キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

ルパパト: 早見初美花について~「やみ」と「陽」の光の間で揺れて成長する花~

今回は初美花。

このブログの最初の方で個人として取り上げたのでどうしようかと思ったけど、さすがにそこで書いたことだけだとあまりにも初美花の一部すぎるから、やっぱりこれまで書いたことも踏まえて総括する形で。

 

■嘘と本当の狭間で揺れて

快盗は透真以外は10代の未成年。ドラマの中ではその年代ならではの不安定さや揺らぎと成長を彼等に見せて貰った。

ただし、スタートから快盗としての覚悟が完了し、他の全てを投げ捨てていたことが後に判明する魁利に対し、初美花は戦いに腰の引けたところがあると同時に、一番普通さを持った女の子。

その分、嘘の上に積み上げた生活を続けることの正当性を突き付けられて揺れる役回りでもあったと思う。

4話では詩穂のこともあって失踪した人々を家族等が心配する気持ちを推し量って共感し、思わず警察に情報提供してしまった。

7話では魁利達を助けるために咲也を利用した罪悪感から、昼食を奢ると言っている。それを咲也が誤解して「めちゃくちゃいい子だあ!」とガチ恋に落ちるけど、利用したことを加味してもいい子だなと思う。

そもそも大事な親友が自分のせいで消えたからと高校中退して危険な快盗を2年も続けてる時点でめちゃくちゃいい子なんだけど。

22話で金魚鉢の中に囚われた時には一緒に捕まったパン屋の斉藤さんなど一般人に囲まれた中で、「自分が変身するしかないか」と1度はチェンジャーを手にしかけた。

咲也の突入があと数秒遅かったら変身していたかもだし、続くノエルの突入がもう少し遅くても咲也を手伝うために変身していた可能性がある。

周りにいる人達を案じたってのもありそう。敵対する国際警察の人間でもギャングラーに襲われてたら殺されてやしないか心配する優しさもあるから、周囲の人達の不安や怯え、助けを求める声を聞きながらいつまでも正体を隠し続けられたとは思えない。

 

■偽りの生活でも地に足付けて

ジュレの店員というのは世を忍ぶかりそめの姿。

本業の快盗稼業は危険と隣合わせだし、26話のオークションの時に垣間見えたのは金銭感覚の狂った非日常的な世界。

だけどジュレでの偽りの生活の中でも地に足をつけて真っ当な金銭感覚も保ち、ご近所さんとも円満にお付き合いして、だんだんとそこでの暮らしが好きになってしまう。

20話時点で既に、正体がバレたかと夜逃げの準備をした時には両手にいっぱいの荷物を提げていた。

住み込みを始めた時にはそんなにたくさん持ち込んだとは思えないから、暮らしていく中で一緒に持って逃げたい大事な物が増えていったたのかと思う。

 

37話で強制帰宅ビームを浴びたあと、透真はジュレに強制送還された自分たちとビームが効かなかった魁利の両方にショックを受けたけど、初美花はそのことに気付かなかった。気付かないほど当たり前になってしまっていたのかもしれない。

なお彼女には服飾方面に進む夢があり、快盗稼業のためにそれは保留しているけれど、無理やり自分に禁じてはいない。日常生活ではお洒落も楽しんでいる。

そこも快盗のために何もかも捨てて殺風景な部屋で暮らし、強制帰宅ビームも効かなかった魁利との違いだった。

 

■「陽」の光に照らされて

中でも初美花を決定的に揺らしたのは、やっぱり咲也だった。

出会いは最悪。制服を来た状態にも関わらず初美花の顔を見た途端、可愛いと速攻でナンパ。明らかに困惑した顔を見せても、咲也はあの笑顔で押しまくってくる。

やむなく利用したことはあっても、LINEが来ると「げ、咲也さんだ」と身震い。

それが15話で少し変わる。重傷の身で病院を抜け出し、颯太に圭一郎が約束通り遠足を守ったことを告げ、更にまたギャングラーと戦おうとしているのを知って、警察官としての姿勢に打たれたのか単純に重傷の身を案じたのか、その前に「さっさと盗ってさっさと倒そう」と焦って飛び出した。

22話では、咲也の忘れ物を嫌がらずに追いかけて届け、更に怪人に捕まった自分を助けるために必死な姿を見て、ついに「いい人」に昇格。ずっと見てきた視聴者の目には、「咲也よくぞここまで(涙)」だった。

もっとも咲也には「いい人」は振られるサインのトラウマワードだったけど(笑)。

 

その後、積み上がった好感度を一瞬でゼロクリアにするエピソードが27話とかスピンオフ「変合体」あたりにあったような気もするけど(汗)、咲也の好感度を決定的に高め安定にしたのが39話での「初美花ちゃん的にはどっちが大事?」というアドバイス

この時の咲也は本当に頼れる出来る奴だったけど、初美花は初めてここでルパンチーム以外の外部の人間に相談し、そのアドバイスを自分の判断で受け入れて動いたと思う。

その後は

41話ではもう透真が密かに危惧するほどに仲良くなり

45話では「咲也さんて本当に良い人だよね」

46話では晴着姿を見せたかった素振りを見せ

47話では食事の誘いにいそいそと、咲也の年齢に合わせたかのような大人っぽいワンピースを着ていく。

そして、国際警察は疑っているけど咲也は信じていると確信し、もう騙し続けているのが辛くなってしまった。

「やみ」の中にはいたけれど光との狭間に近い日常を一番生きてもいたから、自分も好意を持った咲也の「陽」に照らされて引っ張られてしまったかのよう。

 

そんな初美花の変化を危ぶんだこともあり、快盗達は正体がバレる前に大事な人達を取り戻してしまおうと、咲也と同じ現場ではなくザミーゴの方に向かう。これが裏目に出て、巡り巡って全世界中継での快盗の正体バレに繫がってしまったのが皮肉で悲しい。

ルパンイエローの姿で幾度となく「咲也さん」と呼びかける初美花の心情が生々しくリアルに思えて痛々しかった。

覚悟完了して仮面を自ら外したようでも、自分を大好きでいてくれて懐深い咲也なら、もしかしたら許してくれるのではないか、何か言葉をかけてくれるのではないかとどこかですがりたい気持ちが残っているようで。

でも決して顔をそちらに向けない、声もかけない咲也の反応を見て「アデュー、咲也さん」と完全に諦めてしまう流れが辛かった。

咲也は激しいショックを受けたものの決して嫌いになったわけではなく、彼女のこれまでの苦しみや恐怖を思いやっていて、50話では正体が分かった上で互いに心が通じ合えたけれど。

 

■助けられる側から助ける側へ

親友が自分を庇って消えた、というのが初美花のトラウマ。7話で魁利が初美花を庇って怪人に食われた時はその時のことがフラッシュバックして震えが止まらなくなったくらい。

詩穂には子供の頃にも聞こえよがしの陰口から助けられていた。

それを思い出し「私、助けられてばっか」と嘆く初美花は、コグレに励ましと救出のヒントを得て立ち上がり、咲也を利用しつつもたった一人の知恵と勇気で、怪人に食われた透真と魁利の救出に成功する。

工藤さんも「初美花が自分の足で立つ回」と語っていたけれど、それまでは専らフォローされる側だった初美花のターニングポイントとして鮮やかだった。

初美花はそこからどんどん成長を見せる。

10話での諦めない強い気持ち、13話で手錠に繋がれたつかさと協力してのコレクション奪取、16話で入れ替わってしまった透真への気遣い等。これらを積み重ねることで、最初は足手まといのガキ扱いしていた透真の見方も変えたことは前回書いた。

 

詩穂が凍らされる場面は48話でもう一度蘇る。ノエルの命を盾に仮面を外すようドグラニオに提案され、応じる決心をした時。

あれは、もうあの時の助けられるだけで詩穂を奪われた自分とは違い、庇ってくれた詩穂のようにリスクや代償があっても大事な仲間を助けられると、自分で自分を確認したんだろうか?

 

■応援せずにいられない

初美花には戦いの中での<助ける助けられる>だけでなく、日常生活の中でもお節介なところがあり、特に若い女性を過剰に励まし応援したい気持ちがあるのでは?と思っていて、このブログを始めたばかりの頃、

 

ルパパト17話: 荒川さんの初美花

https://kiuix.hatenablog.com/entry/2018/07/05/192247

 

の記事でも書いたことがある。

過去に詩穂に助けて貰った経験や、本当は詩穂を目一杯応援するつもりでしたことが逆に夢ごと彼女を消してしまった負い目から、年齢の近い若い女性が気落ちして俯いていたりすると、過剰に応援スイッチが入って相手との距離感とかお構いなしにのめりこんでしまい、無意識に自分を癒そうとしてるのかもと。

最初は特に17話で圭一郎の気持ちを考えない無神経さが気になったりしたけど、そんな風に考えると被害者の周囲にいる人の具体的な傷として生々しく感じられたりもした。

だから最終回で詩穂が漫画家として再起したのは初美花のためにも本当に良かったと思う。

 

■愛に囲まれた戦隊ヒロイン

「初めての美しい花」

授かった娘への喜びと愛情がダダ漏れな名前。

大量の御守を片手にジュレに乗り込むや魁利を悪い男友達と勘違いして掴みかかるパパと、親友を失った悲しみを理解して自分は倍の寂しさと心配を抱え込むことになっても娘の望む通りにさせてあげたママに慈しまれて育ち、身を呈して庇ってくれる親友といつも一緒で、咲也には目一杯愛され、快盗仲間にも妹か娘のように気遣われる。

レギュラーの中で最年少の、もとは普通の女の子ということもあって、このドラマで一番いろんな人からの愛や気遣いを受けて、それに応え返そうとすることが強さや成長に繫がっていった人だと思う。

これまでいくつか戦隊を見てきたけど、こんなにその周囲に愛を感じさせるメンバーは珍しいかもしれない。

それが役者さんの華やかさや愛らしさ、演技力もあってルパパト独特の温かく優しい雰囲気に一役買っているような気がする。

 

こういう子には、いずれ元の愛に溢れた世界に帰って欲しい。咲也との恋の続きも見たいし、もう一度服飾の夢にも向かう未来を感じたい。

何よりこの子にはいつかは「日常」をきちんと生きるのが相応しいと思う。

だから何度かめの願いだけどスピンオフでノエルの夢に決着をつけて欲しい。

透真の時も言ったけど、それが未来永劫叶わないような罪は何も犯していないはず。