ルパパト: 圭一郎達へのビークル送付がノエルの意志なら~グッティとノエルの心境を再考察~
日本支部にビークルが送られたのは、本当にノエルの言う通り「痛恨のミステイク」なのか。
私は本編放送中からこの真偽に凄く拘っていて、過去の記事でも
ルパパト: ノエルは警察のために何をしたのか
https://kiuix.hatenablog.com/entry/2019/04/06/162842
等で考察した通り、あれはノエルの本心からの行為だったと考えている。
これまではその事自体に目が行っていたんだけど、もしノエルの本心だったら、という前提で見返すと、ノエルとグッティについてこれまでと違う見方が出来る部分があるかなと思うので、今回はそれに触れてみたい。
■18話のブランコに乗ってるグッティ
警察への協力を魁利に責められてジュレを飛び出し、ジェット噴射しながらしょんぼりブランコを漕ぐグッティ。
リアルタイムで見てた時は単に、アルセーヌとの約束があるのにグッと来たら警察を助けてしまう自分の矛盾に悩んでるんだと思った。実際、劇中で魁利も、グッティをフォローしたコグレも、そういう認識という描写だったと思う。
でももし、グッティが日本に送られたのは2話後に登場するノエルの意志だったら、って考えると
「ホントにこれでいいんだよな、ノエルぅ?」
っていう、不安、心細さ、迷いにも見えてきたんだよね。
戦闘中にぶらっと参上して快盗と警察どっちにつくか気ままに選ぶのも、実は演技も入ってたかも。
だってノエルが来てからはずっと、彼が望む方を迷う事なく素直に助けてたから。
そう言えば以前、50話の時にこんな場面を妄想した事がある。
「え~おいらこんな窮屈なケースの中でじっとしてるのかノエル?」
「日本に着くまで我慢してくれるかいグッドストライカー?」
「仕方ないなあ」
「日本では快盗だけでなく警察も助けて欲しいんだ」
「何で?コレクション取り戻す快盗の手伝いするんじゃないのか?」
「僕達はコレクションを集めて大事な人を取り戻せたとしても、ギャングラーがいる限りまた同じような事が起こる。大事な人を失う悲劇が。だから倒して平和な未来を作らなきゃいけないんだ。でも、快盗やコグレさんにはVSビークルは手違いで国際警察に渡った事にする。2人だけの秘密だ」
「分かったおいらに任せろ。でもどっちに味方するかはおいらの気分で、グッと来た方に決めるからな?」
「うん、それでいいよ」
「でもさあギャングラーの中にも強い奴はいるんだろ?アルセーヌがやられたんだぞ」
「そうだね」
「勝てなかったら死んじゃうぞ」
「だから快盗と警察で一緒に力を合わせるんだ
そのために僕も日本に行って快盗にも警察にもなる。僕が仲立ちして二つを繋ぐんだ」
「そんな事出来るのか?」
「出来る出来ないじゃない、やらなければいけないんだ」
「どっちにも仲良くして貰えないんじゃないか?」
「そうだね。でも大事な人も平和も両方なんて本当に欲張りなんだと思う。この上僕も仲良くして欲しいなんて流石に虫が良すぎるよ」
「大丈夫かあ?ノエルは寂しがりなのに」
「君がいるからね」
「おう、おいらはいつだってノエルの味方さ」
「メルシー」
グッティやビークルを日本に送ったのがノエルの本心からなら、彼と彼に梱包されるのを許したグッティは、例えばこんな風に両戦隊を助けようと2人だけで誓い合ったんじゃないかな?って。
だけどいざ一人だけ先に来たグッティには、時には快盗から「何してくれてんの」「今すぐこの場で解体してやろうか」みたいに警察への協力を責められたり「後でヤスリで磨いてやる」「疲れてんだ。あっち行け」みたいに邪険にされたり、警察に協力したらしたで生き別れだったシザーを攻撃されたりと、上手くいかない事も多く不安や辛さも積み重なってたんじゃないかな。
それもあって余計にノエルの合流が嬉しかったかもって、再会した時のちょっと泣きそうなくらいの懐きっぷりを見て思う。
そういう視点だと、グッティがコグレを恐れてた理由はもしかして、コグレに捕まったり監視されたりする事で、快盗だけでなく警察も助けるというノエルとの約束が果たせなくなるかもしれないから?って気もする。
コグレはグッティが快盗を手伝う事には異存がなかったみたいで、8話では正体がバレそうになった快盗のピンチを救う為に間接的に連携プレーを見せているし。
ただ、グッティはノエルに言われたからだけじゃなくて、本心から警察も助けたかったんじゃないかとは思うけど。
だって、15話で毒に倒れ重症の圭一郎が病院を抜け出して仲間の元にたどり着くまでのたぶん相当長い距離を、ずっと彼の杖になって支え続けていたんだろうから。
■ノエルの国際警察への視線
日本支部にビークルを託したのがノエルの意志だったのなら、それを前提にフランス本部時代からの彼の国際警察に対する見方も、ある程度考察してみたい。
23話で、壊れたビークルを修理するから自分に渡せというノエルに対し、透真は「願いのかかった大事な物を他人には渡せない」と最初は拒んだ。その気持ちはノエルにはたぶん痛いほど分かったんじゃないかな。自分にはいつか来た道で、痛い目にもあったから。
願いのかかった大事なコレクションを、もう一つの願いの為とは言え面識もない戦力部隊に3回託そうとして2回敵に奪われたことになるんだよね。
クレーンがどのタイミングで奪われたかは不明だけど、ノエルには相当なショックだったはず。
それでもノエルは、ならばと今度は管理官に直接ヘリとバイクを手渡した。ところがそれもギャングラーと快盗に奪われた。
人間が使えるように改造したら、人間ではない自分には使えなくなる。
それでも平和のためにと改造し、断腸の思いで見ず知らずの他人に託した大事な大事なコレクションを2度も奪われたら、私ならもうこれ以上、内通者の暗躍を許す警察にビークルは渡せないと思うかもしれない。
また社会的信用の為に、どんなに苦戦していても快盗との共闘は一切考えず、その癖ノエルの装備開発以外に有効な対策もないままの国際警察上層部は、ノエルには、平和や戦力部隊の隊員達の命より世間体を重視する組織に見えて苛立っていた可能性もあると思う。
捜査に行き詰まっていた料理講師失踪事件を圭一郎達に相談する事無く快盗と協力して解決して見せたのは、そんな警察の限界を突き付けたい気持ちもあるのでは?と思ったりして。
快盗にスカウトされた一般人も心配だけどそんな警察の事も心配だし、快盗と警察でビークルを奪い合ったなんて知ったら、「何やってんの」って焦ったかもね。争っている場合じゃない。力を合わせなければステイタスゴールドのような強敵を従えドグラニオがボスに君臨するギャングラーに、いずれ全滅させられかねないのに。
だから自分が日本に行き快盗と警察の仲立ちをして、警察にはビークルを渡さない代わりに快盗を強化して時には手助けさせられないかって思ったかもしれない。
登場して暫くのノエルには「遅れないでよ」みたいな警察の実力への不信がチラ見えしたりするけど、根底にそんな失望や苛立ちの積み重ねがあるとすれば、個人的には納得だな。
そしてそんなノエルが、終盤は警察を大事な仲間と思い命をかけて守り、死を覚悟した時には圭一郎達に大事なコレクションを託すまでになったって考えると、より感慨深い物語にも思えてくる。
■最後はやっぱりノエルのスピンオフ希望
もちろん、本編で警察を強化出来なかったのはテコ入れという大人の事情によるものだけど、物語の中ではノエルの快盗贔屓のせいとして見なされやすく不満の矛先が向かいやすくなってしまった、という事は以前も書いた。
でも、フランス本部時代は平和も望み警察が戦えるようグッティやビークルを日本支部に送りながら、日本支部に来てからはそれをしなかった理由は、例えばこんな形である程度ノエルの事情も理解して貰えるように物語に落とし込む事は出来なかったのかな?と、彼の名誉の為に思う。あと以前も書いたようにコグレや快盗達の手前大っぴらに警察を強化出来ないってのもあるしね。
そして、本編はもう終わってしまったけれど、快盗贔屓と見る人が今でもいるノエルの、「警察への貢献や、警察に属し協力した事で感じた可能性の高い失望や苛立ちといった心の動き」を、今からでもスピンオフできちんと見せて貰いたいとやっぱり思わずにいられない。
それはパトレンジャー誕生の背景という、ルパパトの物語を構成する凄く重要なピースでもあるはずだから。
2019/5/18追記
「(内通者の暗躍を許す国際警察に大事なコレクションを提供して2度も奪われるなんて)痛恨のミステイクだ」
って意味ならノエルは嘘をついてないことになるし、文字通り「痛」でも「恨」でもあったかもしれない。
国際警察にとってVSビークルは平和を守るための大事な道具だけど、怪人撃破や人々を守る為なら失っても良い物で、警察の優先順位としてそれはとても正しいけれど、恐らく断腸の思いで提供したノエルにとっては悲しい事でもあると思う。
そんなノエルの思いは彼がルパン家の者だと知らない限り警察には伝わらないままで、私はそれが歯痒い。