仮面ライダーゼロワン9話感想: 競合のない必需品に支配された世界の怖さとか唯阿さんの揺らぎとか
唯阿さんは、2話で不破を蹴り飛ばしてピンチを救ったり女子高生を守ったりと、これまでも最低限のヒーロー性は描かれていたけど、一方で正体不明の男とつるんで暗躍したりとかなり怪しげな動きもしていた。
だから、今回みたいに不破さんを助けたくて取り乱したり、病院の患者さんを助けるために必死でヒューマギアの再起動を要求したりするのを見るとホッとして好感度上がる。
3話でお寿司頬張って美味しさを全身で表したりもしていたから、根はそういう素直で感情豊かな等身大の女の子だったりして。けど、あんな殺伐とした職場なもんで一生懸命肩肘張ってる所もあったりするのかな?強面で全然言うことを聞かない部下なんかもいるし。不破さんとか不破さんとか。
たび重なるヒューマギアの暴走に、やっとメディアや世間が飛電の製造者責任にスポットを当てた。一安心。
と思ったら、それへの対策として副社長が命じたのは、衛星ゼアからの指令で病院のヒューマギアを一斉に強制停止(汗)。看護師も医師も治療途中で止まっちゃったりしてこれはこれで患者達の命が大ピンチ。
マギア化して暴れるリスクも分かるけど、ろくな通告もなくいきなりって普通の民間企業じゃ考えられない暴挙でビビった。
でも、考えてみると飛電インテリジェンスは普通の会社じゃないんだよな。
もちろん問い合わせやクレームは殺到して株価は暴落。
だけど問題があるからって乗り換えられる競合商品はないし、不安があっても使わなければ仕事にならない現場が既にたくさんある。
そんな競合相手のいない状況だから、面倒臭くコストもかかる改善や安全対策が一向に進まないんだとしたら、案外リアルな世界かもしれない。
少なくとも私は、原発事故後の、やっぱりライバルのいなかったあの会社のあれこれを思い出すと荒唐無稽なフィクションだとは笑えないな。
副社長とか長くいる幹部も社員も、そんな状態にどうしてもあぐらをかいてしまっているって見方も出来てしまうかも。
更にもっとエグい想像しちゃうとあの世界ではもしかしたら、仮に病院で死者が出たとして世間から批判され訴えられたとしても、「想定外」の連発で請求棄却なんじゃないだろうか?とも思えてきてしまう。デイブレイクほどの大事件の隠蔽が可能な大企業なら、政府にも影響力があるかもだし。
そんで下手すれば裁判所や検察にもヒューマギアが働いてるかもしれないんだよね。少なくともOPには警察官のヒューマギアがいる。
そう考えるとあの世界は、平和的でマイルドに描かれてはいるけれど、実は飛電インテリジェンスに半ば征服されてるようなものでは?って思ってしまった。もちろん或人にはその自覚はないけど。
競合のない一社独占の必需品に支配された世界って、何か問題が起きた時、とっても怖い。
そんな飛電帝国の牙城に、唯阿が接触していた正体不明男が率いる「我が社」が、滅亡迅雷の来襲につけ込んで切り崩しを図ろうとしているんだとしたら、その狼煙があの動画流出だったのかも?
暗殺ちゃんは自分の意志で悪意を持ったというより、悪意を持った滅の意志に従うようにプログラミングされた個体だと思う。唯阿さんから動画を受け取った男もそれを知ってるはず。
だけど、飛電インテリジェンスの製造者責任が問われだしたこのタイミングで、「滅亡迅雷にハッキングされなくてもヒューマギアは危険」ていう印象を与えかねない形で揺さぶりをかけてきたのは悪意しか感じないもんな。飛電のピンチは「我が社」のチャンスとばかりに。
唯阿さんは上手く立ち回ってるつもりでまんまと利用されてしまっていたのかも。
自業自得なのかもだけど、イズとの距離が縮まりかけたと思った矢先に、動画を撮ってる場面を見せられ詰問されて「私じゃ、ない・・・」はちょっと可哀相だった。
動画を撮影したことじたいは敵の戦力分析という意味からも何にも悪い事じゃないんだけどね。こんな使われ方をするなんて想定外だったんだろな。つるんだ相手が悪かったって事にはなりそう。
ヒューマギアの善意について考え始めたり、「道具は使いよう」が持論だった人がギーガーの暴走に「道具に頼ろうと思った結果がこのザマだ」と自嘲したりもして、意識失ってた時間の方が長い不破さんよりむしろ、唯阿さんが揺さぶられる回でもあったって感じ。
今回、仮面ライダーが守ったわけではないんだけど、お見事先生が滅亡迅雷ネットに襲われて、でもマギア化も破壊も消滅もなく済んだのが嬉しい。
メインゲストヒューマギアでは初めての快挙だったりするかな?アンナさんはマギア化は食い止められたけど消滅はさせられちゃったし。
お見事先生とアンナさんのケースを考えると、ハッキングされた時、またはハッキングの効果が再び作用した時に、重要な任務プログラム遂行中だった時、その使命感の強さがハッキングに打ち勝つ事があるんだろうか?でもお見事先生はハッキングじたいは真白ちゃんなんかと同様に、怪我人を救助中だったんだっけ。
重要プログラム実行中だからか、自分の意志の善意で滅亡迅雷に打ち勝ったのか、そこにシンギュラリティが作用してたのか単なる個体差なのか、まだハッキリとは分からないのかな?
もっとも、お見事先生って名前からして飛電の医療ヒューマギア製作チームのプライドが結集した最高傑作な感じはするから他のヒューマギアよりハッキング耐性あっても不思議じゃない気もするけど。
そんなお見事先生に助けられて
「俺には2つの記憶が出来ちまった。ヒューマギアに襲われた記憶と、救われた記憶だ」
ってふっと笑う不破さん。
これまで4話で少年に言ったように前だけ見て突き進んでいたようでいて、実は襲撃されたあの日から、これだけヒューマギアの普及する世界で生きて来ながらこの12年間はずっと、ヒューマギアが憎いのと怖いのとで、彼の中の時間が止まっていたのかもしれないなと思った。こちらも少し考えが変わってきてる。
一方、前回悪意のヒューマギアを目の当たりにしてショックを受けた或人。一度は強制停止を受け入れたけど、唯阿さんの説得を受け、もう一度「我が社のヒューマギアを信じる」ことにする。
滅亡迅雷が自社製ではないこともあるし、とりあえず現状キープ止まりって感じなのかな。
本格的に揺さぶってくるのは年明けか年度明けくらいなんだろうか。
イズちゃんの
「私は或人社長を信じたい。それは善意でしょうか?悪意でしょうか?」
って静かな問いかけ、いかにも機械ヒロインが主人公と触れ合ううちに少しずつ何かが芽生え始めてるって感じで好き。
善意よりはもっと個人的というかエゴイスティックな、副社長秘書とにらめっこしたり、唯阿さんをちょっと怒り混じりに厳しく問い詰めた時のと根っこは同じものかもしれないな。
唯阿さんが来る直前に、映像を見ながらちょっと斜めに俯いた表情が、機械の無表情にも、知ってる人に裏切られて戸惑っているようにも、悲しく静かに受け止めようとしている感じにも見えて綺麗だなと思った。