスコの一突きのダメージが、前回は完敗した相手に海賊が食い下がれている説得力になり、同時にそれでも充分に戦えていることでダマラスの強さの格を保っている。
ゴーカイガレオンバスターも1度では効かず、2度目でようやく撃破。これだけ強かったダマラスが実質2話分だけの戦闘で敗れてしまったのは残念だけど、宇宙最強の軍師という面目は保たれたと思う。
「ダマラス様、ご武運を」インサーンが最期の最期までダマラスを尊敬していてくれたのが嬉しい。
けど、倒されての巨大化という儀式が1年近く見てきた敵幹部に施されるのは寂しさもあるな。ゴーカイジャーの場合はダマラスが初めてだから尚更。
巨大戦ではダマラスもガトリング砲というこれまで使わなかった武器で攻める。巨大化専用なのかはわからないけど、巨大化しても等身大の時と同じ戦い方を繰り返すだけでなく、新たな武器や攻撃要素が加わるのは嬉しい。
だけど海賊たちは、
「大丈夫!宇宙で一番強くても、あいつには仲間がいない。だから僕たちが負ける筈がない!ね?」
というハカセの言葉を反撃の狼煙に、クリスマス決戦回に相応しくこれまで集めた大いなる力を全放出し、最後はやっぱりカンゼンゴーカイオーで力の差をサイズ感で否応なく突き付けて、フルバーストで撃破。
・・・あいつには仲間がいない、と言われちゃうのはちょっとハカセに文句を言いたい(笑)。
自分に出来ることをやって補い合うゴーカイジャーの仲間の絆を最強でも独りのダマラスと対比させる狙いはわかるしきっとそれは正解なんだろう。確かに殿下には嫌われ外から来た同僚からは理不尽にキツく当たられてばかりだった。
けど、インサーンは少なくとも最期まで敬愛してくれてたし、無骨で上に媚びない代わりにたぶん部下からは慕われるタイプだったと思うよ、と思ってしまう私はやっぱりダマラス贔屓(笑)。
■過去編のトリ
ハカセの過去は当初3話のマジレンジャー回で語られる予定が、過去エピソード無しでも狙った臆病+αイメージはもうついたので後回しになり、演じる清水さんから催促されながらもここまで引っ張る結果になったとのこと。
でもそのお陰で、クリスマス決戦という大舞台で宇宙最弱の勇者が宇宙最強の軍師の足下を救うという劇的な展開になり、美味しかったな。オールグリーン披露の大サービスも、仲間たちからハカセへのリスペクトが感じられて。
これでメンバーが海賊になった経緯を描く過去回はコンプリート。男子組は全員節目やターニングポイントでの前後編という豪華さで、アイムも1話だけど全メンバーとペアでのゴーカイチェンジという大サービス。
そんな中で霧彦さんというゲストを迎えたものの半ば偽物回に引っ張られた感もあるルカの過去回は若干割を食ったかなとは思う。
考えてみると、守銭奴の女盗賊という戦隊としては攻めたキャラを「本当は良い子なんだよ」と早めに見せるために、初メインの6話である程度夢の予測がつく過去をチラ見せしてしまったので、改めて過去回をがっつり作るのが難しくなった部分もあるのかなと。
でも何度も言うけど、ルカはその代わりにサブメインとか集団行動の際の言動が一際スパイスが効いていて格好いいところが気に入っているので、トータルでは結果がオールライト。
あと、忘れていたけど、ゴーカイジャー放送開始から10周年おめでとう!
海賊戦隊ゴーカイジャー: 42話感想というか覚え書き
※海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。
■ダマラス
前後編の前編名物、冒頭での巨大戦ノルマは鎧がドゴーミンたちを撃破。他の海賊たちも対ゴーミンの等身大戦に勝利する。
彼らの余裕に苛立ち自ら出撃を申し出ようとするダイランドーをインサーンが遮り、ダマラスに雪辱の機会をと進言。前回に引き続き彼女がダマラスを庇うのがホッとする。
牢内に静かに座していたダマラスは釈放を告げられると、手錠をあっさり引きちぎり、鉄格子を吹き飛ばす。
その気になればこんなものはいつでも壊せたが、という形でその実力と皇帝への忠誠心を同時に見せつけるのが憎い。
■伝説の勇者
アイムが読んでる宇宙女性誌の表紙が無駄にクオリティが高い。一番上にジェラシットの温泉旅館経営の記事の見出しがあって、すっかり成功した実業者扱い(笑)。
その雑誌に、ハカセにそっくりで名前も同じ消息不明の伝説の勇者の記事が掲載されていた。
ここでザンギャックに故郷の星が滅ぼされて亡命したというハカセの過去が明かされる。
記事はそれと矛盾するけれど、ハカセは実は昔の記憶を失なっているのを隠していたので、記事内容は自分のことかもと匂わす。もう記事もハカセの口ぶりも腕の星型の痣も思いっきり怪しげ(笑)。
そんな話を素直に信じて大興奮の鎧アイムの良い子組、うさん臭げに眉を顰めるマベジョールカのアウトロー組の温度差が相変わらず風邪をひきそう。そのアウトロー組でも、途中からすっかり興味をなくしたマベジョーと、「過去を思い出すかもしれないから高い店で食事させろ(意訳)」というハカセの遠回しのおねだりに付き合うルカの差は、なんだかんだ彼女もハカセのことは気になっているってことなんだろうか?
■色仕掛け
そのルカが語るハカセの合流秘話。とある星でガレオンが故障し、ルカが怖がられないよう巻き髪に清楚なワンピースとカーディガンというルカ史上もっともスイートで可愛い恰好でハカセを訪ね、ぶりっ子全開でガレオンの修理を依頼。
ルカはさばさばした姉御系で普段の服装もカジュアルでボーイッシュだけど、必要ならこうやって女を武器にするのに躊躇いがない。フリルやレースでふわふわなお姫様ファッションのアイムの方が、女を理由に荷物持ってもらったりするのを嫌がり必要なら猿の顔マネも辞さないのとは対照的なのが面白い。
ハカセは見るからに鼻の下伸ばして引き受けるも、部屋に貼ってあった手配書の宇宙海賊だと気付き、その場は慌てて逃げた。でも結局自分の方から船にやってくる。
荒川さん曰く「あまりに可愛いかったので、たぶんルカに一目惚れしてるんですよ」だそうで。わざわざ手配書を部屋に貼っていたのも、わりと好みのタイプだからだったりして(笑)。
なお彼は一緒にいると自分が惨めになるからアイムにはいかないとか。アイムの、今はできなくてもそれで後ろ向きにならずに前進を続ける向上心の強さや覚悟完了っぷりをここまで見てくると、かなり納得する(汗)。
■「なりたい」より「したい」
もちろん、自分から来たのはルカ目当てだけじゃなくて(笑)、海賊は怖いけど一度引き受けた仕事はやり遂げる、という責任感からってのもちゃんとある。そんでついでに生活能力ゼロの赤青黄の汚部屋と化していたガレオンを見かねてテキパキと掃除し、きちんとした食事まで提供。もちろんガレオンの修理もあっという間。
これですっかり気に入られてマベが半ば強引にスカウトするんだけど、ハカセが海賊になりたい理由よりマベ達がハカセを海賊にしたい理由の方が物凄く切実に伝わってきた(笑)。
マベ、赤き海賊団で一番下っ端の時はせっせと床磨きしていたのに、船長になったらこれかよと(笑)。まあ、自分もやらない代わりにジョールカにもやれと言わず、部屋が汚れていってもあまり気にもしなかったんだろうな。
いつも遠くの夢を見ている分だけ、足元の細々した日常生活の充実には興味や意識が向かないタイプかも。
■バスコより強い
31話でマベたちをあれだけ圧倒していたバスコが、ダマラスにはサリーともどもあっさり捻られている衝撃(汗)。こんなのに本格的に出て来られたら勝てる訳ないじゃんと、この時点でもう海賊詰んでる感が凄かった。
バスコはダマラスに情報を得たりゴーミンを借りたりしてるけど、なんか責められそうなヤバイ雰囲気を感じたら迷わず切りかかる程度に緊張感ある関係性なんだな。15話でもアッカンベーしていたから好意は持っていないのはわかるけど、やっぱり自分以外は誰も信じず隙あらばザンギャック帝国の重臣にも牙を向く一匹狼なんだな。そんでかなわないとわかったら屈辱を殺してあっさり矛を収め従うのも、こうやってしたたかに宇宙の大海原を生き抜いてるんだな、と改めて。
なぜ海賊にトドメを刺さなかったのかと苛立ちをぶつけるダマラスに、バスコは事情があることを匂わせるけれど、この時はそれがどんなに切実なものなのか想像できなかったな。
■降臨
食事を終えた4人の前にダマラスがただならぬ威圧感を纏って現れ、その一撃でビルが粉々に。それを見て、一番ヒーロー気質の強い鎧ですらとりあえず逃げるというのが、これまでとは異次元のやばさを感じさせる。駆け付けたマベとジョーの周りに4人が逃げ込むのが、親鳥の羽の下に逃げ込む雛鳥みたい。
相手がダマラスだと認めたジョーが「絶対に油断するな。これまでの奴とは根本的に違う」って緊張感を高めるのが、ダマラスを思い切り格上げしていて好き。ジョーの元ザンギャック設定は本当に良く機能しているな。
■前門の狼、後門の虎
ダマラスの強さが半端なくて、海賊たちは歯が立たない。バスコの時は「速い!」って感じだったけど、ダマラスの場合は「重い!そんで強い!」って感じの重厚感が痺れる。
いったん退いて体制を立て直そうとしたら、背後に立ちふさがったのはダマラスに従わされたバスコ。まさに前門の狼、後門の虎状態。どっちか一人だけでも手に余るのに、こんな絶望的な挟み撃ちは他の戦隊でもあまり記憶がない(汗)。
マベとハカセはダマラス、ジョー以下4人はバスコ&サリーに圧倒され、ジョーたちは炎の中に消え、マベは大ダメージを喰らって意識を失ってしまう。
■見逃されるハカセ
恐怖に足がすくんで動かないとか、ハカセはここでも等身大。何も出来ない軟弱者と見て取ったダマラスはそんな彼を放置しマベだけを回収して引き上げる。
思えば8話の時から「こいつはまあいいだろう」と一人だけ手配書を投げ捨てられていた。今回も他のメンバーの手配書を憎しみを込めてめくりながらも、ハカセだけは眼中になかった。そしてまた1人だけ見逃され、取り残されたカットで続く。
ダマラスがハカセを見下す描写の積み重ねに、さすがにこのままじゃ終わらないよね、きっと次回でハカセが奮起するんだよね、という確信はありつつも、ようやくこれまでの鬱憤を晴らすように思い切り強くて格好良く描かれたダマラスが次回もう弱虫ハカセに足をすくわれて終わってしまうのか、と思うと残念でもあって、複雑だった。
■貧乏くじキャラ
ゴーカイジャーがレジェンド重視に舵を切り、彼らの描写と大いなる力を狙うバスコに尺が割かれた結果、どうしてもザンギャックにしわ寄せが行った部分はあると思うけど、その中でも一番割を食ったのがダマラスで間違いないと思う。
なんせ42話にして初めての地球。海賊たちとも初顔合わせ。
優先順位的には仕方ないと納得はしている。また、強すぎてハンディでもなければ作劇的に安易に戦線に出せなかったかもだし、そもそも殿下がダマラスを抑えつけていたことこそが海賊の連戦連勝の大きな要因、という構造でもある。
だけど、無骨だけど有能で本当は忠誠心も強いのに、とその不遇に同情もあって、正直もう1回くらい地上で大暴れするのを見たかった気持ちもあるかなと。
その分、ここぞとばかりに強さ格好良さと周囲の一目置きっぷりをこの回に詰め込んで来た感じがした。