キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

ゼンカイジャー40話感想: 過去が希望をくれて

※だいぶ周回遅れですが今年もよろしくお願いします。

 

突如現れたハカイジュウオーは、街を手当たり次第に破壊しまくる。無限あけおめ攻撃や獅子舞と虎の着ぐるみが相手だった前回のトンチキ戦からの続きとは思えない、これまで見なかったレベルの直接的な破壊描写。続けて見たら温度差で肺炎起こすレベル(汗)。

普段ゆるゆるなゼンカイジャーと言えども、さすがにクリスマス決戦は違うな、と否応なく実感した。

止めようとしたジュラガオーン、ブルマジーンは一撃で変身解除。

ハカイジュウオーはそのまま等身大のハカイザーの姿になってゼンカイジャーの前に立ちはだかり、街を滅茶苦茶にしたロボの正体が功だと突きつけられた介人たちは衝撃を受ける。

ハカイザーは黒いマントが追加になり、声のトーンも低く無感情。これまでが悪側にしては明るく陽気で軽やかな口調だったから、そのギャップも怖さを増幅していて、正直これはこれで結構恰好良い(笑)。

これまでのハカイザーは一般市民や非戦闘員には手を出さなかったけど、今は無差別に攻撃。咄嗟にフリントを庇うガオーンが素敵だ。

5人を叩きのめし、トドメを刺そうとしたハカイザーを、ゾックスがダイレンジャーのギアで「やまびこ道路工事」を繰り出し、騒音でダメージを与えている隙に撤退。ダイレンジャーを見ていないので凄く戸惑った(笑)。今回唯一と言っていい貴重なコミカルな場面かな。

 

トジテンドに戻ったイジルデは、ハカイザ―の微調整の後、世界の蹂躙とゼンカイジャーを殲滅すると誓う。

ハカイザ―登場後はロボに搭乗したまま状況を見ていたステイシーは、充電中のハカイザーを「お前、改造されて何ともないのか?」「僕とは違って、元は完全な人間だろう?」と気遣う。

でも洗脳が強化されたハカイザーは、「何を言っている。俺はイジルデ様に作られた兵器、ハカイザーだ。実験兵士は引っ込んでいろ」と言い捨てて去る。ステイシーとのこれまでの記憶も洗脳で失ってしまったみたい。

ステイシーが「どうしてこうなった。僕はこれを望んだのか?」と苛立ちを設備に打ち付けると、システムが作動しハカイジュウオーの設計図が表示された。

  

相変わらずイジルデ研究室のセキュリティはザル。これまでもステイシーに美都子を逃がされたりしているんだけど、それでも用心し対策を取ろうとはしない。物語の都合と言ってしまえばそれまでだけど、トジテンドという組織自体がゆるゆるなんで、まあありかなと思える。このあたり、下手にシリアスな作風やガチに厳しい敵組織設定よりは、ストーリーの融通が効くよな、と、いつもながら。

 

介人たちは被害を受けた街の人たちを救助。担架で運ばれる怪我人の傷が生々しくリアルで深刻さが強調されてる。

キカイタコ焼き屋に守れなかったことを詫びると、「ゼンカイジャーがいたからこの程度で済んでいるんだよ」と、優しい言葉。

置き菓子買って支援しているのに、なんで守ってくれないの?」とか泣きながら突っかかる人がいたらキツイなと思ってたから、ホッとした。ほんと、この世界の人たちの互いの思いやり描写が気持ち良い。

だけど介人はそれを聞いても辛い。これだけの被害を出したのが自分の父親だから。

カラフルを避難所として解放しているヤツデさんも、その気持ちは同じ。

自分の息子が街をこれだけ破壊したと聞かされ、そんなこととは知らない避難してきた人たちに感謝されてたら、心苦しいよな。

 

界賊船ではゾックスが「だから言ったんだ!」急がなきゃ間に合わなくるって!と苛立ちを露わにしてる。

言ったのはビックリバコワルド回のラストに、介人に強引なやり方を禁止され、渋々了承した時。

私、ゾックスの「間に合わなくなる」が、具体的に何を指すのが本当にはわかってなかったな。

彼は、ハカイザーがワルドを守るに留まらずいつか直接甚大な被害を出すこと、それが何よりも介人を苦しめることを恐れていたから、介人が嫌がるやり方を使ってでも早急に奪還しようとしたんだ。

以前、自分たちの偽物が強盗を働いていた時も、それがどんなに介人を苦しめるか憂慮し、強引に脱獄させてでも事態の収拾に動いたのを思い出した。

そんなゾックスに、介人から呼び出しがかかる。

 

介人、ヤツデ、セッちゃんは、功を取り戻すのは次の機会を最後にすると皆に告げる。

  

「次が……父ちゃん取り戻す最後のチャレンジ。全力全開の一回に賭ける」「もしそれで、駄目なら・・・ハカイジュウオーをどっか・・・宇宙の果てとか、世界の狭間とかに連れてけないかなって」

自分の手で始末を付ける=倒す=父を殺すとはどうしても言えなくて、でも他にそんなことが出来る奴と言えば・・・

  「それは俺に言ってんの?」と沈痛ながら落ち着いているゾックス。

介人からもヤツデからもそんな辛い仕事を頼まれて、たぶん言外にある最悪の願いまで読み取り

「・・・わかった。もしもの時は、あいつを、俺が」と承諾。

もしかしたら、強引な手は使うなと釘をさされて受け入れつつ、いざという時は介人ではなく自分が手を下すことを、心のどこかで覚悟済みだったのかもな、とちょっと思った。

ビックリバコワルド回は、ゾックスが強引な手を使い逆に裏をかかれて大ピンチになり助けられてと、どちらかというとゾックスの見せ方としてはマイナス寄りだったけど、こんな後から株を上げてきて狡いよ。

ゾックスがここまで切ない「後方彼氏」だなんて聞いてない。

 

でも

「もしもなんてあるかよ!介人、おまえがもしもの時なんか考えんな!つーか、おまえが諦めたって俺は諦めねぇぞ」

とジュランが口火を切って、ガオーン、マジーヌ、ブルーンが、3人で勝手に決めるな、介人の家族なら自分たちにも大事な家族、最後の1回とはそこで必ず取り戻すという意味だ、と次々にあくまで功を取り戻すことを主張。

「おい、忘れたか?お前には俺たちがついてんじゃねぇか。5人揃って、機界戦隊ゼンカイジャー、だろ?」

ジュランが締める。格好いいよジュラン。名乗りの決め台詞をここに持ってくるのが狡い。

被害に目を瞑りあくまで父を取り戻すか、平和のために諦めて父を倒すか、の二択じゃなくて、父を取り戻すことで被害も食い止めることを、あくまで選び通す。

香村さんはこの、「公と私」「身内の命と平和」や「仲間の命と自分の夢」とかの残酷な二択を突きつけられて、いやどっちも手放さないっていうヒーローのあり方を描くのが滅茶苦茶上手だけど、今回も良かったなあ。

身内の介人には「私」より「公」に寄せて「街の人の平和のため」父を諦めるという辛い覚悟をさせ、ゾックスも「介人のため」それを引き受け、ジュランたちは「介人のため」にそれを拒む。それぞれが自分ではない誰かのためにという姿勢なのも、いつもながら好感度コントロール力がお見事だと思う。

ジュランたちの後押しに介人はすっかりいつもの前向きさを取り戻し、一致団結して作戦会議に移行。

ゾックスはこういう時にはその輪の中に加わらず、「仲間に大切にされて笑顔の介人」をちょっと離れて見守るのが嬉しいんだな。ステイシー決戦に勝った時もそうだった。まさに「後方彼氏」の真骨頂。

そんで店を出た界賊一家に、ステイシーが「これを分析しろ」とデータチップを投げつける。悲しい覚悟が切ない。

 

次の日、出現したハカイジュウオーにはいきなりゼンリョクゼンカイオーで対峙。序盤から最強ロボをぶつけてくるんだ、と意外だったけど、まずマジーヌのミラクルパワーで市街地から山中に強引にテレポートし被害を防ぐ必要があったということで、作戦第一段階成功。

ハカイジュウオーの攻撃が激しくて第二段階に行けないと介人たちが焦っていると、界賊船からゾックスがハカイジュウオーにダイブ。ハカイジュウオーの頭部にハカイザーがいるので引っこ抜いてきてやると体内に潜り込む。

「とある筋からの情報だ」とゾックスはぼかしたけど、「ゾックス、ステイシー、ありがとう」と介人はすぐに察する。

まあ、そんなことできるのは他にいないから見当つくだろうと見越したにしても、なんでぼかしたのかな?と一瞬思った。けど、考えてみたら敵も見守っているだろう戦場で、大声でステイシーの裏切りをバラす訳にはいかないという配慮だったか。

ハカイザーは内部で大量のコードに埋もれるように繋がれていて、その前に立つゾックス。予告で見た時はトジテンドに潜り込んだかと早とちりして勝手に期待しちゃったけど、ハカイジュウオーの体内だった。

妨害のためにイジルデが送り込んだ兵士たちを一掃すると、ちょっとヒヤッとするくらい大ざっぱに周囲のコードを撃ち払って、言葉通りハカイザーを引っこ抜いたゾックスは、意識を失っているハカイザーを担いで脱出。

 

ハカイザ―を失ったハカイジュウオーは暴走。ここで介人は、ハカイザ―=父の元に自分が駆け付けるのではなく、ゾックスとともにゼンカイジュウオーとしてハカイジュウオーの撃破を選び、作戦第二段階としてハカイザ―の元にはジュランたち4人を行かせる。最初、父親の説得には息子が直接訴えかける展開を予想していたから意外だったけど、

「父ちゃんのやらかしの後始末」だという理由付けが上手い。まずは息子として父が街を破壊し人々を傷付けた落とし前をつけ、ヒーローとして平和を守るという責任を果たす。

そんで託されたジュランたちは、意識を取り戻したハカイザ―に、なんと功の生い立ちを写真パネル付きで紹介し、洗脳の奥に封じられた功の意識に働きかける。絵的にはちょっと間抜けだけど、ひとつひとつは他愛ないかもしれない思い出の場面を積み重ねて必死に呼びかける4人に、ぐっと来た。

「最後にかけるとしたら、ぶっちゃけ愛だろうが!」のジュランがホント恰好良すぎて狡い。この台詞だけでも、最初に介人でなく4人を行かせた展開がお見事すぎる。

 

仮面ライダー電王の「過去が希望をくれる」を思い出した。

あの物語の中では幾つもの意味を持った重要な言葉だけど、今回のゼンカイジャーでも、例えば介人を高い高いして落として怒られた黒歴史すら功を取り戻す為の希望になった。たぶんそれを教えるヤツデさんがひとつひとつ祈るように託した希望を、ジュラン達も祈るようにハカイザーにぶつけ続けてたんだろな。

 

それに功を意識が応えたのか、ハカイザ―は混乱して苦しみだす。焦ったイジルデはステイシーに妨害させようとするも連絡がつかないので、クダイターたちを派遣。これを界賊船が一掃し、更に変形して双子と合体するとなんだかとんでもない巨大なバズーカとなり、ゼンカイジュウオーがぶっ放してハカイジュウオー撃破。

界賊船は今回ツーカイオーとしての活躍はなくとも、このクリスマス決戦にこういう形でしっかりアピールしてきたんだな。

 

説得の方は「2021年、11月14日、成長した息子、介人と再会!」「そして今日、息子介人が、トジテンドから功を奪回!」と畳みかけたところに満を持して介人が降り立ち、ジュランたちからの魂のバトンを受け取る流れが美しくて鳥肌立った。

「父ちゃん見ろよ!これが父ちゃんの作った、ゼンカイザーだ!」

激しくぶつかり合った末に「受け取れ、父ちゃんの、全力ゼンカイ!ちょわあああ!」

ギアトリンガーもゼンリョクゼンカイキャノンも、もとは功たちが、自分たちの世界を守るために作ったもの。実際にこれを使って息子たちは平和を守ってきた。それを今、作った功自身に打ち込むことで、こちらの世界に取り戻す。功の「過去」が功自身を救う。

 

まともに食らったハカイザ―は充電切れで、装甲解除。功は功としての意識を取り戻した。

10年ぶりに間近に見る息子の姿に「でっかくなったなあ・・・」と感無量の功。

「・・・はたち・・・ううん、もう21だからね」取り戻したのが誕生日直後なのが、父不在の間の成長を余計に印象付けていて、香村さんはどこまで計算していたんだろうと憎らしい。

 

遠い崖の上から静かに見届けたステイシーは、黙って立ち去る。ステイシー、界賊一家、キカイノイドたち、そんで介人全員の連携プレーが結実して、悲願の功奪還成功。誰が欠けても叶わなかった激熱パズルの組み合わせがホント見応えあった。

 

ステイシーが「仲間」を失ったのは、介人がハカイザーを取り戻した瞬間でもゾックスにデータを渡した瞬間でもなくて、ハカイザーが自分を「実験兵士」と呼んだ瞬間なんだろな、と思う。

ハカイザーが改造後も仲間と呼んでくれていたら、苦しみながらもまだしがみついていたかもしれない。

カラフルのおやつ券握り潰してまで選んだ仲間が仲間でなくなってしまった後に残ったのは、ヤツデや介人への罪悪感とそれでも命と心を助けてくれた介人からの借り。

仲間だった頃の残像を断ち切って完全に手放した今回の選択は、ステイシーにとって絶望でもあるけれど、反面、ヤツデや介人への罪悪感やのし掛かる借りから解放される道を選べたっていう面もあるかも。

 

自分の先祖の細胞を直々に与えての作戦が失敗に終わったボッコワウスは大激怒。そんな飼い主の姿に「ここはそろそろ潮時かな・・・」と呟くゲゲが、いつにもまして不穏。年が明けたらこちらも動きがありそうで楽しみ。

 

カラフルでは、功が10年ぶりの帰還。迎える母ヤツデさんの涙目からの「帰りが遅いんだよ!」に、泣けた。実の息子が10年間、つい最近まで生死すらわからなかったんだもん。ずっと辛かったよな。ほんと良かった。

介人にとっては、1日遅れの最高の誕生日プレゼント。誕生日っていう要素も見事に使いきったな。

というか、この3話、誕生日に加えてクリスマス決戦という時期にお盆、正月という時期外れの要素を全力全開で料理し、かつ背景として本来のクリスマス要素も盛り込んで、どの回も面白く仕上げ、最後に最高の決戦回を見せてくれた。

脚本の香村さん、3話持ちの渡辺監督、ありがとう。凄く良かった。