ゼンカイジャー28話感想: いつか色で呼ばなくなる日
冒頭、カラフル開店の準備をしているジュラン、マジーヌ、ブルーンという日常そのものの場面。そこへ階段を降りてきたのが、あのド派手なパジャマに乙女なナイトキャップ姿のゾックスと双子。笑顔で「モーニン」に何が起こったのかと一瞬脳がフリーズした。
続けてバカンストピアで美都子を捜す介人、ガオーン、フリントの場面。美都子が見つかるまでゾックスは介人に船を貸して、代わりにその間はカラフルに住むことになったと説明される。
前回は予告のせいでてっきり美都子が見つかると思ってたから、結局捜索が棚上げになった時は、過去作品の例もあるので「香村さん出来ればあんまりギリギリまでひっぱらないで早めに動かして欲しいな」と思った。けど、この同居が見られるなら当分見つからなくていいかも、と一瞬思ってしまってごめん。
ヤツデさんは「みっちゃん<だけでも>早く助けてあげたいからさ」ってどう見ても本心から言ってる。
彼女にとって実の子供は功だけで今逃げてる美都子は嫁。私がヤツデさんなら、じゃあ息子は?って気が気でないし、嫁だけが逃げてる事に複雑な気持ちになってもおかしくないと思うから、ヤツデさんはやっぱり本当に観音様だと思う。でも口には出さなくてもやっぱり息子の安否は心配なはず。
それを代弁するセッちゃん。更にそこで「技術目当てだから残った方は大切にするさ」と、根拠付きでいち早くフォローし、だけど「暫くはな」を付け加えるゾックス。
自分も呪われた弟達の為に楽観的悲観的両方の可能性をあれこれ考えてきたから、ヤツデの気持ちに寄り添いつつもあまり楽観的にもなりすぎない距離感を感じて頼もしい。
ブルーンがカラフル備品の単行本コミックを整理しているのを見て、ゾックスは朝食のソーセージを咥えたまま目の色を変える。本はマンガだけ好きで読むらしい。
「昔行った並行世界でハマってさ」
「おい、青いの!」とジュランへの「赤いの」に続いて未だに色呼びのゾックスに、「私の名前はブルーンです!」と叫んだりはせずに「なんと!いったいどんな漫画ですか?教えて下さい!」と食いつき返すブルーン。
思わぬところでブルーンとゾックスという、本の虫と不良みたいな組み合わせが共通の趣味を発見して意気投合したかのような趣。そのままの勢いで漫画談義が始まろうとしたその時、セッちゃんの「大変っチュウ。街が漫画っチュウ」という叫びで中断。
今回のワルドはペンを模した右手から発射した「執筆スプラッシュ」で人々を紙の漫画原稿に変えてしまう。それを見たゾックスが即座に「へ~え、お前、マンガトピアのギア使ってんのか」と看破。彼が漫画にハマった並行世界とはマンガトピアのことらしい。SDトピア以外でもゾックスたちが行った世界がこうしてフューチャーされるのは新鮮で、前回の並行世界旅行に続いて界賊設定がどんどん補強されてる感じ。
マンガワルドは「この世界が舞台の最高の漫画を作ってやるマンガ」と、左手の杖「吹き出しプラカード」に「製本」と文字を浮かべると、それらの原稿を一冊の漫画雑誌「週刊少年マンガワルド」に製本。
更にそれを背後から奪おうとこっそり近づいたした双子もマンガにされて雑誌に組み込まれてしまう。
「発売前の漫画を勝手に読むのは悪いことマンガ。ふふ、買ってね」と、このネット時代にはわりと刺さる正論を吐くマンガワルド(笑)。そんで「発売する予定があるのですか?」と大真面目に問いかけるブルーンがじわじわくる。
マンガワルドは「近づいたら(雑誌を)破くマンガ」と漫画にされた人たちを人質に取って怯ませ、更にジュランとマジーヌも漫画に変えてしまう。ゾックスはひらりと避けてブルーンは辛くも盾にしたピッカーだけが漫画化。
そこへ駆けつけた介人がキックで形勢逆転させるも、漫画家の命である腕(ペンの突いた右手ではなく左手だけど・笑)を痛めたマンガワルドは「ボツ原稿爆弾」を投げ付けて退散。今回は漫画制作に絡んだ台詞やネーミングが全般的に面白くてツボ(笑)。
ジュランとマジーヌは製本を免れてガオーンとブルーンぎ回収。でも、製本された双子は持ち去られてしまう。
トジテンドでは、バラシタラの戦況報告にかこつけて、ゲゲがイジルデに、「先日お前の研究所が何やら騒がしかったようだな」と意地悪く話題にする。聞いておらんぞとボスに詰め寄られて慌てるイジルデに「捕まえておいた実験サンプルに逃げられたんだったか」とバラシタラが追い撃ち。
全並行世界に追っ手を差し向けるという大掛かりな捜索を組織のトップが知らないままなのに、ちょっと驚いた。まあボスは壁と同化してあまり自由に動けなさそうだから、部下下が情報入れないと蚊帳の外になっちゃうのかもだけど。
怒って拳を打ち付けるボッコワウスに、イジルデはもう始末はしたので安心するよう取り繕う。本当は逃げられたままなのに。
トジルギア破壊=トピア解放の事実が判明した時もだけど、イジルデは都合の悪いことを隠そうとする時の小者臭が凄いな。
ゼンカイ側はこういう時の恒例、カラフルに全員集合で作戦会議。
漫画にされたジュランとマジーヌはコマの中で動いたり喋ったり出来て、存在感は変わらない。台詞がいちいち吹き出しになって、字幕使わないで見てる側にはむしろ親切(笑)。
そう言えば、前回の中澤組もジュランマジーヌ組、ガオーンブルーン組に分かれていたなと思った。この時期、中澤監督回と加藤監督回の撮影を同時進行させて中澤監督がジュランマジーヌ組をメインに撮り、今回の加藤監督はガオーンとブルーンをメインに撮ったのかも。
破かれたら終わり、燃やされてもアウトと、フリントとブルーンが脅す形で、漫画にされた人たちをマンガワルドから回収して引き離してからでないと攻撃しにくいことを印象付けるのは手堅い。ではどうするか。
ジュランとマジーヌをおとりにしてその間に、というガオーンはまだちょっと仲間のキカイノイドに冷たい(笑)。でもマンガワルドは漫画を集めていたから、漫画で誘い出すのは有効とブルーンがフォロー。ならば「こういうのを、俺たちで書けばいいんだ!」と介人が提案し一気に盛り上がるゼンカイ組を
「漫画を舐めるな!」と意外にもゾックスが一喝。
「え?」と振り返る漫画ジュランと漫画マジーヌの反応も介人たちと同じ画面に収めて、むしろこの2人の方が目立つのは狡い(笑)。
「人を誘い出せるほどの傑作漫画を、素人が簡単に描けると思うなよ!」ゾックスの口から意外なド正論が出て、なんだか好感度上がるのは狡い(笑)。こんな一面もあったのか。そして出て行ってしまう。
追いかけるフリントに突き飛ばされて「ひでぶっ!」と「北斗の拳」の断末魔を叫ぶブルーン(笑)。
「昔、漫画家でも目指してたのかね?」とヤツデさん。この台詞のせいで、「え?まさかゾックス、戻って自分で書く気?」と変な期待をしてしまった(汗)。
「絵は上手いらしいッチュウ」とセッちゃん。意外な設定と思いきや、東映公式によると
「そもそもゾックスがマンガにお熱な設定は、これも加藤監督担当の19カイでアバレキラーの力を借りた際、メープルシロップの絵が上手かったのを見逃さなかった香村さんの後押しあってのこと。」
だそうで、今回は現場と脚本のキャッチボールが生んだ名エピソードだった(と、もうこの時点で断言してしまう)。
ボスの前では美都子の逃亡をなんとか誤魔化したイジルデ。研究室に戻ると功の映像を映し出しながらバラシタラに苛立ち、ステイシーにも余計なことは言わないよう釘を刺す。
ステイシーは、バラシタラを喜ばせるだけだから言うまでもないというスタンス。だけどヤツデさんの息子の映像を前に何を思うのか。イジルデが五色田夫妻のことを組織に隠していることは、ステイシーがヤツデのために暗躍するにも都合が良いんだよね。ゲゲにどこまで把握されてるか、は気になるけど。
イジルデは夫妻を抵抗出来ない状態にし、直接頭脳を解析して得た知識を、自分の発明に役立ててきたらしい。眠ったままの異種族の脳から直接知識を取り出せるほどの科学技術力は、それはそれで十分凄い。
「またあっと驚くような物を作ってやる」と豪語するイジルデに、「その前に僕が勝てばいいんだろう」と言い捨てて去るステイシー。ヤツデさんの息子の哀れな状態に心を痛め、自分が早く勝てばもう利用されずに済むと思ったのか。
でも大事にされるのは利用価値がある間だけ、というゾックスの冷徹な見方の方が正しい気がする。
素人の漫画が駄目ならプロの作品で、とゼンカイ組はカラフルに置いている漫画本を餌にしてマンガワルドをおびき出す作戦に出る。
道に漫画本を撒いてこっそり見守るヒーローたち(漫画コマのジュランマジーヌ含む)というほのぼのした光景が凄くゼンカイジャー。・・・そして、スシワルドやカブトムシワルドに続いてこんな作戦にまんまと引っかかるマンガワルドも凄くゼンカイジャーの敵怪人(笑)。
・・・と思いきや、マンガワルドが撒き餌の漫画本を読み耽っている隙に介人がそろりそろりと近づき、雑誌に手を伸ばしたその時、落ち着いた口調の「執筆スプラッシュ」が炸裂。介人も漫画にされてしまう。
マンガワルドは罠だとお見通しだった。嘲笑いながらガオーンとブルーンも漫画にしようとしたその時、上空に現れた界賊船から大量の漫画原稿がまき散らされる。
その漫画を拾い上げたマンガワルドは、面白過ぎて続きを読まずにはいられない。「罠だとわかっていてもやめられんマンガー!」
なんだか夕食の支度が遅くなるとわかっていても明日寝不足が響くとわかっていてもついつい読んでしまう心境を代弁された気がして、うっかり共感してしまうから困る(汗)。
その隙にゾックスがまんまと雑誌を回収成功し、前回に続き綺麗な回し蹴り。今回はひたすらゾックスの掘り下げが面白くて格好いい。
(ゾックスは好きだから嬉しい反面、同じ脚本家、同じスーツアクターの3年前の追加戦士も、状況が許せばこんな風にもっとちゃんと掘り下げて貰えたのかな?とついつい考えてしまって複雑。)
「この漫画はあなたが書いたのですか?」と食いつくブルーンに
「まさか。これは昔、マンガトピアで頂いてきたお宝。珠玉の漫画コレクションだ」とゾックス。なるほど。
いろんな並行世界を巡っているからワルドのギアに閉じ込められた世界にも行ったことがある。
界賊だからそこでお宝だと思ったものを奪って持っている。
世界を閉じ込めたギアで誕生しギアの力=閉じ込められた世界の力を使うワルドが、その世界で生まれた作品に惹かれるのはもう運命。
物凄く狂った回に見えて、解決方法が物凄くロジカルなのは、凄く香村さんで凄く ゼンカイジャーだ。
そんでゾックスを賞賛する介人や双子の漫画のコマがいちいち挿入されるのも楽しい。
反撃の狼煙の変身はゾックスのダンスをしっかり見せた後、漫画にされた介人ジュランマジーヌも原稿がカラーになってそのまま変身。変身過程や名乗りのアクションが文字通りコマ送り状態で描かれる芸の細かさ。
東映公式によると、加藤監督がネームをコマ割りで書いて、それを企画者104という代々スーパー戦隊の企画から参加してる編集プロダクションが清書し管理。
更にそれとは別にマンガトピアの傑作漫画原稿やカラフルの漫画本の表紙は清書まで加藤監督の手によるものとのことで、その手のかかり方、入れ込み方に圧倒される。
劣勢になっても漫画原稿を読むのをやめられないマンガワルドはクダックたちを「アシスタントー!」と呼びつけて、意味は間違ってはいないけどじわじわ来る。
戦闘はガオーン、ブルーン、ゾックスの戦闘をしっかり見せた後に、ジュランマジーヌ介人も漫画のまま技を繰り出すという、もはや笑うしかない頭おかしい演出。コマが巨大化してクダックの前に立ちはだかってる感がむしろいつもより強者感さえある(笑)。
介人にはステイシーが挑むけど、彼の攻撃が届く前に風圧で原稿が飛ばされてノーダメージで漫画化がむしろメリットになってる。そんで介人の方はダイナピンクの力でコマをバラで埋めると実体化させてバラ爆弾、というふざけた攻撃がまともに当たり、あくまで真面目にダメージ受けてるステイシーが不憫だ(笑)。
ゾックスが華麗にマンガワルドを圧倒して痛快にトドメを刺し、介人たちや漫画にされていた一般人たちは元に戻る。ステイシーは「むしろ戦いやすいというもの!」と介人との戦闘を続行。確かにこっちの方が攻撃はちゃんと当たる(笑)。
けれど、ダイマンガワルド出現でゾックスに手を貸せと言われた介人に「ごめんステイシー、また今度!」と飲みに誘われたのを断るような軽いタッチで逃げられ、やっぱり不憫(笑)。
追いかけようとするステイシーの前に立ち塞がったのが赤黄桃の3人で、青がもうこの時点でいないのが、後から見返すとニヤニヤしてしまう。
ダイマンガワルドは「俺くらいになると、絵が勝手に動き出すマンガ」と、キャラが勝手に動く快感に目覚めた漫画家みたいなことを言いながら、描いたミサイルを実体化させて攻撃。
それに「わかるぜ。楽しいよな」と同意するゾックスは、やっぱり漫画家目指してた時期もあったのかもと思った。もっと言えば書いてる香村さんも脚本と漫画の違いはあれど、作り出したキャラが勝手に動き出す「楽しい」経験ありそうだなと。
そんで両者の周りにそびえ立つ巨大単行本タイトルが、これまでのワルドやら他戦隊やらのパロディーで目がそっちに言ってしまい
戦いを見るのに集中出来ない(笑)
ゼンカイジュウオーはワルドの左手のインク壺を破壊し、フキダシプラカードに先に「ヤラレター」と書いてからトドメ。断末魔は
「好きな漫画の最終回、見届けたかったマンガ」
いつもダイワルドの断末魔はじわじわ来るけど今回はグサッときた(笑)。そうだよ、ガラスの仮面とかガラスの仮面とかガラスの仮面とか(涙)。
その頃イジルデは功の脳を解析するが、使えそうな情報はもう出てこない。
「10年も凍らせておけば、脳に刺激もなく底も尽きるというもの・・・いや、待てよ?脳に刺激か」
と不気味に笑い出すイジルデに不穏なBGMが被さって不吉。全編トンチキなのにこういう怖いシーンが挟まることで全体が引き締まるな。
ゾックスの作戦で一件落着のカラフル。マンガトピアの漫画を「天才過ぎたんだ」と語るゾックスに「でも、家族のためなら、大事なお宝もばら撒けちゃうんだね」と介人。「当たり前だろ」とゾックスはあくまで家族第一なのはぶれない。
そんな凄え漫画なら読んで見たかったというジュランに「ありますよ」とブルーン。「私も読んで見たかったので、集めてきました!」と原稿の束を見せる。他3人が一生懸命ゾックスと戦っている間、やっぱり1人で散らばった原稿をせっせとかき集めていた。戦いそっちのけで(笑)。
いやお前戦い優先しろやという気持ちと、いやでも優れた作品へのリスペクトもあってこそのかき集めだろという気持ちとがせめぎ合って困る。実際私もその場にいたらかき集めない自信はない(きっぱり)。
それを見たゾックスの血相が変わり、「お~ま~え~!拾ってきたんなら返せ!」と取り返そうとする。一度は家族のために諦めたお宝も、目の前に戻れば我欲剥き出しで所有権を主張し、集めたブルーンへの労いとかは皆無なのが、凄く界賊。
冒頭で意気投合したように見えても、介人に対するような仲間意識をキカイノイドたちにも持ち、色ではなく名前で呼ぶ日はまだまだ来ないのかな。この時期でもまだ主人公以外の初期メンバーとの距離がここまで遠い追加戦士はそう多くないかも、と思うと若干もどかしい。
でもこんな暮らしを続けていけばそのうちにいつの間にか、ってなるような気もするし、そのための同居でもあるなら、嬉しい。もしそれをしっかりドラマで描いてくれたら、ちょっと泣くかも。
なおブルーンの方も自分が苦労して集めた原稿をすんなり返す気はなさそうで、読みたい介人たちも加わって原稿を取り合い大騒ぎの皆をヤツデさんが一喝。
「漫画トピアは解放されたんだから、返してきなさい!」
一瞬虚を突かれた。考えてみたらド正論。でもあの場でも他の誰も、そんで私もそこまで思い至らなかったよ。
介人を助け美都子捜索に協力してくれるゾックス達に感謝はすれど、善悪の線引きはきっちりしていてさすがヤツデさん。
だけど一方で、ゾックスが漫画トピアから漫画を強奪したからこそ、マンガワルドを倒せて介人たちも解放され、最終的には漫画トピアも解放された。そう思うと、物事の良し悪しは一面だけで決めつけられないという香村イズムもちょっと感じる。法を犯してはいるけどそのために助かった人も少なからずいるルパンレンジャーに通じるというか。
あの後、ゾックスたちは素直に返しに行ったんだろうか?ヤツデさんなら、見ず知らずのマンガワルドの人たちのために「返すまでウチには泊めない。船も貸してくれなくて結構」まで言い出しかねない怖さがあるから、なんだかんだ介人を助けたいゾックスが折れるかな。でも返しに行った先で、「気に入ったから是非売ってくれ」と改めてお金出して頼めば解決なような気もする。
ちなみにフリントはちゃっかりと、いち早くヤツデさんの真似をして「返して来なさい」とブルーンに指図してた(笑)。元々は兄貴が強奪したもので兄貴の宝物なんだけど。彼女もちょっとだけカラフルに感化されてきてるのかもな、と思ってみたり。
次回予告。
ステイシーの純白テニスウェア姿見た時は、ゼンカイジャーのシリアス最後の砦ステイシーもついに陥落かと感慨深かった。けどテレ朝予告読んだら、大切な物を守るために自ら敢えて陥落の道に踏み出したってことなのか、とちょっと泣けたりして。