キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

海賊戦隊ゴーカイジャー: 40話感想というか覚え書き (長め)

海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。

※思い入れ強すぎて長めです(汗)。

 

■ドモン

鎧からの召喚なしにいきなり30世紀から豪獣ドリルを送り、操縦席に自分のバーチャル映像付きのビデオレターを添える。

34戦隊の大いなる力を集めるチャンスをやるから、豪獣ドリルで過去である2010年10月2日に行き、寝隠神社を守れ。

タイムレンジャー最終回で未来に帰ってから十数年か。今は時間保護局で豪獣ドリルを発進させる権限を持っていることが判明する。

なお、「過去の人間には関わるな」と言う言葉には、当時大勢のネット民から「お前が言うな!」というツッコミが入った記憶(笑)。私もタイムレンジャーは一昨年見たので、心から、本当に心からそう思う。

 

■時系列

豪獣ドリルに予めセットされた日付に飛んでも、たかだか数年前なのであまり景色は変わらない。タイムスリップを実感出来ない海賊たちに、鎧が「スカイツリーが建設中だから過去だ」と言う。

スカイツリーの完成は2012年2月29日。もし放送と劇中の時間軸が一致していれば、この40話が放送された2011年11月には未完成。

だけど、ゴセイジャー本編終了後(2011年2月以降)に起きたレジェンド対戦から更に数年後の物語という設定なので、ゴーカイジャーの物語世界ではとっくに完成しているんだね。ちょっとややこしい。

 

■海賊は見た

寝隠神社に到着するとそこには大量のナナシ(シンケンジャーの戦闘員)とそれに怯える1人の少年。

鎧が少年をガードし、他5人が戦闘体制に入ったところに「集合!」の掛け声でナナシ連中は一斉に撤収。

鎧を除く海賊たちが追いかけた先で目にしたのは、遠くに小さくずらりと並んだゴセイジャーシンケンジャー。後ろで爆発なんかしちゃって、これはゴセイジャーVSシンケンジャーの一場面とすぐわかる。

因みにこのVSは2011年の1月公開だけど撮影されたのは秋なので、2010年10月2日というのは撮影時期と合わせているんだね。

崖の上の名乗りから戦闘のため飛び降りるのを見て「あ、飛びました」と言うアイムにじわじわ来る(笑)。別の作品をこんな風に遠くから俯瞰するのって、なんか不思議な感覚だ。

こうやって別の戦隊から見られてるなんて思いもよらずに戦っている2戦隊の映像は、東映公式によるとPは映画で撮影した時のを使い回せるのではと目論んでいたけど、拘りの竹本監督が全12戦士新録する気満々の予定表を見て気絶しそうになったとか(笑)↓。

https://www.toei.co.jp/tv/go-kai/story/1197367_1843.html

 

■先行登場の落とし込み

元々、ゴーカイジャーはこのゴセイジャーVSシンケンジャーに顔見せで先行登場していた。それは前年のシンケンジャーVSゴーオンジャーに、ゴセイジャーが先行登場したのに続いての劇場版VSでのプロモーション的なお約束。

それを本編に取り込んで正史化してくるなんて、そこまで完成度に拘ってくるのかと、当時滅茶苦茶驚いたし興奮した。

やりたいと言い出したのは宇都宮Pとのこと。

考えてみると、ゴーカイジャーは全ての戦隊本編だけでなく全てのVS作品とも地続きという世界観なので、ゴーカイジャー自身の先行登場を例外にすることは許されない、という意識だったのかもしれない。

そんでこの作品は、レンジャーキーや大いなる力を集めてそれを戦闘に用いている関係上、時系列もあやふやに出来ない。だからレジェンド大戦前の2010年時点で他戦隊に変身出来る理由や、鎧が不在の理由もしっかり整合性を取っていく必要があった、ということか。

2戦隊のレンジャーキーは今は自分たちが持っているから、ここは間違いなく過去だと納得する場面が、大ざっぱな海賊にしては細かいかなとも思ったけど、それを踏まえると納得した。

 

■借りを返す

さっきナナシを召集したのは、シンケンジャーの幹部である骨のシタリ。

これを自分たちが倒せば、大いなる力をくれたゴセイジャーシンケンジャーに借りを返せるのでは?と相談する海賊たち。

「どうせ誰かが倒すんだ」とか「見られなければ問題ありません」とか、正義のヒーローからはまず出て来ない台詞が酷い(笑)。特にアイムは13話といい実は「死人に口なし」という支配者側の論理が信条なのでは(笑)?

 

■違和感なし

劇場版では「映画だから派手に行く」みたいなこと言ってたのを、こちらでは「せっかく過去まで来たんだ。いつもより派手に行くぜ!」に変えてたりはしたけど、

シタリの前に姿を現してからの他のやりとりとか戦闘の構成は基本的には劇場版と同じかな。

改めてシタリの「誰?」「赤ばっか」とかがじわじわ来る(笑)。

オールレッドを披露して「海賊版てやつ」とかが、当時からキャラも言い回しも今と解釈一致しているのはよほどキャラ設定が最初からしっかりしてるんだなと改めて思う。物凄くスムーズに、本編の一部として溶け込ませてしまった。

せっかく本編を生き延びたのに劇場版に続いてこちらでも改めてこっそり、でもしっかり倒されてしまったシタリには合掌(笑)。

 

■鎧の行動原理

鎧が助けた少年は、「自立」と称して家出してきたらしくあんな危険な目に会っても帰らないと言う。

母子家庭で母親はフリーのジャーナリスト。じっくり丁寧に仕事するために取材対象が変わるたびに引っ越しするから、転校を繰り返して友達が出来ないことに我慢できなくなったと。

フリーだと実績積み重ねて走り続けないと干上がるから、母子家庭なら尚更生活のためにも頑張らないといけないのはわかるけど、確かにこれは可哀想。母親が誰かわかってみると、あの人猪突猛進で安定とか考えない人だからな・・・と納得はするけど(汗)。

だけど話を聞いた鎧は、自分も親の都合で転校を繰り返したけど、そのたびにあちこちにたくさん友達が出来たという。環境が変わるたびにうざがられても頑張っていろんな子にいっぱい話しかけるんだと。

 

初登場時、決してフレンドリーとは言えない海賊たちに思い切り邪険にされても、めげずにぐいぐい仲間入りを訴えてきた鋼のメンタルのルーツはこれか!と物凄い説得力だった(笑)。

さらにその行動原理は

「確かに、自分じゃどうしようも出来ないこともある。それでも自分に出来ることを探してやってみれば、自分の明日ぐらい変えられる。俺はそう思ってるけどねー」

という、タイムレンジャー本編2話でタイムレッド浅見竜也が言った台詞そのもの。

鎧を劇場版の不在の整合性をとるためだけに単独にしたのではなく、むしろ鎧のメイン回として掘り下げ、キャラ形成のルーツをタイムレンジャーのメインテーマにドンピシャで重ねてきた。

香村さんはヒーローの行動原理を整合性の取れた形で掘り下げるのが滅茶苦茶上手な人だなと思っている。その中でも今回の鎧は、兄妹弟子である荒川さんとすり合わせしてのこととは思うけど、特に印象が強い。一昨年に配信を見た後だと、改めて脱帽。

 

■真犯人登場

神社も守れたし、少年とも和やかムードになって空気が緩みかけたところに、ゴセイジャー本編に登場したマトロイド・ザンKTのプロトタイプが神社破壊を宣言。神社が発するエネルギーを探知した幹部メタルアリスからの指示を受けてのことだった。

鎧が変身して応戦するのと同時に、久しぶりにゴーカイシルバーのテーマ曲。

「本気なら、夢は叶うことを、大声で叫びたい気分さ」

のフレーズが好きなんだけど、彼の<本気>のレベルが、「出来ることを探して自分の明日くらい変える」という子供時代の逆境に培われた鋼のメンタルを基盤に、武術も料理も目一杯頑張って人並み以上に習得し、ヒーロー気質も維持してそのために1回死にかけた、というものだと思うと、かなりハードル高いなと(汗)。

 

そこに5人が合流。目の前にいるのが神社破壊の真犯人だと知らされて

「では・・・先程のイカさんと、雑魚さん達は?」「まあいい」「俺たちは真犯人を倒すまでだ」

が本当に酷くてこの連中らしくて大好き。特に口調だけは丁寧なアイム(笑)。

タイムレンジャーに変身して、相手の攻撃を鎧だけ直撃、他は全員マトリックス回避するのも本編の初変身オマージュだな。

 

■借りを返したつもりが

倒されたザンKTをメタルアリスが巨大化して、豪獣神が応戦。

ガレオンは現代に置いて来たから5人が戦闘に参加出来ないのは仕方ないけど、だからってもう少し真剣に見守ってもいいと思うの。特に腕立て伏せに勤しんでいたジョー(笑)。まあ鎧への信頼あってのことだろうけど。

正体不明の闖入者に肝いりのロボを破壊されて戸惑うメタルアリスは、対ゴセイジャーに向けて更なる強化を決意する。

海賊たちは借りを返したつもりで、実は知らぬ間にこの後のゴセイジャーの苦戦を招いてしまったことになるのが、皮肉(笑)。

 

■未来という名前

少年の母親が迎えに来て、息子を助けてくれた海賊たちに深々と頭を下げる。顔を上げると、ドモンの恋人で最終回に彼の子供を出産して育てていた森山ホナミ。少年はドモンの息子だった。だけどドモンはそのことを知らないまま未来に帰ってしまっている。

少年の名前は「森山未来」。

いかにも<未来戦隊タイムレンジャー>という物語の中で誕生した子供の名前って感じ。偶然、実在する俳優さんとほぼ同姓同名になってしまったけど(笑)。

タイムレンジャー本編終盤、ドモンが自分のいた30世紀を「未来」と呼んだことにホナミちゃんが、喜ぶ一方で「軸足を20世紀に移さずちゃんと30世紀を守れ」と嗜めたのが印象的だった。

彼女とって「未来」という言葉は、愛する人がそこで生きている絶対に届かない場所であると同時に、彼が軸足を変えかけるほど自分を大事に思ってくれた証でもある、特別な大切な言葉だったんだろうな。

そんで香村さんはそこをすくい取って子供に名付けたのかもと思う。

 

■神社の秘密

現代に戻った海賊たちはお留守番に置いていったナビィから、どの戦隊の力を貰ったのか?と聞かれて、今回の時間旅行では現時点で何も手に入れていないことに気づき大ショック(笑)。ドモンを嘘つき呼ばわりし鎧にも八つ当たりと荒れ狂うメンバーの中で、無言ながらポニーテールを揺らして超高速腹筋運動のジョーがおいしくて、ホントこの筋トレのキャラ付けは無口で崩しも少ない彼を面白くしてくれるよなあと、改めて感心する。

そんなわちゃわちゃしたガレオンが飛んでいく夜空の下、件の神社の祠に納められた壺が怪しい光を放っていて、何か秘密があることを窺わせる。

だからドモンは決して海賊たちにただ働きさせたわけではないんだろうとこの時点で予測はつくけど、それが何なのかはまた別の話。

 

■ドモンの涙

鎧は神社を守った証拠として皆で写真を撮っていた。そこに一緒に映っていたホナミちゃん親子を認め、ドモンは(恐らく子供の推定年齢と別れてからの年月から)少年が自分の息子だと知り「何だよ、俺に似てハンサムじゃねえか」と涙をこぼす。

 

タイムレンジャー本編で、未来人のドモンが20世紀で恋人との間に子供を設けていたことを知らなければ、ここは唐突に感じる人もいるかもしれない。東映公式も、「1つだけ反則を犯した」と言っているのはこのあたりのことをさしているのかなと思う。

でも私の場合、リアルタイムで見ていた時はタイムレンジャー未見だったからドモンの涙の意味をどこまで理解したか、という点では不足があったとしても、演じる和田さんの演技には思わずうるっと来た。

 

■ホナミちゃんの覚悟

ホナミちゃんは「ちゃんと30世紀を守れ」と言う直前に、幼児を見ながら「私は大丈夫だから」と笑ってた。もうこの時には自分の身に起こったことを承知し、それを不安や負担ではなく喜びや支えと受け止めて1人で茨の道を行くと決め、最終回の極限状態で再会した時も告げずに送り出したのではと思う。

そんな支えが、ドモンの計らいがないまま、つまりゴーカイジャーがあの神社に来なかった時間軸ではどうなっていたのか・・・と考えると恐ろしい。

なお今回のプロットには当初息子のことまではなかったけれど、宇都宮Pからホナミちゃんを出すとの提案があり、その中で息子の話に決着をつけたくなったとのこと。

スタッフさんたちはもしかして、何も知らないまま恋人1人に苦労させてしまったドモンに、ゴーカイジャーの未来だけでなく、何も知らないまま母子の未来も救わせたのかもと思ったりもする。

 

私がタイムレンジャーを見たのは一昨年。ゴーカイジャーを先に見ていたからドモンとホナミちゃんの結末はネタバレ済みだった。だけどタイムレンジャーに限ってはそれで良かったと思っている。

タイムレンジャーを配信で先に見ていたら、ホナミちゃんが最終回でドモンの子供を1人で育てているのを見て、そりゃあ驚いたと思う。

だけど、ホナミちゃんが幼い女の子を見て微笑み、「私なら大丈夫」と言った時の覚悟に気付くことはなく、最終回まで見終わってからその場面を見返そうにも配信は終わっていたはずだから。

 

■ダブル?トリプル?いや4つ

「未来は過去に」というサブタイトルの<未来>には、

ゴーカイジャーが宇宙最大のお宝を掴む未来

・神社が破壊を免れたことで守られた<何か>の未来

・もしかしたらその巻き添えで失われていたかもしれない少年の未来

・そしてドモンにとっては過去に生まれていた息子の名前

と、ダブルミーニングどころか4つの意味が込められているんだなと思う。さりげないようで味わい深くて、しみじみ好きなサブタイトル。

 

■複数の戦隊パズル

東映公式は、タイムレンジャーについて「手を出すのは迷った作品」と言っている。こういう言い方をしたのは、カーレンジャージェットマンに続いて3戦隊目。

だけど、ゴセイジャーVSシンケンジャーの先行登場を矛盾なく本編に落とし込むにはタイムレンジャーが最適だったんだろうな。

そんでカーレンジャージェットマンは迂闊に触ると火傷するからと本編のメインライターを起用したのに対し、今回は香村さんに任せたのは信頼の大きさだろうし、香村さんも当時握手会に行くほどのファンでもあり、十二分に応えたなと思う。

またタイムレンジャーだけでなく、シンケンジャーゴセイジャーの要素も矛盾なく落とし込み、更にはもう1つ、現時点では謎だけど大いなる力を全部集めるには必要な要素の伏線も、とパズルを解くように組み合わせ、綺麗に30分にまとめてみせた。でもメインはしっかりタイムレンジャーのテーマを盛り込み後日談要素も、という手腕はつくづくお見事過ぎる。