ルパパト: 宵町透真について~閉じた世界の保護者~(長文1)
今回は透真について。咲也とかと同様、以前書いた事も含めて総括かな。かなり長くなってしまったので前後編で。
1年通して見て思ったのは、まず味方かそうでないかの区別の激しい人かな?コグレさんに通じるものを感じる。
味方や身内にはとことん情が厚く、そうでない人には距離を置きたがるし、わりとどう思われても構わないというか。
まず23歳でプロポーズってかなりの早婚だと思う。好きになったらとっとと自分だけのものにしたいタイプなのか。
それとも付き合った頃は包丁も持てなかった人が料理人になるまでの期間を考えると、高校、下手すると中学時代からの付き合いだったのかな?
その間も彩一筋だったと。
■未成年2人を保護する者
透真に聞いてみたいのが、
「一緒に集められた他2人がどっちもまだ高校生だったの見てどう思った?」
ってところ。唯一の成年で社会人、年の差も5~6歳ある。
私なら頼りなく不安と軽めの失望と苛立ちが来るかな。もっとも彩を奪われてから24時間も経ってない精神状態なのなら、一緒にやるのが誰だろうと関係ないかも。
物語が始まった頃には、魁利に対してはもう一目置いて、意見やと知恵を求めたりしていた。
余計なプライドに邪魔されず5歳も年下の未成年の頭脳と決断力を認めて、リーダーとして受け入れているのは地味に偉いと思っている。早々に認めざるを得ないエピソードがあったのかもだけど。
一方初美花には、察しの悪さや迂闊さに何度も溜息ついてたし、彼女のせいで敵に見つかった時なんて敵に囲まれた状態で拳骨ふりあげてた。
あの時点では彼女のことはまだ足手まといのガキだったんだろうし、透真にもカッとなると視野が狭くなる所はあったかも。3話でも危険を犯してジュレで警察の装備を盗もうとしてたし。
でも、7話、10話、13話での頑張り、16話での自分のピンチでの気遣い等を経て徐々に態度が変わり信頼も深めて、22話では攫われたら頭に血が上る大事な妹になっていた。
もっとも快盗稼業を離れれば、魁利の事も年下、未成年として自分が面倒みなくちゃって意識はあったと思う。
私、透真の何が凄いと思ったって、5話のラストでデストラに長時間ボコられて疲れているだろうに、傷の手当てが終わった途端に3人全員分のご飯作り出したこと。びびった(汗)。しかも人参の皮むく下拵えから。
私には無理(泣)。絶対外食に連れ出すかどっかでお弁当買って来て済ませる。
俺がいるからにはこいつらには絶対そんなものは食わさん的な意地なのか料理人として身についた習性なのか。
それまでどちらかというと毒舌や当たりがキツい印象が強かったけど、ここで「実は面倒見の良い奴?」とイメージが少し柔らかくなったのを覚えている。
15話でヒルトップに名前を言い当てられて困惑と警戒の未成年組を庇うように、血相変えて立ちはだかってたの見た時も、保護者としての牙を感じた。
中でも透真の保護者ポジションの色合いが濃くなったように感じたのは28話かな。
初美花を心配するパパを見て、また彩の父親に怒鳴られた過去も打ち明けて、初美花を仲間であると同時に彩と同様に心配する父親のいる、いつかは親元に帰さなければいけない娘でもあると思ったのかもと。
まあ魁利に対しては1年以上ジュレで働いていてロクにコーヒーも入れられないのを見て、
「俺がついていてやらねば」
と、ぷるぷる腕を震わせながら初美花とは全く違うベクトルで思ったのかもだけど。
■ジュレは理想的な城だった?
透真は彩を取り戻すために命をかけて快盗やっていて、シェフを務めるジュレはあくまで副業。
でも、他店の情報をガイドブックで勉強したり、魁利を味見役にして新しい味に挑戦したりする姿も画面の隅っこに見られたりするし、ジビエにも手を出したりしてた。
15話でヒルトップに料理を褒められれば思わず顔を綻ばせて嬉しいと言うし、19話で咲也が怪人に操られて上司にスープをぶっかけた時は怒って詰め寄ろうとするのを魁利に押しとどめられててたりも(笑)。
23話で料理教室の講師に扮した時は、「料理に真剣に向き合わずにはいられない、プロの料理人の顔だった」とノエルに看破されている。
そして37話で強制帰宅ビームを受けた時は、初美花と一緒にジュレに帰されたことにショックを受けていた。
ジュレは快盗達にとっては世間を欺く隠れ蓑ではあるんだけど、ルパン家という金に糸目をつけない後ろ盾付き。本業の快盗稼業に支障が出ない限りはかなり自由に腕をふるわせて貰えてる。
本質は今も勉強と挑戦を続ける料理人の透真にとっては、採算度外視でジビエにも挑戦出来るなど、実は滅多にないほど好条件な自己実現の場でもあるんだよね。スタッフは絆を深めてきた快盗仲間だし。
ジュレはいつしか、後は彩さえ戻ってくれば完璧な彼の城になってしまっていたのかも。そう突き付けられた。
一方、同じ立場の魁利は攻撃が効かず帰されなかった。そのことも二重にショックに拍車をかけたかもしれない。
■悩める父親みたいに
強制帰宅ビームがで魁利に効かなかった事で、自分に対するショックだけでなく、魁利への心配も抱くようになる。34話で一人だけ大事な人の幻を撃てたことに対する不安みたいなものも根底にあったかもしれない。
どう扱っていいのか、踏み込みたいけど踏み込めない的なもどかしさを抱える様子が何度も描かれた。
また39話では、「ノエルにザミーゴとの因縁を隠す」という方針を、咲也に相談した初美花に覆される。
3人の閉じた世界で自分を未成年2人の保護者と思い、ジュレを家と思ってしまったけど、初美花は外の世界に相談出来る相手を見つけ、魁利は独りだけで突っ走り始めてるようにも見えて、なんだか子供が自分から少しずつ離れていくような感覚に戸惑ってる父親のようにも見えた。24歳独身だけど。
透真の魁利への心配は、40話で形を変える。怪人の能力もあるとはいえ、自分への心配が止まらなくなってしまった透真達のことをノエルに諭された魁利が圭一郎と和解したからだ。
これによって、魁利の「帰る家がない」事に対する心配まで解消されたかは分からないし、個人的には、魁利の圭一郎へのわだかまりはもっと大きな本筋の展開に関わってくるかと楽しみにしていたので、ここは正直拍子抜けだったけれど。
↓に続きます。
ルパパト:宵町透真について~閉じた世界の保護者~(長文2)