キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

海賊戦隊ゴーカイジャー: 48話感想というか覚え書き

海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。

 

■サリーの布石

ガレオンを乗っ取ったバスコは、自分が奪った5戦隊の大いなる力をそれぞれのレンジャーキーに移す。

縛られていたナビィは、その隙に縄を切り居住区から脱出してコックピットに隠れ、海賊たちと連絡をとって現在地を教える。脱出出来たのは昨夜サリーがたまたまテーブルの下に落としたナイフで縄を切れたから。爆殺されるとも知らずにバスコに言われた通り潜入したサリーの行動が、海賊たちに反撃のきっかけを与えることになって、ちょっだけカタルシス

なお、後々の展開から振り返ると、もしここでナビィが逃げて時間稼ぎをしていなかったら、バスコはまんまと宇宙最大の宝を手にしていた可能性が高かったんだなと思うとヒヤッとする。

 

■海賊の海賊版

バスコはガレオンの出入り口を封鎖するとゴーカイジャーのレンジャーキーを実体化させてナビィを捜索させる。

元々ゴーカイジャーのマスクはピカレスク風味があって若干悪役顔。私はそんなデザインも気に入っているんだけど、意思なくバスコの手先として動いている、言わば海賊の海賊版になると、余計に人相悪く見える。特にやり過ごせたと思ってホッとしたナビィをドアの隙間からじっと見ていたゴーカイレッドなんて、演出もあって完全に悪党面で怖かった(笑)。

 

■お宝を探す理由

マベは16話でも垣間見えたけど、金銀財宝にはあまり興味がない。ザンギャックから金を盗み出そうとしたルカと鉢合わせしたのも、金が欲しかったというよりはザンギャックのその星の侵略を妨害するため。

じゃあお宝を手にしてどうしたかったのかと聞かれると

「さあな・・・」「大体そのお宝がなんだかもわかんねえ」「中身は何でもいいのかもしんねえ。この宇宙を旅する海賊達、誰もが欲しいと望みながら誰も手にしたことのない伝説の宝物。それを手にした者は宇宙の全てを手にしたのと同じ。そんなもんが存在するなら、手に入れるしかねぇじゃねぇか。夢は、手に入れられないと思った時に無くなっちまうんだから」

マベちゃん、正にOPの「冒険とロマンを求めて大海原を旅する」こと、夢を追うこと自体が目的の人だった。現実的な利益を求める気持ちはやはり薄く、人によってはリスクの大きさと見合わないと思うかもしれない。20話での「どうしたら賢いなんて考えてたら海賊なんかにならねぇよ」を思い出す。

でもだからこそ、アイムのように一見仲間にしてもメリットがなく逆に足手纏いになりそうな者でも、面白いと思えば仲間に引き入れる器の大きさを保てたのかなとも思う。そんでその冒険とロマンは、仲間たちと一緒に追い求めることがたぶん一番大事。

きっと仲間たちも気持ちは似たり寄ったりというか、そんなマベと一緒に夢を負いたい気持ちが一番大きな感じなのかな。ルカだけは現実的金銭的な夢があるものの。

 

■雨が止む

ナビィの連絡を受けて、ガレオン奪還のために起き上がろうとするマベをジョーが無言で引き止め、マベも仲間たちに任せることを受け入れる。38話で悟ったように今はマベも仲間の強さや夢への思いを信頼していればこそだけど、同時にやっぱりその中でも最古参ジョーとの信頼関係はまた特別なんだなと思った。

この時にそれまで降っていた雨が止んで光が差し込む。渡辺監督は、雨とそれが止んで光が差し込んだり水溜まりに雫が落ちて光ったりする光景を、キャラの状況や心境の変化とシンクロさせる演出がお得意で、大好き。(最近だとキラメイシルバーの闇落ち回)

 

ハカセと「跳ぶ」

崖下に停泊するガレオンへの跳び移りをルカに心配されたハカセは「行く!行くなって言われても行く!」と答える。

3話では「仲間のためなら勇気が出せるけどお宝のためには出せなかった」けど、本当に色々あった末に「仲間と一緒にお宝のために勇気が出せる」ところまで来たんだな。

もっとも、マベを助けるために1人でダマラスに挑んだことを思えば、もはや当たり前に超えられるハードルにすぎないのかもだけど。つくづく、ハカセは1年通してその成長を丁寧に積み重ねて貰えたなと思う。

そう言えば彼は27話で、「仲間の身を案じたために、跳べそうな距離を跳ばない」という選択をしたこともあった。ハカセの場合、「跳ぶ」という行為がその時の勇気や仲間への思いを表現する形になってたようにも思えて、偶然かもしれないけど味わい深い。

 

■また掴みに行った

ジョーたちを見送り独りになったマベは、それでも立ち上がろうとしてダメージを痛感。苛立って打ち付けた拳の中に金属の破片、サリーの首飾りの一部を握りしめていたことに気付く。

サリーはあの時、咄嗟に爆弾を自分のお腹にしまい込み、体内で爆発させたせいで恐らく木っ端微塵になった(涙)。すぐ側にいたにもかかわらずマベが致命傷を負わなかったのは、サリーが庇ったためだったんだな。

そして手の中の首飾りの破片は、サリーが一方的にマベを庇っただけではなく、マベ自身もあの状況で咄嗟に跳び退くどころか逆に、ジョーの首輪の時のように首飾りを掴んで離さなかったことを示している。

ずっと一緒の仲間のはずだったバスコに見捨てられ爆殺されようとした時、これまで敵だったマベは逃げるどころか最後まで助けようと掴んで来てくれた。それはあの瞬間のサリーにとって、せめてもの救いになったのかもしれない。

だからこそサリーはマベの気持ちに応えて彼を守ったんじゃないかな。そう思うと余計に、捨てたバスコと掴んで離さなかったマベの対比が鮮烈に感じられる。

 

■VS自分の海賊版

ガレオンの甲板を派手にぶち破り内部への侵入に成功した5人。二手に分かれて居住区を目指すと、それぞれ自分の変身後の姿に遭遇。これを倒せばレンジャーキーを取り戻せる。

ナビィの脱出が海賊にガレオンの位置を知らしめ侵入を許し、そのナビィ捜索のためにゴーカイジャーを実体化させ船内に放ったことが海賊たちにレンジャーキー奪還のチャンスとなる。サリーの落としたナイフから始まった逆転への道筋がまたひとつ開けた。

変身前VS変身後の戦闘ではあるけれど、海賊たちにはもう、自分の意思の入らないガワ、海賊版なんかには負けない強さは充分にあるよな、と安心して見ていられた。特にハカセのトリッキー対決は見ていて楽しかったし、鎧の殺陣のキレもさすが。

 

■ナビィの秘密

一方、再び捕らえられたナビィはバスコから、自分に宇宙最大の宝を手に入れるための大きな役割があると聞かされてびっくり。

「なんのエネルギーの供給もなく動き続ける永久機関。宇宙の物理法則を無視したイレギュラーな存在。ナビィちゃん、君が宇宙最大のお宝への<扉>なんだよ」

思えば16話でバスコはジョーたち4人を人質に、ガレオンとレンジャーキーだけでなくナビィも要求していたけど、その理由はあの微妙な「レッツお宝ナビゲート」だけじゃなかったのね(笑)。

バスコは宇宙最大のお宝関連の情報について、地球に着く前のマベやナビィよりかなり有利な立場だったんだなと改めて。

そんで8話ではギャグ扱いだった「俺は電池なんか変えたことねえぞ!」にまで意味があったのは、笑うと同時に感心した。宇宙最大の宝を何にするかを決めたのは49話の内容を考えた時らしいので、ナビィのこの設定がいつ時点で固まったのかは不明だけど、きちんきちんと拾っていくもんだなと。

 

■騙し返す

そこにナビィ捜索を終えた海賊版5体が戻ってきた。そう見せかけて実は、取り戻したレンジャーキーで変身し海賊版に成りすましていたジョーたちが不意打ちでバスコを銃撃し、ナビィを奪還するのが痛快。

やられたらやり返す。倍返しとまではいかないけど、バスコVS海賊は最初から最後まで、こういう知恵比べも総じてハイレベルで楽しませてくれたなと思う。

でもバスコが「生きてるだけでも驚き」と言ったのにはこっちが驚いた(笑)。マベはともかくジョーたちまで、しかもレンジャーキーを回収するために近寄っただろうに、あれで死んだと思ってトドメを刺さなかったのか(汗)。

まあナビィが異変を察知して変な動きをする前に、一刻も早くガレオンに乗り込みたいと気が逸ってたのかもだけど。

 

■ガレオンバスター敗れる

地力で勝るバスコは5人ひとまとめに外壁ぶち破って船外に放り出す。

海賊たちはオールレッドになり、そこにいないマベの思いも背負ってまずは海賊版ゴーカイレッドを袋叩き。レンジャーキーを取り戻す。

続いてガレオンバスターを取り出しバスコに向ける。元々ハカセがこの最終兵器を開発したきっかけは、バスコにボロ負けして対抗出来る武器が欲しかったためで、いよいよ本命との対決。だけど余裕かましたバスコに苦もなく跳ね返されてしまい、ゴーカイジャーはこういうところ容赦ない(涙)。この時のハカセの気持ちを思うと泣けてくる。

ジョーたちはダメージで変身解除させられ、再びレンジャーキーを奪われてしまった。この期に及んで戦力差が悲しいけど、メタな見方するとこの後の一騎討ちに介入させないためもあるからだから仕方ないか。

 

アカレッドだろうが

今度こそ息の根を止めるとバスコが引き金を引こうとした時、銃を撃ちまくりながらマベが登場。船長コートはボロボロだし腕からはまだ血が流れてるしで、万全な体調でも以前はボロ負けしたのに無理だろこれ(汗)・・・と思ったけど、ここまで来たらもう気合なんだろう。

バスコはまたマベの動揺を誘おうと思ったのか、アカレッドが実はこの星出身で、宇宙最大の宝を餌にマベとバスコに集めさせたレンジャーキーをレジェンドたちに無償で返すつもりだったと、つまり先に裏切ったのはアカレッドだと告げる。

「マベちゃんが懐いてた」とか「あの赤いおっさん」とか中々のパワーワードが並んでいてここの語りは味わい深くて好き。

なおアカレッドの真意は劇中でハッキリ語られていないこともあって、彼の成り立ちを考えるとバスコの主張もあながち否定しきれないかもなあ、とも思う。バスコがどこまで本気でそう思ってたのかはわからないし、仮に騙されたと本気で思ったとしても、元々人を信じずマベにも真の姿を隠していた男がどこまでショックを受けたのかはわからないけど。

 

それに対するマベの答えは

「今の俺は赤き海賊団じゃない。この星に宇宙最大のお宝があり、それを手に入れる為の物が揃ってる。それだけで十分だ。俺たちゴーカイジャーの夢を邪魔するもんは、誰であろうとぶっ潰す!てめえだろうが、ザンギャックだろうが、アカレッドだろうがな!」

アカレッドに倣い自分を犠牲にして仲間たちを守ろうとした時のマベは、アカレッドに心酔しお手本として盲従していたけれど、夢の中でアカレッドに「お前は私ではないし、ゴーカイジャーは赤き海賊団ではないだろう?」と嗜められた。

あれから10話を経て今のマベは言われた言葉をすっかり血肉にして、ゴーカイジャーの船長としての自己をすっかり確立していたんだな。

20話でスーパー戦隊の熱烈なファンである自分を乗り越えて、彼等と肩を並べる戦士であろうとした鎧を思い出す。

それまで心酔していた誰かやそんな自分を乗り越えて、独自の一歩を踏み出す成長を見せた姿がここでしっかり描かれていて感慨深い。でも一方で「アカレッドだろうが」には、同時に子供に親離れされてしまったような一抹の寂しさも感じてしまったりで、複雑な心境。

そんなマベの言葉にバスコも表情を改め、これまでどこか、細貝さんによれば「可愛くて、弟みたいな存在」だった「マベちゃん」はもういないと、対等のライバルとして初めて「マーベラス」と呼び変えるのが、劇的でホント痺れる。

 

■お守り

バスコの先制攻撃と同時にジョーが奪い返したレッドのレンジャーキーを投げ、マベがモバイレーツで受ける格好いい変身。5人が見守る前でいよいよ2人の宿命の対決。

激しい立ち回りに途中から互いに武器を飛ばされ相手の武器を拾って、マベが二刀流、バスコが二丁拳銃になるのが凄くゴーカイジャーの等身大戦の集大成って感じ。スピードに勝るバスコに翻弄され劣勢になるも、ならばと彼の足を踏みつけた自分の足ごと串刺しにするのが壮絶(痛)。そんで互いに至近距離からの必殺の一撃。

どちらも変身解除しながら吹っ飛んで倒れ、先に緑の血を流しながらカッと目を開けて起き上がったバスコが怖かった。

「まさか、相討ちになるとはね・・・もっと早く殺っときゃよかったな」という言葉で、あのバスコもとうとう致命傷を負ったんだ・・・と思った時に、心臓を撃たれたはずのマベが起き上がり、バスコは愕然。

マベの胸ポケットに入れていたサリーの首飾りの金属片が、バスコの銃弾を受け止めていた。

人を裏切り切り捨て続けてきたバスコがサリーも騙して「お守り」だと渡した爆弾。

その破片は、人を掴んで離さなかったマベにとってはサリーを最後まで救おうとしたことで文字通り「お守り」になったという因果応報が、鮮やか過ぎる。

 

■最期の笑み

マベとバスコのサリーに対する対照的な向き合い方が土壇場で勝負を分けた。それを悟ったバスコは「なるほどね・・・そういうことか・・・」と笑みを浮かべて自分の負けを認めると、ゆっくり倒れ、消滅する。

 

宇都宮Pは「台本に書いてないのにあそこで笑える芝居が出来たのは役をよくわかってる感じがした」という意味のことを仰っていた。

演じた細貝さん的には「最後にサリーが<もう終わりにしなよ>と教えてくれてバスコも何かに気付きながら散った」みたいな芝居をしたつもりだとのこと。

素敵な解釈と素晴らしい演技で、細貝さんも間違いなく、ゴーカイジャーが引いた当たりの1つだったと思う。

脚本については荒川さんによると、当初バスコ関係は最後まで香村さんに書いて貰う予定がいろんな兼ね合いでこうなったそうで、申し訳なかったと仰っていた。ただ香村さんが書いていたらどうだったか考えることもあるけれど、この前後編の荒川脚本には満足しかない。

バスコはザンギャックが殆ど絡まなかった「宇宙最大のお宝」が目的だったことで、ザンギャック以上にレジェンド回に踏み込めたのも存在感と完成度を高められた一因かもとは思う。

でも、それを差し引いても登場から最後の瞬間まで、ビジュアルもキャラクターも演出も演技も本当に素晴らしい、見事な悪役だった。宇都宮戦隊には魅力的な顔出しの悪役が何人もいるけど、その中も個人的に一番好きかな。ありがとう、バスコ。

 

※今後ゴーカイジャーの記事は週一更新予定です。