キウイXのつぶやき

今はスーパー戦隊関連、特にルパパト関連の呟きその他をまとめたり考察したりしてます。ルパパトのノエルのスピンオフについて二言目にはしつこく要望してます。

ルパパト: 構造や売上が ノエルと警察、それから結末に与えた影響について(長文1)

ルパパトは快盗の物語については綺麗に終わったと思う反面、警察とノエルについてはかなり不完全燃焼、とは前回の記事で書いた。

ここでは、なぜそうなったのか、ルパパトの抱えていた構造的な問題と売上不振による影響を特にノエルについて考えてみたい。

つまりどうしても、特にノエルの扱いについてネガティブな話になるので、そういうのが嫌な人は読まない方が良いかと。

 

■助けられている事から目を逸らす

ルパパトはノエル登場以前から、基本的な構造として、警察は快盗を捕まえたら終わってしまうので逃げられ続けなくてはならないだけでなく、快盗も怪人を倒さなければならない。

それは結果的に、警察はしばしば快盗に助けられている、警察だけでは市民を守れなかった案件がたくさんあった事にもなる。

2戦隊はこの時点で元々イーブンな見せ方は出来ない。だから制作側は序盤から圭一郞達を快盗よりもキャラの人間性を豊かに描いていく等、見せ方にいろいろ気を付けていたとは思うけど、この「警察が時には意図的にしろ結果的にしろ快盗に助けられている」「自分達だけでは平和を守りきれない」という事については、はっきりと共闘しVSXの最強ロボが登場した時以外は殆ど問題視されていない。咲也が「共闘した方が頼もしいのでは?」と問題提起した時もヒルトップとジムが速攻で世間の信用を理由に否定し、共闘はあくまで現場の緊急避難的扱いに留めている。そして普段はその事に対する悩みも葛藤も見せない。見せない事で視聴者にも極力意識させないように仕向けていたのでは?と思ったりする。

そして警察にはもう一つ、直視するとなかなか厄介な問題がある。それは、そもそも警察は誰のお陰で戦えているのか?という事だったと思う。

 

■物語の根幹にいすぎた追加戦士

ルパンレンジャー結成を画策したのがルパン家の執事コグレ。パトレンジャーの始動を可能にしたのが開発者として国際警察に潜り込んでいたルパン家のエンジニアのノエル。つまり対立する2戦隊はどちらもルパン家の者が作った事になる。

これは2戦隊のコアメカが共通のグッティで共闘の一つのゴールが2戦隊が合体するVSXのため、共通の技術から生まれた物とする必要もあったからと思う。コアメカを共通にして両ロボが並び立たないようにしたのは戦隊ロボ同士で戦い街に被害が出る等といった事態を避けるためだろうか。アニダラを踏み潰す等という展開を敢えて取り入れるのなら尚更。

 

圭一郞達に装備が渡った事について、ノエルは「痛恨のミステイク」と言った。

 でもノエルが頼む以外の誰にグッティを拘束梱包なんて困難な事が出来るだろう?他の場所、例えば快盗を手伝わせたいだけならグッティが自分で飛んで行けば良い。グッティにもアルセーヌのためにルパンコレクションを集めたいという快盗と同じ目的があるんだし。

そしてノエルは何度も快盗と警察の共闘が必要と説いている。なのに片方の警察が戦える装備を持たない状態でいる事を望むだろうか。だから恐らく快盗やコグレには嘘をついていて、送ったのは平和を望むノエルの本心。そして共闘も、現実の戦力的にはノエルが正しい。共闘できなければ両戦隊とも途中で全滅していたはず。

 

でもこれって、見せ方によっては全てがノエルの掌の上だった、となりかねない構造なんだよね。そうでなくとも両方に変身出来るだけで反則級に狡いのに。特に警察は、対立する快盗を雇っているルパン家出身のノエルのお陰で戦えている事になる。

だからスタッフは警察の時とは逆にノエルの見せ方が突出しないよう気を付けていたと思う。

ノエルも決して万能ではなく、失敗もするししばしば不協和音もピンチも招く。ノエルがメインの話でも、スカッとする活躍は意外なほど少ない。特にデストラ決戦やスパイ疑惑、ゴーシュ前後編はどれもノエルが起点となってピンチやトラブルになるけれど、それを払拭出来るほどの活躍はしていない。

また、本当に肝心な時には外から見ている事も少なくない。顕著だったのはザミーゴとドグラニオとのそれぞれの決戦。

ザミーゴ戦ではコレクション奪取と金庫封じの秘策を与える重要な役割を果たすけど、ドグラニオの金庫の中には行けず、2戦隊の武器交換という共闘の象徴的なシーンでは、その発端はノエルが作ったものの、後ろに転がっていた。

ドグラニオ戦ではなかなか立ち上がれず、参戦した後は金庫の中の異変を彼だけが持つコレクション関連の知識で状況判断し、一瞬スーパーパトレンXになり、圭一郞にサイレンを渡した後は一緒に攻撃する事もつかさや咲也と一緒に圭一郞を支える事もなく画面から消えていた。

ルパン家出身という知識面や謎に関するアドバンテージや両方に参加出来るという点でどうしても他メンバーより見せ方でリードしやすい分、他で容赦なく引き算し、極力華々しく見せず貢献にはスポットを当てない、という足し引きを終始細かく繰り返していたのがこの人の見せ方だったのではと思う。

やっぱり追加戦士としては物語の根幹でいすぎたとは感じるよ。迂闊にスポットを当てると光が強すぎて他を圧倒し、主人公であるダブルレッドとのバランスさえ崩れてしまう。

それでも当初は勝算があったんだろうと思う。

 

ビークルをパトレンに渡せない

ところがここで、大問題が起こる。売上不振、特にパトレンの玩具が売れなかったために、いわゆるテコ入れが行われ、スプラッシュ以降のトリガーマシンつまりパトレンの追加ビークルを全てルパン側に与えるという方針転換が行われた事。

 これにより、販促はどうしてもルパンが中心になり、パトレンは戦闘面での活躍を大幅に制限される事になってしまった。

 

これがノエルというキャラを描く時に大きく影響を与える事になったと思わずにいられない。ノエルは快盗だったり警察だったりする追加戦士だけれど、元々はエンジニア。恐らく当初は日本に来てからも快盗と警察双方にビークルを提供していく予定だったのではと思う。

ルパン家の者でありながら警察にもビークルを提供し続けるなら、それだけで警察ポイントは稼げる上に快盗にとっては裏切りにもなり軋轢も生まれ、まさにどちらでもありながらどちらにもなりきれない姿を描ける。それでいてどちらの戦隊にも貢献している事も描ける。

でも、これが封じられてしまった。その結果、快盗にはマジックを追加ビークルとして開発提供しているのに、パトレンには来日以降一度も提供しないままだった。早めのクリスマス販促回でもあったデストラ戦が終わってやっと、圭一郞にサイレンを貸してサイレンパトカイザーを出せたくらい。

またマジック以降は快盗にもビークルの開発提供を行っていない。次の追加武装であるビクトリーとサイレンは、宇宙から飛んできたコレクションで、その争奪戦を描いた38話は私にはいろいろと納得の行かない展開だったのは以前の記事で書いた。

販促の事情で使うのが快盗に限られる以上は、これ以上快盗にばかり渡してさらに快盗贔屓に見られる事も、警察に渡すつもりの物を快盗が奪って快盗を悪者にする事も避けたかったのではないかと思う。そのためノエルはキャラのアピールポイントでもあるビークル開発を封じられた。

 

 ■もしもテコ入れがなかったら

28話でつかさが「ノエルは何故自分で開発したビークルを自分で使わないんだ?」と疑問を持った。私は最初これを、カタログバレで見たサイレンストライカーをノエルが使う伏線かと思っていた。当初圭一郞が使う予定だったのがテコ入れによって必殺技はノエルに、巨大戦ではルパンカイザーに振り分けられたのがネットに出回ったカタログバレから読み取れていたので、どう持っていくのかあれこれ考えていたし、30話のスプラッシュが快盗に渡った展開が素晴らしかったので期待してしまっていたんだよね。

例えばノエルが開発したサイレンを警察に渡し、そこでつかさが上記の疑問を呈し、その秘密が分かる中で警察とノエルの関係が深まり、警察がノエルにサイレンを使わせる展開にするのかな?と思ったりして。

でもそうはならなかった。38話の時に書いたように、サイレンをルパンカイザーが使う、という販促縛りが最大の障害だったと当時は思った。私が妄想したような展開から、ルパンもノエルも貶めずにルパンカイザーが使う展開に持っていくのはハードルが高すぎたんだろうと。ただこの時はまだ、使わない理由は後に物語の中で明かされて警察に共有され、警察とノエルの関係に変化をもたらすだろうと思っていた。

でも結局ノエルが使わない理由も、つかさが「人間用に改造したから使わないんじゃなく使えなかったのか」と思うだけで口にせず、以後最後までそこに触れられる事はなかった。ノエルの警察のための自己犠牲を表す重要な事柄で、他と共有すればノエルへの見方も変わったと思うけれど。

 

この「装備を使えない理由」の不発から、今思うと、当初は両戦隊に自分が開発したビークルを渡して強化し、自分は相対的に弱体化していくノエルと使えない理由を絡めて、その正体や決意、それを知ったつかさを含む警察との関係の変化を描く予定だったのかもと思う。

物語の根幹にいすぎて迂闊に活躍させると単独主人公化してしまいかねないノエルだけど、戦闘的には両レッドより一段落ちて活躍が見落とりしていくのと引き替えにその決意やエンジニアとしての貢献を見せるなら、他とバランスがとれる。戦隊の追加戦士が終盤弱体化していく問題もそうやってカバーし、同時にもしかしたら「警察はなぜ戦えていたのか」という問題に圭一郞達を直面させようとしたのではと。そしてサイレンとビクトリーの登場かその少し後ぐらいがそのタイミングだったんじゃないかな?と思えてならない。

でも路線変更によりパトレンは強化出来ず、逆に予定になかったノエルが強化されてしまった。

制作側としては、VS戦隊を続けていくにあたってこの状態で上記のような展開に持っていくのは非常にバランスが悪いと感じて、後半のストーリーの流れや両戦隊の描き方を調整可能な形に変えていく事が必要だと考えたのでは思う。

今思うと、サイレンストライカーはルパンカイザーに割り当てられただけでなくノエルを強化してしまったことも当初のストーリー的には痛恨事だったのかもと思った。

 

※長くなってしまったので続きは後編で↓

 「ルパパト: 構造や売上が ノエルと警察、それから結末に与えた影響について(長文2)」

https://kiuix.hatenablog.com/entry/2019/02/23/170024