キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

海賊戦隊ゴーカイジャー: 38話感想というか覚え書き

海賊戦隊ゴーカイジャー公式完全読本「豪快演義」から一部参考にしてます。

 

■守られた側の気持ち

前回ラストでマベに問答無用で脱出ボタンを押された5人。

ルカ、ハカセ、アイムは同じ場所に落ち、別の場所に落ちた鎧とすぐに合流してガレオンを目指す。

鎧は「あれがマーベラスさんにとっての<守る>って意味だったんでしょうか?」と納得いかない。

「俺は・・・マーベラスさん一人に背負ってほしくなかったです。仲間なら、俺たちを守るんじゃなくて最後まで一緒に戦いたかったです!」

他のメンバーは、アカレッドに倣ったのだろうと一見冷静に推測し、マベらしいと理解は示す。

マベが自分の身よりも仲間の命を大事に思ってくれた気持ちは尊い。また自分がマベの立場でも同じことをしないとは言い切れない。そんな気持ちもあるんだろうか?

でもやっぱり内心は割り切れず、鎧の言葉には共感せざるを得ない。そんな中でルカの

マーベラスに文句言わなきゃ」

と、今は生死不明のマーベラスに文句を言える未来がこの先にある、いやそんな未来を自分たちで掴み取るんだよ、と前進を促す言い回しが、ルカ姐さんらしくて粋。

 

■決着

マーベラスの野郎!」と鎧以上に怒りを露わにしてやはりガレオンに向かうジョー。この姿を見られれば鎧も「納得いかないのは俺だけ?」とモヤモヤせずに済んだろうな。

海賊の死体確認と残党狩りを命じられたバリゾーグと再会し、今度こそ決着を!と再び激しく激突する。

仲間に庇われてしまった負い目と怒りを抱えて押され気味に戦いながら、ジョーはバリゾーグに「お前が忠義を尽くすワルズ・ギルはお前を命を張って守ってくれるのか?」と尋ねる。

「私をワルズ・ギル様が守ることはあり得ん」主従&職務の範囲の関係であると感情を一切挟まない機械的な回答に、ジョーは今さらのように自分たちの関係との違いを思い知る。

片方がもう片方に負担や犠牲を押し付けたままの一方的な関係で終わるのは嫌だ。自分たちは仲間であり、もっと対等な関係のはず。

「俺は絶対にここで倒れるわけにはいかない!仲間のために命を張った大馬鹿野郎に借りを返す為にもな!」

またも繰り出されたシドの必殺技を変身解除しながらも跳ね返し、自分の技を喰らってダメージを受けたバリゾーグに生身の、ジョーの姿でトドメを刺す。

バリゾーグ視点の画面が乱れてブラックアウトという演出の無情さが、バリゾーグという機械の最期に相応しいけど胸に来る。

 

やり遂げたジョーの前に、哀愁を誘うBGMと共にシド先輩の幻。

「俺、あなたの魂だけでも救えましたか?」という後輩の問いかけにしっかり頷き、更にジョーの成長を喜ぶ言葉をかけ、今の仲間との未来に進めと指差す。

走り出すジョーの背中を見送るその姿が消えて、バリゾーグの骸だけが残されるラストカットが、儚くて切ない。

 

■ジョー担当

渡辺監督は、夏映画でローテーションを抜けてた時期もありここまでで3巡目だけど、初メイン回の4話、ライブマン回、今回と各ローテーション全てでジョー編を担当している。だから過去が判明したシンケン前後編こそ担当してないものの、ジョーと言えば渡辺監督、というイメージが強いかな。

今回は内容が超盛り沢山の限られた尺の中で、ライブマン回で揺り戻したジョーの物語の結末を情感豊かにしっかり描き切って下さったのは有難い。

 

アカレッドからの第一歩

地面に叩きつけられたガレオンの中で意識を失ったマベは、夢?の中でアカレッドと再会する。

あの時のアカレッドのように仲間を守れて良かったというマベに、アカレッドは疑問を呈する。

「お前は私はではないし、ゴーカイジャーは赤き海賊団ではないだろう?お前が選んだ仲間たちは本当にお前に守って欲しかったのか?お前が本当に守るべきものは、夢を掴む為に集まった、掛け替えのない仲間たちとの絆じゃないのか?」

 

36話ではマッハルコンにかけたマベの言葉がアカレッドにかけられた言葉と重なって見えて、船長としてアカレッドに並んだようにも見えた。

だけどそれは、マベが意識してか無意識かはともかく、船長のお手本としてアカレッドを倣っていた面もあったのかもと思えてくる。もしかしたら、これまでもずっとそうやってお手本に沿った船長を演じていた部分もあったのかな?

でもアカレッドの言葉に背中を押されてマベはこの時、誰かの真似ではなく自分だけの道なき道を行くゴーカイジャーの船長として、本当に自分の足で第一歩を踏み出したのかもしれない。

 

ジョーとシド先輩が黒い背景のイメージ空間だったのに対し、マベとアカレッドは白い幻影空間、という対比。

この2つの関係を重ねて、それぞれ(今は亡き)先輩が後輩の仲間との未来に向けて背中を押し、押された後輩が先輩の手を離れて夢のために前進する。

1話の中で両方詰め込むのは勿体ないような濃さで、もっとゆっくり別々に見たかったような、いやでも一緒にまとめたからこそ物語の節目として凄くしっかり効いてしまっていて、尊く思えるような。

 

なお、アカレッドを出したのも下山さんの発案。1話で両方やるのは本当はご自身のセオリーには反したそうだけど、ゴーカイジャー最後の担当回となるこの盛り沢山重要回をキッチリまとめ上げて、有終の美を飾られたなと思う。

 

■トリ、可愛い

目覚めたマベの胸にすがり羽でバタバタ叩いて「おいらを置いて死んだら承知しないからなあ!」

今ザンギャックが襲ってきたらどうする?と聞かれ「決まってるだろ?二人で戦うよ~。な~んてね、おいらだけ飛んで逃げちゃうかな」

可愛い(汗)。健気な良い子成分と、それがマベの負担にならないよう悪い子成分を混ぜて冗談ぽくふわっと投げつける匙加減が絶妙だと思う。

声と演技の可愛らしさも相乗効果を上げていて、こんな時もマベの気持ちを明るくし、再起に向けて勢い付かせることの出来るナビィは本当に優秀なサポート役だな。

何気にマベは、ナビィとだけは最後まで一緒にこの船と運命を共にしようと思ってたんだろうか?まあ逃がす手段がなかっただけかもだけど、考えてみたら他の誰よりもマベとの付き合いが長いのはナビィなんだよなと改めて。

 

■守りたい存在だった

海賊を排除し、地球侵略を邪魔する者はもういない。ダマラスを見返し、父皇帝にも認められ、これからは全て上手く行くはずだった殿下。

勝利の祝賀会の最中にもたらされた、唯一の存在であるバリゾーグの死の知らせに、天国から地獄へ急転直下。身も蓋もなく泣き叫んで海賊への復讐を誓う殿下の耳に、再びの出撃を制止するダマラスの声はもう届かない。

バリゾーグは「私をワルズ・ギル様が守ることはあり得ん」と言ったけど、この有様を見ると違うんだろな。何をすればちゃんと守ることになるかまでは考えたことなかったろうけど、何よりも失いたくない存在だったのは確か。

結局殿下は、ただ1人信頼していたバリゾーグからも、本当には理解しては貰えていなかった。そんで仮にバリゾーグが殿下のこんな気持ちを知ったとしても、そのことを嬉しく感じたり出来る心は持っていなかったんだろうな。やっぱり殿下は最期まで1人だった。

 

■夢を掴む力

「鎧、俺が間違っていたみたいだ。お前らやお前らの夢は俺に守られるほどヤワじゃねえもんな」

合流して詫びるマベに、皆にっこり。そんでまたしてもルカの「じゃあ文句は言わないであげるか」が素敵。

改めて絆を深めた海賊たちはイケイケで、主題歌に乗ってドゴーミンたちも一掃。

そこに殿下のグレートワルズ再来襲。マジゴーカイオーも風雷丸も退けられ、やっぱり実力差は埋まらない。

だけど再び召喚されたマッハルコンともども、海賊たちはさっき完敗した相手にも今度は怯まない。前回はわりと早々に「これまでか」と諦め仲間を逃がしたマベも、高らかに叫ぶ。

「夢をこの手で掴むまで、俺たちは突き進むだけだ!」

するとゴーカイジャーのレンジャーキーが光り、差し込むとゴーカイオーと豪獣神の胸から放たれた光でカンゼンソウルが誕生。

「これが俺たちの大いなる力、夢を掴む力か!」

 

予告を見た時に、合体の最終形態が来るのは分かってたし、前回冒頭でマッハルコンから前振りもされてはいたけど、「ゴーカイジャーにも大いなる力が」というのは、当時本当に意表を突かれた。

でも同時に、この物語においてはそれもスーパー戦隊になるための必要条件で通過儀礼だったんだな、と納得せざるを得なくて、「やられた!」となぜか思った記憶(笑)。

 

■カンゼンゴーカイオー

カンゼンソウルをマッハルコンにセットすると、ゴーカイオー、豪獣神、マッハルコンが合体したカンゼンゴーカイオーが完成。

大きい。わかっちゃいたけどグレートワルズよりハッキリと大きくて、「俺は超える!ダマラスも父上も!見ていろバリゾーグ」という言葉ももはや殿下の運命の濃厚フラグにしか思えないのが悲しい(涙)。

さっきまでの劣勢が嘘みたいにカンゼンゴーカイオーはグレートワルズを押しまくり、攻撃をたたみかけてフルボッコ。必殺技ゴーカイカンゼンバーストで

「俺はこのまま終わってしまうのか~」の断末魔と共にグレートワルズは大爆発(涙)。

殿下の戦死に激震が走るギガントホース。ダマラスが思わず、もう主が戻ることのない司令官の椅子を見やるのが切ない。

 

■出来過ぎマイルストーン

スーパー戦隊のシリーズではわりと当たり前に使われてきた「守る」という言葉をテーマに、元敗者であるマベの視点でその意味を問い直し、マベとジョーがそれぞれの大事な存在と向き合い背中を押され、本当に過去を乗り越えて今の仲間たちとの夢に踏み出し、その結束によって強まった「夢を掴む力」が、ゴーカイジャーの大いなる力となり、またスーパー戦隊に近づく大きな一歩になる。

1年間の縦軸のマイルストーンとして「とうとうここまで来たんだ」みたいな感慨も当時凄かったし、その象徴になった最終合体が現時点での敵ボスを倒すのは、ちょっと完成度高すぎて狡いとすら思ったりする(笑)。

 

■さよなら殿下

グレートワルズの残骸からダマラスが殿下の遺体を抱きかかえて出て来た。ボロボロに焼け焦げて五体満足ですらなさそうな最期の姿はこういう子供番組にしてはショッキングな無残さで、「愉快な殿下のことだからもしや?」と無理やり残しておいた儚い希望は木っ端微塵(涙)。

グレートワルズを贈られなかったらまだ生きていられたと思うと父皇帝の愛が仇になってしまったのが皮肉。

「私が付いていながら」という、殿下の亡骸以外誰も聞いていないダマラスの言葉は偽りない本心のはずで、その造形からマスクも泣いてるように見える。その顔が海賊の船に向けられると今度は怒りと復讐心を強く感じさせて不気味な迫力。

殿下・・・海賊が強大な帝国に潰れされずにここまで戦えてこれたのはぶっちやけ殿下が無能だったからで(ごめん)、だけどそれをコミカルにチャーミングに見せて、造形の効果もあってザンギャックという敵組織に華やぎと魅力を付加してくれた。

38話でというのはまだ早いようにも思えるし、バリゾーグと一緒というのも駆け足な印象だけど、全編見た後だとやっぱりここでの退場がベストだったんだろうなと思う。ありがとうさよなら殿下(涙)。