キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

海賊戦隊ゴーカイジャー: 50話感想というか覚え書き

海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。

 

■数が多すぎる

ゴーカイジャースーパー戦隊の大いなる力を総動員してザンギャックの大艦隊を駆逐し続ける。けれど、あまりに数が多すぎてきりが無く、とうとうゴーカイオーも豪獣神も力尽きて破壊され、海賊たちはバラバラの場所に放り出されてしまった。

画面の奥まで大艦隊が無数の小さな黒点状態で空を埋め尽くしている様は、大量発生したバッタの海外ニュース映像とかを連想させる。これまでもザンギャックは数の多さを大きな特徴としてきたけど、ここまで強調されると絶望感が半端じゃない。

だからこそ皇帝から明日の朝地球人を皆殺しにすると告げられた時に、唯一の希望として海賊たちの脳裏に宇宙最大のお宝が浮かぶ必然性がヤバすぎる。これじゃもうスーパー戦隊を犠牲にしてでもザンギャックのいない世界に作り替えて地球を守るしかないのでは?って。

メタ的には、海賊たちはきっとスーパー戦隊を犠牲にするような選択はしないだろうけど、じゃあそこにどんな理屈をつけるの?つけられるの?っていう緊張感が当時凄かった。

 

■レジェンド登場コンプ

子供の前で瓦礫の下敷きになった母親を助けようとする鎧に加勢したのは、ジュウレンジャーのマンモスレンジャー、ゴウシ。

ジュウレンジャーの大いなる力自体は加入前に鎧が変身後のドラゴンレンジャーから貰っていたけれど、ラスト1話でゴウシが登場したことにより晴れて34全戦隊からのレジェンド出演が叶った。前話でも書いたけど、本当にクロスオーバー作品としても凄い快挙で、スタッフさんも役者さんたちも頑張ったなと思う。

 

■勇気を貰った少女

ルカとアイムは、23話で55Vのマツリに助けられた母子に再会する。妹が生まれてお姉ちゃんになった少女は、ゴーミンに襲われた時に母と妹を庇って銃口の前に立った。マツリも怖かったけど守りたいもののために勇気を出したと聞いたからと言う。

スーパー戦隊に影響を受けてこんな小さな少女も勇気を出して戦おうとしているのを見て、アイムとルカは顔を見合わせ、強く頷き合う。

今作でレジェンドとある程度以上の交流が描かれた一般人は、この少女を除けば、ジャンの弟子の子供たち、亮の商店街の人たち、後は直接会話する場面はないけれど健太の教え子たちぐらいだろうか。その中で香村さん脚本の2本は少年少女がレジェンドから直接学び影響を受けていた。

でもこの物語の時間軸の中で、レジェンドに出会ったことによる成長を描くことが可能だったのはこの少女だけかもしれない。

香村さんはもしかしたら意識的にレジェンドと少年少女たちとの交流を描こうとしてくれたのでは?と思ったりするけれど、特にこの少女を登場させてくれたことは、この後に海賊たちが出す答えの説得力を増していると感じて、有難く思う。

 

■天知博士と山崎さん

  ジョーとハカセが目にしたのは前年の戦隊ゴセイジャーを居候させていた天知博士と、マジレンジャーでマジレッドに恋していた山崎さん。

 天知博士は正直言って本放送当時はそんなに好感持って見ていたわけじゃないけど、「弱気はNG」と明るく大声で人々を励ましながら瓦礫の下敷きになっていた人々を全員助け、ペタンと座り込む姿は今まで見た中で一番格好いいと思った。

  山崎さんは助け出された女の子にマジレッドのぬいぐるみを渡し励ます。

「大人になっても覚えてて。みんな勇気という名の魔法が使えるの。それが未来を照らしてくれる。私もスーパー戦隊にそう教わったの」

勇気が魔法の発動条件になっていたマジレンジャーの設定を踏まえていつつ、勇気を持って戦えば誰だって未来を良い形に変えられるんだよという、視ている私たちへのエールにもなりうる形に昇華させた台詞が素敵。そして明日は皆殺しだと言われても女の子が大人になれる未来が来ることを揺ぎ無く信じている、穏やかな強靱さも。

2人とも、本編ではがっつり戦隊のサポートをしてたわけじゃなく、というか途中までヒーローたちの正体も知らず一般人的な立場として戦士たちと接していた。それでも、レジェンドたちの戦いを見続けて諦めない気持ちや勇気を貰い、今はそれを周囲にも与えようとしている、という見せ方。最近の戦隊のキャラでそういう役割を担えるのはこの10年くらいだとこの2人が一番適任、てぐらいピンポイントな人選がお見事。

本放送時女子高生だった山崎さんは6年経って美しい大人の女性に成長していて、私はあのぬいぐるみがなかったら彼女だとはわからなかったかもしれない。もしかしたらそれも彼女が選ばれた理由の1つなのかな。

 

■少年との再会

マベは2話でレンジャーキーを盗もうとした少年と再会する。マベが敢えてシンケンレッドに変身させ力の限界を思い知らせた少年は、変身しなくても鉄パイプでゴーミン数人と渡り合えるまでに成長していた。

スーパー戦隊の力に頼らなくても、自分の力で戦えるし戦おうと立ち上がった彼も、この地球の人々の不屈の精神を象徴している。

だからマベは少年にこの星の価値は見つかったかと聞かれ時「お前の言うとおりどこにでもあった」の後に少年の胸を小突き「ここにもな」と付け加えた。マベがこの50話で見てきたものの積み重ねを思い返すと、「どこにでもあった」が誇張でも何でもないのが感慨深い。

  

一見現実の地球と同じに見えるけど、1話の保母さんみたいな戦隊オタクがごろごろいてゲキレッドの生い立ちが一般常識というこのゴーカイ世界の地球は、実はスーパー戦隊の存在の浸透によって人々のメンタリティも不屈で、ただ無力に守られているだけではなかった。そんなこの星の真骨頂を、ルカとアイム、ジョーとハカセ、そんでマベがそれぞれの形で目の当たりにしていく流れが綺麗すぎる。

あと当時を振り返ると、甚大だった震災被害を考慮して視聴者へのメッセージ成分がより強くなった部分はあるかもと思う。

 

スーパー戦隊の価値

ガレオンに戻ってお宝を前にし、まず「使いましょう」と口火を切ったのは鎧。

ゴウシは、自分たちがザンギャックを追い払うことしか出来なかったことを不甲斐なく思っていたんだろう。地球が滅ぼされようとしているのにスーパー戦隊だけを温存したって意味はない。だから自分たちはどうなってもいいから宝を使ってくれと鎧に頼んだ。

鎧はそんなゴウシやレジェンドたちの思いを伝え、断腸の思いでその消滅を選ぶ。

でもガレオンに戻る途中で、この星の人々の強さの根底にスーパー戦隊の戦いの歴史があることを改めて目の当たりにした海賊たちは、その支えを消してしまうことを拒み、使わないと口を揃える。

スーパー戦隊が当たり前に存在する地球以外の、宇宙の圧倒的大部分では「ザンギャックに逆らったからには逃げ続けるか死ぬか」という選択肢しかなく、海賊たちもそんな「宇宙の常識」の中に生きてきた。

けれど、鎧から「ザンギャックを倒す」というこれまでになかった発想を与えられて言わばカルチャーショックを受けたのが18話。鎧がその発想をごく当然のように持てたのは、34のスーパー戦隊が入れ替わり立ち替わり地球を侵略の脅威から守り続けた歴史を一般人たちも共有していたから。

そして今度は、スーパー戦隊が当たり前に存在していたために、宇宙全体で見た時にそれがどれほど貴重なものなのか本当には分かっていなかった鎧に、海賊たちがその真価を教える形になった、というお返しの構図でもあるのかも。

  

誰よりもスーパー戦隊を愛する地球人の鎧がレジェンドの思いを汲み取ったからこそその消滅を選べば、宇宙最大の宝が目的でスーパー戦隊の知識などなかった通りすがりの海賊たちが1年かけてその価値を知り尊重して消滅を拒むという、ひっくり返しの構図がただただ綺麗で尊い

 

■過去を乗り越える

鎧は、これまで自分がさんざん啓蒙してきたスーパー戦隊の価値を、海賊たちが自分以上に認めてくれていたことに涙しつつも、その宝を使わなければ失ったものを取り戻せないのでは?と彼らへの気遣いも見せる。

海賊たちの夢への配慮も鎧が宝を使うことに傾いた一因だったかもしれない。確実に地球を守れる上に、大事な仲間たちも悲しい過去を払拭して幸せになれるのだから、選ばない理由はないと。

でも海賊たちは辛い過去でもそれを乗り越えてきたから今の自分があるのであり、過去を否定することは今の自分を否定することだと、どんな過去も受け入れて前に進むことを選ぶ。

一度は取り戻せるかと喜んだものを諦めるのはきっと内心辛さもあったろうけれど、スーパー戦隊と地球の人々の支えを奪わないために掴まないことを決める。それだけでなく自分たちは全てを乗り越えて前に進み続けているからこそ、そんな今の自分たちを肯定したいからこそ掴まないことを誇りを持って選ぶ。

私が「どんな理屈をつけられるのか?」と心配し、自分なりにあれこれ想像していたものを軽々と凌駕する答えだった。当時もうこの時点でボロ泣きだったし、今見てもうるっと来る。

なお、当時を思うと、現実の世界でも311で大事な人、大事な故郷を失ってしまった人々が大勢いた。そんな人たちにエールを届けたいというスタッフさんたちの思いもあったのかもしれないな、とも感じる。

 

■見習い卒業

5人はそんな自分たちの答えを出した上で、地球人という当事者である鎧に決定権を託す。海賊たちは、根本的には「通りすがり」だから。

  鎧はレジェンドたちに詫びながら「俺は6番目の海賊、ゴーカイシルバーです! 夢はこの手で、掴み取る!」と、お宝を銃で撃ち砕く。

スーパー戦隊を犠牲にして戦わずに夢を叶えるのではなく、自分たちの手で戦ってザンギャックを倒すという夢を叶えると。

20話で鎧がヒュウガを突き飛ばした時の台詞を思い出した。

「すいません!この星を護るためなら、ヒュウガさんが変身する方がいいかもしれません。でも俺、ゴーカイシルバーやりたいです。俺がやりたいんです!」

<ヒュウガさんが変身する>を<お宝を使う>に、<ゴーカイシルバーやりたい>を<戦ってザンギャックに勝ちたい>に置き換えれば、まんま今の鎧の気持ちなんだろうなと。

  

宝を使う方が安全で確実に地球を守れる賢い道なのかもしれない。でも何が賢いか考えていたら海賊になんかならない。やりたいことをやって、欲しいものを自分の手で掴み取る。自分たちで戦いザンギャックに勝ち地球を守ることを掴み取る。それが海賊、そして海賊<戦隊>ってもんだろと。

・・・まあそれでも、「だからってなにも壊さなくても(汗)」と思ってしまった私はやっぱり絶対に海賊にはなれないな。分かってるよそんなこと(笑)。

  

「これでお前も一人前の海賊だよ!」鎧の涙の決断を見てマベはその頭を掴み手荒くも優しく祝福。鎧の加入時に最後まで反発していたハカセも肩を叩き労う。

鎧の見習い卒業までこんなにも劇的にきちんと盛り込んでくるのは見事だし、狡い。鎧はその加入や成長が物語の重要なマイルストーンと密接に絡んでいて、幸せな追加戦士だなとつくづく。特に今は本放送時以上に狡いと思ってしまう。

 

■海賊からスーパー戦隊

夜が明けて、ダイランドーが地球人掃討作戦を実行するために兵を率いて現れる。ヘルメットと鉄パイプで立ち向かおうとするあの世界の地球人たちが健気だ。

そんな彼らの背後の高みから、海賊たちが現れる。その口から発せられたのは

「うっさいバーカ!」

「フッ、消えるのはお前たちだ」

「あなた達の言うことなど、聞く耳はありません」

「僕たちも、この星の人たちも、お前らみたいなの、大っ嫌いだ!」

もうここで鳥肌立った。ルカの代名詞にもなった「うっさいバーカ!」から1話の啖呵をリフレインしつつ、今は地球人と気持ちを1つにしていると1年かけた距離感の変化を付け加えてみせて。そんで

「滅びるのが目にみえているこの星で、海賊ごときが何しても無駄ダダダ!」に

「無駄なものか。それに俺たちはただの海賊じゃない」と鎧が返し

「この星に、守る価値を見つけたからな」とマベが続け

「戯れ言はそこまで。どうせユーたちは死ぬだけチョイ」

「死ぬ気はねぇな。だが、命を懸けてこの星を守る。それが、スーパー戦隊ってもんだろ!」

という流れは、もうもう感無量(涙)。1話では「気に入らねえもんはぶっ潰す。それが海賊ってもんだろ!」だったんだよね。

  

本当に、開始当初に見所として掲げられた「通りすがりの宇宙海賊がいかに地球を守るスーパー戦隊になっていくか」を1年かけてきっちり、本当にきっちりやり切りやがった。ここまでやってくれるとは思ってなくて、当時はただただ圧倒されていたし、もう数えきれないほどDVDで見返しているけどそれでも見るたびに熱くなる。

もうここで終わってくれてもいいと思うくらいゴーカイジャーという作品に満足していた。

でも海賊たちがジュウレンジャーにチェンジした時、ここまで盛りだくさんでも更にジュウレンジャーのレジェンド回としても全うしようとしているのか・・・と脱帽。

ゴーカイジャーは年間通して1話1話のレベルが 嘘みたいに高い戦隊だったけど、この回はその中でも特別で、トドメ刺された。

ただ当時はもうこの時点で充分満足し過ぎていて、あの大艦隊にどう立ち向かうかという問題は気になるものの、私の中では今回がピークで次回は消化試合でも仕方ないかな、なんて気持ちもあった。今思うと、まだ私はこの作品を舐めていたんだな、と思う。